「強者の夢」今は懐かしく

（読みなおして・・少し補筆しました）
旧房時代　私の工房は我が家の敷地内に空き店舗だった茶舗を居ぬきで使ったため外から丸見え何も看板はだしていなかったがいつの間にか教室を開くことになった
還暦直前の50代から70代半ばまで教室は楽しかったがくたびれた週に三日　朝から晩まで工房で初心の生徒さんたちになんとか面白さを解ってほしいと一所懸命教えた気がする


いっときは60名もの生徒さんで溢れ毎週窯焚きしないと作品の置き場がなかったおまけに私自身も「日本伝統工芸展」に挑んでいた時期尋常な忙しさではなかった


殆どが未経験の初心者プロに転向する者が出るまでになったんだから
みんなよく頑張ったと思う自分がプロになるより嬉しかったかもだ

「趣味でも本気・・」私のど真ん中はこれだった
「陶芸教室」と扉書きした写真のカテゴリーに当時の様子が一杯残っている懐かしみながら
ご披露することにしよう

陶芸にはロクロ挽きでの好みと加飾の都合でおよそ壺派と皿派があるが私の仕事は大皿中心だったせいでそれを見ながら生徒さんたちも皿に取り組む方が多かった
今こうして眺めるとみんな上手くなったと思う10～15㌔の粘土は力仕事そのもの相撲とるような体力勝負女性ではなかなか思うに任せないがみんな一所懸命チャレンジしてものにしてきたのは大したもんだ
雰囲気だけでも息を詰めての力比べ解っていただけそうである

勿論茶碗や丼を作ったりした後のカリキュラムだが教室日は時間制限なしロクロが空いてりゃ夜までいてもお構いなしおまけに粘土は使い放題教室というより愛好者のアジトみたいなもんで世知辛い今どきとは異なりのんびりと好い時代だった





当然失敗も沢山する一日が終れば室は失敗土で溢れる毎週一度シルバークラブのオジさんに頼んで土練機で再生してもらって使いまわした
一日で大皿4枚60㌔の失敗記録は教室の伝説にもなった今はプロに転向した小原さんである


彼女は筆が使えたこれは大きな武器であるこの大皿に染付けるのは容易ではないが彼女にとっては鼻歌混じりの楽しい作業ロクロも力強く大きさに負けることはなかった




大筆をさばいて大胆な枝ぶりを描き面相筆の繊細な花模様が見事に枝に調和してる彼女はこつを掴んだのだ


この豆皿の絵柄に淡く彩色したらどこかの幼稚園の食器がみんなこれになっちゃうかもだ


皿を挽こうとしたら先ず大鉢を形どり口縁部を外側に倒して見込を浅くする
力も要るが勇気もいる

完成まじかで指の力加減を間違えるとあっという間に口縁部が外側に落ちクラゲのように垂れるからだその緊張は皿の面白さでもある



まさにスリルの真っ最中50㎝強の大皿は見込に緊張と云う名の重荷を積んでひた走っている似たような想いを思いだす


ルーターを使って彫り紋で花を描いている生粘土の乾燥済み力を入れすぎると亀裂破壊が怖い


どんな場面でもなるべく両手を一体化し両手の力を分散する細やかに十本の指を使いたいからだ指は力であるが同時にアンテナでもある土が発信しているメッセージを読むのは指理に叶った綺麗な手つきが結果を生む乱暴な構えでは美しいものはできない私はずっとそう思ってきた




三島の印判手自作の印で生の皿に刻印し白化粧を吹いて削る印判の象嵌で模様を作るのだ間隔の平準化は決して簡単ではないはず注意深さが試される作品である


裏を粗末に扱わない多分プロの仕事なら鉄則だと思う


このシリーズの作品は京都の「女流陶芸展」で何度も入選し見事に正会員に認証された



紋様を色彩で二分し更に同じモチーフを見込の規則性と口縁部の不規則性に分け動と静のバランスを考えた作品彼女もプロである


この猫絵・・大好きである作者はプロの漫画家絵がものを言っていて鳥獣戯画を思わせる
美猫を描く作家は沢山いるしかし口と目がもの言う猫を描くのは才能だと思うさすがである

なにすねてるんだよ？


粉引きの御本を巧く生かし紅斑が植物と虫に命を与えたみたいだ



この作品は若い頃から親友だった川〇さんのもののちに幾ばくもなく異郷に去った
不意の病・・寂しくも悲しい別れだった


焼けばこうなる天目の皿県展に入選した作品だった


蓋つきの組み物料理屋さんが使いそう・・

骨描きをダミ筆で埋めて染付け筆さばきが軽くてリズミカルなのが好い



お茶の先生が陶芸の生徒さん時々こうして茶を点てる指導もしてもらった学びながらの息抜き

何しろ雰囲気はアジト夢中になって稽古しての空腹私の大皿を近所の寿司屋さんに持ち込みみんなで食べるのもアジトなのだ
寿司も食うが皿も食うそれでいいのだ



買ったり作ったり結構贅沢な昼食を愉しんだものだった


彼が母親に連れられて工房に来たのは確か6歳くらいのこと「自分から稽古してみたいと言い出して・・」確かに子どもらしい無垢な真顔だった
勿論「おいで！」と答えた教室では最年少の生徒だが「真顔」は本物だった
手びねりのカップは正に同寸同姿　集中がよく見えるこのまま続ければきっとほんものだった或る日入学を期にサッカーがやりたいと言い出しそれが自然なともだち作りでもあるから「いいよ　がんばれ！」で別れたもう立派な青年になっているはずだ

コロナの来襲間際の数年前いささか疲れに負けて教室を閉じた
アジトはコックピットに変貌静かなコクピットで何本かのルートで作品を送りながら沈黙の中の仕事を続けているあの熱気と喧騒は今はない
思い返せば懐かしい20年であるそして
誰もいない工房だから・・だから誰のことも忘れない
写真を見ながらそう思った

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