ハーモニカ

暫く前から毎朝工房に持ち込む手提げバスケットの中にこれが入れてあった　ハーモニカである正確なことは忘れたが遠い少年時代に買った懐かしいハーモニカのはずしまい忘れていた口笛みたいなものである頭に旋律が浮かべば楽譜はいらないカラオケなどのある時代ではなく尻のポケットから抜き出しては好きな歌を吹いたりしたものだった
この隠居所工房　隣家と壁伝いではないから迷惑でもあるまいと吹いてみた少年時代が目の前にいた

一緒に左の小さなハーモニカも入ってたブルース・ハープ同じハーモニカでも小さい図体のくせしてかなりな音楽性ブルースにはなくちゃならない大人の楽器なのだ
少し時間を使って吹いてみようかな？と思いながら躊躇っていた10音しかない音域の中の芸達者その分下手じゃ面白くない若い頃にこの二つの真ん中あたりに半音上下動させるクロマチック・ハーモニカもあって色々やってるうちに何もやらなくなって遠のいた

退院して初めて工房に入ったら息も絶え絶えのだらしなさにちっと吹けば肺活量が復帰するか期待したが老いの情けなさはそう簡単ではないようだ頭がクラっときてゴメンナサイだ
それでも懐かしさはこみ上げてくる息を吐いたり吸ったり暫くはリハビリのつもりになっていた


強がるつもりはないからできればそっとしておいてほしい入院して5日退院から5日たった10日だが結構虐められるまだ体内の残滓は消え切れてはいない
歩いたり吹いたりちょっとづつ反撃に入ろう


せめてもと昨日も少し制作を再開した糸も切れたが息も切れた


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