懐旧の「天目」

2017年秋定評のある陶芸の専門誌「炎芸術」が「現代の天目」と題して特集を組んだ初心の頃　天目の黑に惹かれていたことがあって独学に押しつぶされそうだったからこの特集は良い勉強になったのを思い出す



旧知の作家さんも登場したが父子二代を含め本場が本気の環境の中での追及ここに終の棲家を築くのは無謀だと思った



大見出しに「現代の天目」とあるのは陶工が・・を乗り越えて時代が・・賄ってきたやきものなのだ
漆の天目台に茶碗を乗せ茶坊主が額の上にかかげて配した天目茶後の利休さんの侘茶とは趣も違え様式に根を置いた約束事に縛られた茶だったようだ



天目という言葉には二種の意味があるひとつは形を表す「天目形（なり）」であり一方は代表的な色を表す「黑天目」である
黒色に約束事はないが形にはあった口縁部は直下で内側に反り更に外に膨らむこれを「反（は）そり」ともすっぽん口ともいう
胴はいち早く漏斗状に底に向かいその中央に小さな高台が切られるその高台も筒状に輪切りされ少し低目とある
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　古谷宣幸氏　作


天目台に乗せる都合だと想像するがこれらを守ればご覧の通りなるほどの形状で焼きあがっている

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　今泉　毅氏　作

この約束事に作り手の創意を否定すると不評もたつがそれでもなお作家に生涯を賭けたモチベーションを沸き立たせる壮大な夢でもあるようだ
お二人の作品を拝見して約束事へ配慮しつつなお個性は喪失していないと私は思う
色と形天目には魔力があるような気がするが追うには少し老いてしまった



これはかなり昔焼いた黑天目茶碗残念ながらこの角度では「天目なり」が判らないが約束は守った



全く同じ土で同じ天目釉を掛けて焼いた大ぶりな鉢弱還元炎でこの色になるこの黑が私は好きだが



同じ素材を酸化炎で焼けば少し変わる還元の漆黒に比べてやや紅味が潜むからだこれも決して嫌いではない
この釉薬は残してあるのでいずれ時間があったら盆栽鉢に活かしてみようかな
懐旧の天目器たった30年足らずなのに遠い遠い昔のような気がするのもきっと理由は同じだ
病み上がりの三日目まだ平常ではない


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