初仕事2022

言うまでもないことですがここに書く私の陶芸論はいつの場合もそれらが唯一無二の定石と主張するものではありません
ただ30年近くになる私の陶歴で
折りに触れ遭遇してきた幾つもの難題にどう対処してきたのかをふり返って　もしたった今それに出会って苦労している同好の士がおられたら何某かヒントになればという思いの私見です
今年の半ばには八十の齢を迎える今秘密にしておきたいことなどひとつもなく「そいう時にはさ・・こうしたら案外うまくいったよ」そんな炉辺談話の糸の端とでも思ってくださればです
大晦日から元旦を経て二日の昨日まで二度に分けて26㌢の皿を8枚挽き8枚削りましたがその削りについて書いてみようと思います



この4枚は31日に挽いて元旦に粗削りそして昨日の二日に仕上げ削りを施した分少し白っぽいのは乾燥が進んだ証拠硬くなってからの方がやり易い仕上げ削りのためです
ロクロ挽きした作品は特殊な場合を除けば大抵は挽きと削りはセットみたいなものです挽くのも技術ですが削りも同じ上手く出来れば作品の姿も良くなります私は削り作業が好きです
削りはロクロに向かって込めた思いを消してしまい勢いのない作品になってしまうという意見もありますがそれは作品に託する思いを表現する技法の違いであって作品次第では丁寧な削りでないと思いが表現できないそうしたものもあるはずなのです私の場合日頃頻度の多い「糸抜き技法」がそれです


0.5㍉の極細糸テープは一気に挽きあげたタフな造形とロクロ目肌に綺麗に密着してくれる確率は低いのです僅かな曲面の歪みで糸は行方を失いあらぬ方向に走って自滅してしまいますとりわけ凹面の場合糸の密着は至難の技ですつまり器の見込み部分が難しいことになりますそこを何とかしようとすれば削りによる糸が好む滑らかさを保証しなければなりませんこれはもう慣れるしかない作業ですしかしだから上手くいったときの悦びもあるわけで「不思議な苦労」とでも云えましょう


この4枚は元旦に挽いて昨日粗削りしたものまだ柔らかいので8割程度の削りにして形を壊さないように気を使います最初からあまり薄く挽くと粗削りで形を損ねてしまいかねずタイミングの計りずらい削りになるのを嫌います
一般論として陶芸にも幾つものセオリーがあります長年にわたる名工たちの技術が伝承されるものでそこに真似ぶことから独自の技法の発見につながることも沢山あります陶芸に限ったことでなく工芸全般にもそうした伝承から発見につながる前途があるもので一言で括るなら「上手くなること」への執念こそもの作りの醍醐味だと私は思うのです

三日の今日仕上げ削りをして器の高さ高台の高さ口縁部の厚みなど微調整を図り糸の食いつきを良くする手配です
ご依頼に対応すべく15枚か20枚ほど作る予定三が日が過ぎて日常が戻ってきます穏やかな良い年になりますよう　午後の便で帰ってゆく孫たちに別れまた独りっきりの工房での日々が始まります


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