せいくらべ

このおそろしく古めかしいハンガーラック娘の部屋に置いてある
7年前転居の折に多分子どもたちの要望で解体中の旧居の柱を一本切り出してもらって作ったメモリアル私の亡父つまり子供たちの祖父が二人の孫の成長を自室の柱に刻んで残した廃材で終わるのを惜しんで思い出は残った

元気だった祖父と幼かった孫たちこの童謡を思いだす「柱のきずはおととしの五月五日のせいくらべ」きっとちまきもあったかもしれない



殆ど読めなくなってしまった背丈も一番最後が157.3とある姉なのか弟なのか定かではないこのころを境に幼子ではなくなったのだろうか記録はここで終わっている
今日の夕方何やらズボンの裾を引きずっているのは痩せたからだろうかと思う一方待てよ身長が縮んだのかもしれないな
子ども達の柱を妻の部屋の壁に差し替え鉛筆で壁にそっと印をつけてもらったメジャーを当てて驚いた177㌢とある
ずっと長いこと必要があって記載するときは迷わず183㌢と書いたそれ以上大きくなることはない最終記録がこれだったからだがそれにしても177㌢はびっくりである
道理で電車に乗ると周囲の男性がみな私より大きく見えて今の若者は育つからな・・と苦笑いしたものだがこれだけ縮めば当然周囲はでかい改めて老いの切なさを思い知ったのである
この先ズボンを買う時は裾をつまんでもらってから受け取ることにしよう

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