独り坐してもの想う

数日前仕掛かりだった皿二枚に彩色を済ませふと茶が欲しいと思った珍しくも久しぶりのこと
たまたま冷蔵庫に加賀百万石の庇護を受けた森八家の黑羊羹が手つかずにあるのを思い出し急いで支度した


これは黒マットと言い自作の釉ではないが瓦の黑を狙った色調になる
天目に比べれば少々庶民的な響きもし気楽に使える釉薬なのだ教室では随分と使った覚えがある糸抜きで波紋を貼った茶碗これはこれで好きである


この茶碗は自作としては更に古く当時東に住んでいて西の萩焼を真似するにはと？色々集めて焼いた真似事の萩茶碗である
枇杷色とても何とかならないかなと窯の火をいじりもっともらしくなのだった
しかし萩は萩の茶碗
窯には多分萩の空気が必要で釉には萩の血も流れているべき茶碗備前にもいえるしきっと美濃だって同じだ
二碗にたっぷり茶と湯を注ぎゆっくりと　しかしリズミカルに茶筅を振るころ茶は絹地のように細やかで僅かに膨らむ「閑かだな・・！」　そう思った
「独り坐してもの想う」暮れなずむ日暮れに包まれて茶は腹に沁みて観念と化す
痛みに襲われての一日たいしたことも出来ずに終わってしまった

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