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2019年 08月 26日 ( 1 )

神話の功罪

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前回の東京オリンピックが開催された1964年のこと
社会部の新聞記者だった叔父が
「おい 婆さんを新幹線の試運転に乗せてやってくれんか!」
そう言って招待券を2枚渡されたことがある
婆さんとは叔父にとっては母親
わたしの祖母のことである
大学時代のことだった

完成を間際にした新幹線は
東京~大阪の間で試運転を繰り返し
大半の客車には試験器材がぎっしり積み込まれ
技術者たちが真剣に操作していたが
連結してる客車の一部は
関係者の試乗を許すイベントになっていたようだ

それまでの東海道線とは別世界の高速走行だったから
祖母の手を取って大坂まで3時間ほど
街に出て昼食をとり帰路もまた3時間
東京大坂が日帰りできることを実感したのは驚きだった
やがて東京オリンピックの開会に合わせて
華々しくデビューした新幹線 あれから55年が過ぎた

その全期間「死亡事故ゼロ」
記録は今もなお続き
世界の鉄道史に燦然と神話を築いている

勿論日本の技術立国を証明するハイテクでもあるから
こうした神話が生まれ長らえるのは大事なことである
しかし
最近の出来事を眺めていると些か不安がもたげる
技術とその保全に視点が置かれるというより
神話を守ろうとする情緒に傾き
あってはならないミスへの緊張感が希薄になってはいないだろうか

そもそも日本のハイテク神話は
技術の高さだけでなくそれを一身を賭けて守ろうとする
職人魂こそが原点だったような気がする

そこまで気にするか?
関わる職員の全てが手を下す作業の
その極細部にまで神経をとがらせる使命感こそ
安全神話を支える職人魂だったように思う
多分そうした魂の叫びで言えば
「ミスだって大きな罪悪」きっとそう言うに違いない

つい先週のことだが
新幹線のドアーが走行中に開いてしまった
極めて単純なミスだったらしい
幸いなことに安全神話に傷はつかなかったが
その後この事故はどう生かされようとしているんだろうか
殆ど偶然に近い幸運で人身事故には至らなかったが
幸運が守った安全神話は
あっという間に
不運がもたらす神話崩壊を招く
運不運に頼らぬ使命感こそが
この先の運命を担うと思うべきである

今となれば遠いが ⛏(つるはし)一本を手にして
深夜の線路を叩きながら歩き続けた職人さんたちを思い出す
どんな精密なPCよりも「オレの耳の方が上さ!」
「いま傷ついてる線路をみつけることじゃない
ソロソロ傷つきそうな線路を探すのがオレの仕事」
そんな矜持が聞こえてた

機械の良さを否定したりはしないが
人間の底力を忘れてほしくはない
AIは機械にも矜持はあるといいそうなところまで来てる
しかしだからこそ
ここ一点では決して譲らぬ人間の意地
それを「魂」と思いたいのだ

この先百年経っても
走行中のドアーは決して開いてはならない
そう誓ってほしいものである


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粉ひき花入れ 旧作



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by touseigama696 | 2019-08-26 08:44 | ●エッセイ | Comments(2)

50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・


by touseigama696