1,372回 : 桃青窯696

2021年 12月 15日

1,372回

昨日の窯焚きは豆窯で準備した焼きたい総量は豆窯では入らないが大窯ではスカスカものを焼かず炉内の空気を焼くだけでは器の芯まで熱が届かない
だから豆窯で二度焼くつもりで今日の窯には一部テストピースもいれた様子をみてふた窯目で微調整しようという魂胆だ

初心のころから窯焚きの日は終日窯場に居ることに決めている
早朝から14時間ほどここに座りっぱなしで微調整待ちの作品に手を加えて数日後の焼成に備えた
最近何とはなしに地震が多い少々不気味でもありなおのこと窯を離れる気にはなれない

1時間に一度パイロメーターを読んで温度版に記録する定番の上がりを期待すれば温度推移も前回同様がいい付箋のメモをみながら前回軌道を追うことになる

これが過去の焼成の全記録
久しぶりに眺めてみた
記録によれば最初の電気窯を1996年に導入し2年後二基目に0.4米のガス窯を入れ大皿で公募展出品も始めている爾来５基の窯を交換しながら焼成に挑んできた通算回数は何と千回を超え今日の窯が1,372回目になる丁度２５年経過でのキャリアである
割り算すると1,372÷25＝53.0825年間　毎年週に一回は焼いてきたことになる結構な窯番歴だが　しかしそれでいて焼成は自家薬籠中かと問われれば「否！」としか言えず「どうしてこうなった？」この自問に確かな自答が出来た試しはない

こんな豆窯でも色見穴から覗き見ればもっともらしく灼熱を伝えてくる
パイロメーターは1,100度を越えている手を突っ込めば大やけどの天ぷら油だって200度ほどだろうから1,000度超は凄まじい高温だがその高温なしには
土は焼きものになれないパイロメーターが数字に直してくれたのは極めて近年のこと
水銀体温計さえなかった明治以前1,200度をどうして知ることができたかを言えば火の色を見て手順を進めたが正解数字で表現などできはしなかった
焼成を自家薬籠中にしてきたと言えるには少なくとも火色で工程を終始させる眼力が要りそうだ
暗黒の炉内に火が入りやがて薄ぼんやりと明るくなる濃いワインレッドが次第にオレンジに変わり更に赤から白熱の真白に変化するそしてそれが頂点陶工たちはその成り行きで薪をくべあるいは火をくぐもらせて空気を絶ったりするそれらの呼吸で長い焼成にひたむきになった学ぶではない身を投じてこその覚悟なしにやきものは身につかなかったに違いない
炎のない電熱の炉は比べれば穏やかな窯である夕食を前に1,240度に到達して火を止めた火をというより電源を止めたが正確1,372回目もどうやら無事に終わったやはりほっとする夜だった

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by touseigama696 | 2021-12-15 09:32 | ●工房便り | Comments(10)

Commented by watmooi

at 2021-12-15 11:52

すごい‼️としか言いようのないご経験を積んで来られたのですね。
記録をとっておかれたからこそ、ですね。

細かい作業も窯の番も想像さえ出来ません。
火の色の変化は、読ませていただいただけでも、　なんだかドキドキするくらい怖さも感じました。

今年もあと2週間ほど、
どうぞお元気で素敵なクリスマス🎄、そして佳き新年をお迎えになってくださいね。

Commented by aisuc

at 2021-12-15 18:53

こんばんは。
本当に凄い !!
窯を週に一回は焚く感動ですね。
当教室の窯は、20から30名が利用していますが、月に２回程度
それを････凄いとしか言えません。

当方、何とか焼成ができたものの納得に行くものにはなりませんでした。
近々UPしたいと思っています。

感動をありがとうございました。

Commented by jyon-non

at 2021-12-15 21:53

長年にわたって真摯に取り組んでこられた軌跡を見せて頂いているような心地です。

何事もわき目をふらず打ち込んでこそ・・という教えを頂いた心境です。

ありがとうございます。

年末に向け、お体ご自愛くださいますように。…🌸

Commented by slowceramic

at 2021-12-17 09:19

ご無沙汰しています

焼成数にびっくりです。さすが！です。
それだけの積み重ねが経験となっているのですね。
残しておられる記録は門外不出ものですね( ´∀｀)

お聞きしたいのですが
１つの電気釜に耐用回数などあるのでしょうか？
もちろん使い方など状況で違ってくると思うのですが
何回かを越えるとそろそろ…的なことはありますか？
電気釜を購入した時に業者さんに100数十回と。。。
そんなに少ないのでしょうか？

桃青釜さんとはまったくレベルが違う意味で
回数が気になってしまいます苦笑

Commented by BBpinevalley

at 2021-12-17 09:30

こんにちは。
一つの道をひたすら進まれ、素晴らしいですね。
宮本武蔵の五輪書を読むようです。
昔は、火の色を見て判断したのですね。
火の色を見分ける目…、火にはどんなヒューや重なりがあるのか…
先日、古い溝口健二の映画を観ていて、山村に住む貧しい焼き物師が出てきましたが、そう言えば、盛んに穴から窯を覗き込んでいました。

常に新しい作風に挑戦された一年が終わろうとし、また新しい幕開けですね。
コロナで世の中は混沌としていますが、桃青窯さんのコックピットは、どこかの惑星に向かう宇宙ステーションの中のようで、世のカオスはどこ吹く風？