二分の一メソッド

この鉢は径が25ｾﾝﾁほどのやや深め幅0.5㍉　1.0㍉　1.5㍉の300本近い細糸テープを貼って茄子紺で抜き紋様にしてあります
時々ご質問をいただきますが「この細かさでよく当たり線が描けますね？」確かにこれを鉛筆などで線描きしてから貼るのは多分無理です鉛筆の粉で糸が接着しないに違いありません
制作時に実際に300本の内鉛筆で当たりをつけたのは30度12ブロックを区分する12本だけ「あとは？」とのお訊ねの答えは「目で二分の一分割を計ってそのまま指で貼ります」
陶芸は道具の多い芸でもあります私も色々使いますがそっと内緒で書けば一番使い勝手が良くて壊れたりしないのは「目がものさしで手が道具」以前にも書いていますがこれはとても意味のある言葉です
人間の目と手は道具よりも遥かに融通が利いて真っすぐとか真四角とか正確を要するデザインが僅かにずれることの多い陶芸で稽古すれば見事に辻褄をあわせてくれます

小さな六角鉢に線紋様を打って茄子紺で焼き上げる定番の食器です
当たり線を入れるのはこれだけしかも方向性がややずれている感じがします基準は六角の角ですが丸皿を削って六角にしたので夫々の頂点間の距離が僅かに違えば中心に向かう放射状線の方向に狂いがでます

先ずは養生を施しますこれをしながら手順を考えます間違えると糸と糸が癒着して周囲をはがしてしまうこともあるからです

裏面も養生します今は顔料も筆差しで入れますのでここまでする必要はないのですが途中で予定変更して吹きつけにってこともないわけじゃなく対応できるように手順で養生しておきます

当たり線の分だけ糸を貼りました1㍉幅の糸を使っています夫々の線がきちんと交差するよう少し修正しながら定規では適わぬ見た目の正確さを求めます

鉢の内外は平面ではないので真っすぐに貼ると真っすぐに見えるは別のこと真っすぐに見えるを優先すれば微調整が必要になってきます
別の作品ですが貼った糸と置いた紙定規のラインに違いがあるのが見えます

作業を続けます前頁の四角のなかに3本の糸を貼ってますがここからは自分でそう呼んでいる「1/2メソッド」です目の前の巾を目視で二分の一に分割しそこに糸をはってゆきますどんどん巾が狭くなりますが緻密ではあるがしつこくない範囲そこら辺が頃合いかな・・です

模様を表から裏につなぐとき一番役立つのも「目」どんな道具を使うよりも目が頼り当たり線はどこまでも参考に止めています


裏表をつなぐためには貼りながら器を回転させますがこれが一番怖い作業です角をぶつけたり落としたり泣きたくなるほどがっかりします

こうした作業が目に良い訳もなく近ごろは夜仕事は無理目がしょぼしょぼになります
これで徹夜していたのがつい4～5年前までのことでしたが
残されている人生の時間も足早に「1/2メソッド」と化しやれやれと思いながらの日暮れなのです


これはまた別のカテゴリーで定規の使えない仕事です

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