糸の非情

朝は整頓して始めたとしても終日同じことをして過ごせば
夕方にはこんな風に散らかります
例えば画紙などの上にデッサンを起こしてから始めるならそれなりに準備してかかれますが私の場合
下絵を作ったことがありませんいきなり作品の上に糸を貼りだしてイメージした紋様を図案化してゆきます
当然気に入らないこともあってそれまでに貼った糸を剥がすこともありますがでも空白の作品にいきなり貼り始める衝動的なモチベーションを大事にしています
この糸は素焼きの曲面にどう接着してくれるのか貼ってみないと判らないのも理由のひとつ糸は作り手には限りなく非情です貼ってきれいに見えるかは紙ではなく作品の上が一番そんな思いで無駄に消耗する糸を惜しみながらも長いことこのやり方を踏襲してきました


「夜明けに窓のカーテンを指で少しずらしたら思いがけず瑞々しい花が目に届くこの皿そんなイメージです」

初めてのモチーフの場合これでいけるだろうかと費やした時間を思いながら不安になることもありますが完成が近づくにつれて大丈夫そうと思えてホッとするのもしばしばです


焼けば茄子紺に発色するこの皿地味に思えても案外目立ちます糸紋様を多くすると白っぽい器となり少な目だと限りなく茄子紺に染まります糸の分量を加減して
画紙ではなく陶器の上だという調和と発色を忘れないようにしています

裏にも紋様を入れますが表と同じにしたり別にしたり色々ですそんなことを考えながら終日工房で独り作業に明け暮れる日々
ロクロで挽く一枚の皿なら10分足らずの作業ですがその先糸を貼りだすと一日で数枚の能率の悪さに焦れることもありますががまん!ガマン!が肝要
今日もまた作業台は散らかったまま終わりにしたのでした

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