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窯だ行進曲⑦ 大物と小物 

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このブログにもリンクして交流している 『窓際の陶芸家』
どうしよう花さんが出版した
是非拝読したい・・と申し出たら
早速送ってくださった
丁度素焼きの窯を焚いている最中だったから
早速読み始め・・窯番しながら読了した

自分と陶芸の関わりには
誰しもそれぞれに深い思い入れがある
しかし・・それを一冊の著書にしようとすると
それは・・ロクロを挽くより難しいのでは・・と
私は思ってきた・・だから
こうして一巻の著作にまとめられた作家には
無条件で深い敬意を感じる

『窓際のロクロ挽き』を読み終えて
やはりこのブログにおいでくださる
林寧彦さんの著書がダブって蘇る
お二人とも似たところがあって
サラリーマン生活をしながら
単身赴任の九州を舞台に
陶芸の深みに身を投じてゆくからである

リタイアを機に
趣味の陶芸を始めるビギナーで
林さんの「週末陶芸のすすめ」「週末陶芸家になろう」に
刺激された方は多かろう
著作には・・そうした強い影響力がある
どうしよう花さんの著作も・・
きっと・・じわじわと陶芸人口の増加に
貢献するにちがいない・・

読み終えて・・
ひとつだけ気になる箇所があった
スキャンして紹介したが
ここだけを取り上げて論ずるのは
誤解を招きそうな気がしないでもないが
とても大事な問題提起だと思うので
少し・・私の意見を書いてみたい
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私は・・実際に展覧会に向けて
50センチ以上の大皿を挽いて
加飾して・・焼いて提出することが多い

何十枚も作って・・何十枚も失敗して・・
仮りに上手くいっても
およそ実用には供しがたく
所詮鑑賞陶器に終るかもしれない結果だけをみれば
使えてこその器・・を思わぬではない

日々の生活の中で
誰もが手軽な価格で買えて
惜しげもなく使い
生活にいささかの潤いを・・
それが陶芸だと・・思わぬではない

でも・・それでも大物を作って
展覧会でしのぎを削るのは・・
その理由は・・たったひとつである

「日常で使う小物食器の類の質を高めるため」である
ここで言う「質」とは・・
確かな技術で・・丁寧に作り・・
壊れる日まで飽きずに使ってもらえる普遍性をもつ・・
とでも言えよう

誤解を恐れずに言えば
「陶芸の場合・・
苦労して苦労して作ったものにいいものはない
いいものは・・あっさりできる」

つまりあっさりできるほどに繰り返せでもあるが
そのときに・・大きなものが挽けることは
余裕を生み・・苦労せずに目的を達するのだ

先日・・ジャズのライブにでかけた話を書いたが
そのピアニスト武藤晶子さんは
「強い音が必要だったり・・早い音が必要なとき
大事なことは・・力を抜けるかどうか」だと言った
無駄な力を使わない・・から
指の力は一点に集中してフォルテッシモになる

50センチの皿を挽ければ
30センチの皿は・・自信をもって楽に挽ける
つまり・・力が抜けるのだ
30センチしか挽けなければ
30センチは・・いつも緊張の世界
力を抜くことは難しくなる
大物の効用・・それは小物のためにある

もうひとつ蛇足になるが
展覧会に出すのは
勝ち負けのためだけではない
隅々まで隙のないきちんとした仕事
それを身につけようとすれば
展覧会にしくなしである

自分の感性や技術の客観的な評価
上位の展覧会になれば・・それは実に厳しい
そこから学ぶものもまた・・将来
広く喜んで使ってもらえる小物食器のためだと・・
私は思う

どうしよう花さんも
これから公募展に出品してゆかれるようだ
きっと・・勝ったり負けたりしながら
しかし・・勝った理由も・・負けた理由も
それは・・全部自分の陶芸の懐を広くするために
実に大事な糧だと思えてくるような気がする

大物の・・公募展
小物の・・個展
作家はみなこの狭間で
自分の世界を作ってゆくのだ
やらなかったものは・・身につかないが
やったものは・・全て自分のもの
失敗にめげないのは・・そういうわけなのだ
Commented by yumita6 at 2007-08-18 00:46 x
リンクありがとうございました。
>>およそ実用には供しがたく
>>所詮鑑賞陶器に終るかもしれない結果だけをみれば
公募展の作品はなぜ大きいもの、立派なものなんだろう?
・・・それが、どんな方に使われるのだろう?
果たして全部購入され使われているのだろうか?とずっと不思議でした。

大物になる理由がよーく分かりました^-^。
自分を常に磨いておかなければ、いざというときに使えませんよね。
それは陶芸だけでなく、すべてのことに言えることだと。
錆びた鉋は使えない!
高みは果てないと思いますが・・・私には絶対出来ません(爆)



納得できました。
Commented by ikkannet at 2007-08-18 01:12
どうしよう花さんの今のそのお考えも、永年の人生からの正解なのでしょうね。
陶器=日常一般家庭食器・・・なのかもしれません。
しかし、それは間違いと言う事ではなく・・・逆に、ごく一般的なのかなぁ・・・って思います。

50センチ以上の皿が大きいかどうかは、よく分かりませんが、
僕は、よくその位の寸法の大皿を好んで作ります。
30センチの皿のためではありません。その存在が必要だからです。
そして、もっと大きいのが欲しい状況の時もあります。
単に「力試し」というコトではなく、物の大きさの必然とは、あると思います。
大きいから価値があるとか、小さいから価値があるとかそんなコトではない、
いろいろな切り口で、物の価値がある・・・そう考えています。

・・・一方、
>50センチの皿を挽ければ 30センチの皿は・・自信をもって楽に挽ける・・・
この考えにも、経験的に全く同感です。いつも、ウチのスタッフに言っている言葉です。
Commented by touseigama696 at 2007-08-18 09:47
yumita6さん
おはようございます・・ありがとうございました
ここに書いた私の意見は・・
↓のikkanさんをお読みいただければ分かるように
一面的なところがあって・・
この命題に対する唯一の答えでないことは言うまでもありません

<30センチの皿のためではありません。その存在が必要だからです>
ikkanさんのこの部分は・・
私の一面を鋭く補完する命題なのです

造形と表現に・・次第に深い欲求とこだわりが生まれてくると
作っているものが大きいか小さいかではなく
『リーズナブル』・・ってものさしが生まれてくるはずです
その[丁度良い]が・・15だったり50だったり
もっと大きくだったりするのは・・まさに必要だからで
ikkanさんはそこを指摘されておいでだと思います
・・続く・・






Commented by touseigama696 at 2007-08-18 09:48
・・続き・・
ただある時期まで
大きなものを作る意味や納得には
迷いが生まれるのも・・経験的に私も感じました

そのときに思ったことは・・
大物への挑戦は
その成否にだけ意味があるのではなく
結果として・・自分の技術を確かなものにするはずだし
どんな器を作るにせよ・・
それは大事なことだと思ったのです

「崩した」と「崩れた」は似て非なるもの
不確かな「崩れ」は・・到底「洒脱」につながるものではない
小物食器を作るときに・・これは大事なことではないかと
今でも思っています

さて・・ここでの議論は
とても大事な話題ではないかと思います
公募展に躊躇している方もおいでかもしれません
「窯だ行進曲」のカテゴリーは・・同好の士への応援歌
色々・・ご意見を聞かせてください

一閑さんも読んでくださってますし
藤井さんも・・上名窯さんも・・林さんもいらっしゃいます
いろいろ迷いをぶつけて話してみたいものです
Commented by touseigama696 at 2007-08-18 10:04
ikkannetさん
おはようございます
貴重なコメントありがとうございます
まさにおっしゃる通りで・・とてもよく理解できます

でも・・理解できる・・と書けるようになったのは
つい最近のことのような気もします
自分なりのモチーフにであって
10年単位であれ・・ライフワークであれ
これをどう完成させてゆけるか・・にぶつかってはじめて
大きさの必要性も意味もわかってきたのかもしれません

50の皿や鉢が挽けても
さてこれで何を表現したいのか・・
そのモチーフなしには
サイズの意味はわかりにくいかもしれませんね
プロセスとして
大きなものが挽けることも・・無駄にはならない
その意味で・・小物の質が良くなることは
大きな励みになったと思っています

アマチュア陶芸家は・・
限られた時間の中で・・できるだけ無駄なく
自分の目指す器を作らねば・・と思うと
大物は・・迷うもんじゃないでしょうか・・

作家としても・・指導者としても
まさに陶芸の王道を歩いておられる
一閑さんのご意見は・・
みなさんにもとても勉強になるはずです

Commented by touseigama696 at 2007-08-18 13:36
中途半端な紹介になってしまったから・・
この際・・ちゃんと・・笑

このブログにリンクいただいて
胸を借りたい陶芸家は・・ほかにも・・

笠間の「山王窯」さんも・・同じ笠間の「takano」さん
瀬戸の「bamboo」さん・・「てるみん陶工房」さんも・・
みなさん・・色々な経験を積んで今があるんでしょうね
是非とも・・胸をお貸しくださいな・・
Commented by Potter-Y at 2007-08-20 23:05
本文、コメントとも大変興味深く読ませていただきました。
伝統工芸展をはじめ多くの公募展で目にするのは、
茶器など一部を除いてどれも制限ギリギリの大きなものばかりで、
そのことに多少違和感は感じていました。
大物を「つくる」意味と「評価する」意味とはまた違うのかもしれませんね。

何度か大物作りもチャレンジしてまだまだ身についてはいませんが、
小さ目のものをつくる時には確かにかなり余裕が持てるようになりました。
Commented by nonacafe at 2007-08-21 01:30
50cm以上の大皿やら壺をバンバンバカバカ〜♪挽いて
思いっきり、これでもか!とくどいくらいに絵付けしたいのですが
それは儚い夢のまた夢。夢は実現した時に夢でなくなってしまうのも生き先が寂しいので…なんて自分に言い聞かせて納得したり、向上心も挑戦心も冒険心もなく…。それに現実的には焼成代もかさむし、収納スペースもないし…。ましてや生業がプロのウツワでもないし…。
嗚呼、これ以上綴るとコンプレックスやらグチやら吐露しそうで…そっと逃げます。(なら、はじめから口出すな…でしたね。汗)
Commented by touseigama696 at 2007-08-21 14:19
Potter-Yさん
前回の日本陶芸展だったか・・
講評で・・
大きすぎることを指摘されてたことがあります
ぼける・・とか・・しまらない・・とか
ただ昔に比べると
展示会場が広くなったりもするので
見栄えの良し悪しで・・大きさが問われたのも
時代のせいだったかもしれませんね

公募展のよさは・・
自分の仕事を自分でも厳しくみるようになるし
丁寧な仕事を手のくせにできるようになることかも
どんな気楽な小物つくりでも
売るなら・・手を抜かず丁寧に・・って
とっても大事なことのように思います
Commented by touseigama696 at 2007-08-21 14:24
nonacafeさん
我が工房でも・・出品予定者は
どうしても大物になるから
焼成費用をどうまかなうか
ある程度は身になってなってあげないと
大変ですよね
そういう意味では・・きっと生徒さんたちは
大変なんですよ・・身につまされます

だから焼くより挽け・・
最初はそう言います
大物を作る意味と納得がないと
コストは・・問題ですからね・・苦笑
よおっく・・わかるような気がするのです
Commented by どうしょう花 at 2007-08-21 22:08 x
桃青窯 様

ご紹介をありがとうございました。
技術も感性も未熟であることを痛感しております。

九月から念願の工房を持つ予定です。
窯は五十センチ以上の作品が焼けるものを
選びました。

技術と感性が追いついたとき、思い切り作陶できる
環境はできあがります。

そんな様子を九月からのブログに掲載予定です。

ありがとうございました。

                         どうしょう花
Commented by touseigama696 at 2007-08-21 22:19
どうしょう花 さん
築窯計画・・素晴らしいですね
窯の選択って・・とっても勇気がいります
小さければ・・大物が入らないし
大きければ・・小回りが利かず 燃費が悪くなるしだもんね

結局のところ
作陶意欲は・・
環境に合わせるしかないから
新しい工房がもたらすものが
とても楽しみですね

ご著書・・部分的に引用してしまい
失礼してしまいましたが
とても大事な話題のように思えたので
長話になって恐縮でした
全体には・・とても楽しく拝読させていただきました
ありがとうございます
Commented by honey8787 at 2007-08-21 23:16
私には、まだ30cmという壁があって、それを超える作品ができるようにならないかなあと思っています。そんな未熟者ですが、ikkanさんが言っている(大きなものには、大きなものなりの)存在が必要だからということには納得します。そして、「力を抜けるかどうか」ということも大切なことだと。
これは、陶芸に限らず、人生そのものも力を抜けるかどうかですね。


Commented by touseigama696 at 2007-08-21 23:59
honey8787さん
こんばんわ・・ありがとうございます
30センチというのは結構大事なサイズで
実用でも使い勝手がいいからよく作りますよね
でも40となると・・
それほど際立っての需要は減るものです
だからどうしても30どまりになりやすのでしょうが
もし40にしたいと思ったとき
案外・・使う土塊が小さいのではないでしょうか

たとえば・・
30なら1.5とか2.0キロ程度以内で挽けるでしょうが
40となると3.0とか4.0キロでは無理かも
5.0キロを使って40センチのつもりになれば
案外挽けるんじゃないかと思います
30から先は加速度的に土の量は増えます

Commented by touseigama696 at 2007-08-21 23:59
続き・・・

ちなみに私の場合・・
30なら・・それこそ前述したように1.5~2.0程度のはずですが
倍の60のときは・・土は12.0~15.0キロほどに増えます
慣れるまで・・土の量をたっぷりとって
少し厚くてもいいから・・手早くサイズを確保するように挽いてみると
いいのではないでしょうか
時間をかけて薄くしないとサイズがでないとしたら
小さい土塊でサイズをだすために時間をかけすぎているかもしれません
水が多すぎてへたりますからね
それに時間をかけると・・遠心力がかかり過ぎて
土の締まりが悪くなって弱くもなりますね

厚めでも・・手早く挽いてサイズがでれば
土を減らして薄く挽いて同じサイズにするのは
慣れてできるようになると思います

大物がもつ達成感ってのも
やってみれば楽しいことのひとつでもあります
是非挑戦してみてください
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by touseigama696 | 2007-08-17 22:57 | ●窯だ行進曲 | Comments(15)

50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・


by touseigama696