記録するって

つい先日長いことお世話になった浅草の掛かりつけ主治医と別れ住まいに近い開業医のドクターに変更することに決心した
浅草に何の不満があるわけではない実に親身に診てくださり感謝のかぎりなのだがコロナが発端だった
1年半の自粛生活のせいだろうがともかく体力の喪失に驚くばかりこの先その手の不安に応じて浅草まで通う自信がなくなってしまったのだ来年の免許返納も関わってくるまさかのときに車も使えなくなる
新しい先生は我が家の目の前のバス停から10分ほど乗れば医院の玄関口で降りられるその上見知らぬ先生ではなく家内の掛かりつけ今回のワクチンで夫婦でお世話になった医院である一緒に通えば互いに介助にもなる
その距離感が限りなく安堵である
浅草のドクターから丁寧な紹介状も添えられ改めて初診の予約をいれて出向いたその時の話しである
長いこと勧められて毎月の外来時に持参した日々の体の記録をこの日も持参した
起き抜け寝しなの体重・体脂肪率・血圧・脈拍一定間隔での血糖値・歩行記録が記録してあるそれに数ヵ月に一度の血液検査
そもそもの出発が境界型の糖尿病の発見からのこの記録申し送りのデータをご覧になりながら新しいドクターはこう言った
「・・治る患者さんって大抵ていねいな記録をとってますね・・」これが最初のひとこと実に嬉しかった
「糖尿病って治るんだ・治せるんだね！」とのたもうたあのセリフに憤怒を感じた糖尿病発見の担当医とは大違い患者が何を望みそのためなら本気で立ち向かうことを理解してくれなくて何の治療かなのである
自分でもこのノートを書き続けながらひとつ身に着けられたと思うことがある
例えば今日は誘惑に負けて食べ過ぎたかな？とか甘いものの取りすぎかな？と思う日
ノートに書いた記録のそれぞれが頭を巡りこれくらいでデータが動いたことはなかったから明日から気をつければ多分問題なしだといった自信が芽生えることもそれである
記憶だけでは持てない自信数字が教えてくれる具体的な限界の領域それを持てればいたずらに不安に怯えることはない
継続して長い間記録を綴ることは楽ではないがその面倒が代償になって食べる楽しみを失わずに済むならそっちをとろうと思うのは決して難しくはないのだ
「治せるひとは記録を嫌がりませんね」新しい掛かりつけのセンセイのこの励ましのことば
どんな専門用語の難しい理屈よりも患者の心に水を差してくれている信頼して通院するつもりである



まだ工房自粛で仕事漬けの日々である老いは日に日に威張り始めている受け入れつつ穏やかに暮せたらとねがうばかりである

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