難易度の序列

陶芸教室を開いていた頃
傍にいてしばしば眺めてきたことだが生徒さんは総時間のかなりな部分をロクロであれ手びねりであれ造形に使うのが普通
だから素焼きが出来て釉掛け・窯焚きといった段階になるともうほぼ90％は完成したつもりになる
沢山並んでいる色々な釉薬の中から好みでか好奇心でか選ぶのに時間はかかるがそこから先は「エイヤッ！」の世界だ
陶芸が上手くなることは8割がたロクロが上手くなること比率からいえばそんな印象を持ったものだ進度が目に見える造形の技術に比べれば進度はおろか意味さえ曖昧な釉薬とか焼成はなかなか興味の対象になりにくいのは無理もない
ものを習ったり覚えたりするときちょっと裏秘訣をお教えしよう陶芸の場合ではあるが
他の工芸でも似たことはありそうだ
造形→加飾→釉薬→焼成この順で進んでゆくがそれはそのまま興味の対象の序列でもある
しかし陶芸の難しさの序列となるとそのままで逆転する頻度が違うから一概に比較しにくいがこれを仕事とするプロ的に言えば焼成→釉薬→加飾→造形で難しい
そこで全体がバランスのとれた興味の進度を辿るためにはできるだけ早い時期から造形以外の厄介な技術に興味をもつ努力をすればいい時には文献を読むことも必須の内だと思う
「何にも描かないと淋しいから桜の花でも描こう」の加飾よくわかんないけどこの前赤い釉薬だったから
今回黄色にした～い」の釉薬先生や助手さん任せが多い焼成の窯番の話しは省いたほうがいいかな
この関心をどう前進させるかうまく行くとこれが造形の進歩にも直結してバランスがとれてくる冷やかし風にとってほしくないが「プロっぽい生徒」と言えよう
「加飾」なら個性的な加飾とはで名手の作品を見たり定評のある展覧会の図録を手に入れて「分かるわからない」ではなく「好き嫌い」で観察してみる「釉薬」なら基礎釉の3号石灰釉だけで1年間は色々変化させてみる「焼成」は大抵窯場にある焼成記録を見せてほしいと申し出てみる勇気
もしほんとの意味で陶芸が上手くなりたかったらここら辺で先生をくすぐってみるといい右翼・左翼・尾翼のバランスのとれた生徒さんそれは教える側への刺激でもある
期待に応えた先生になろうとするのも自然なはずである
難易度の逆転序列のオモシロ話しひとつ教室時代にあった話だが「こんなもんロクロで挽いてみたいっていうのがあったら雑誌の切り抜きでもいいから持ってきて！」
この問いへの答えは「このシンプルなお皿が作りたいです」一番多かったのが皿だった皿→鉢→茶碗→湯呑皿は基本形の中で最も難しい生徒さんはそれが一番易しいと思ったという
「なんてたってただ平らな皿だもん！」
「真っすぐ・まっ平」これが一番難しいと気づけばかなり色々な序列の逆転から逃れられるつまり最も現実的な局面で技術と対峙することで遊びだったものがいつの間にか遊びの域を越えてしまうそんな不思議に出会うことが可能になるのだ
私の場合始めて半年後にはロクロがあったし1年後には小さいがプロタイプの窯も入れ使う釉薬は全て材料を集めて自分で調整していた「既製品を使わない」興味を抱くために最も大事なモチベーションだと密かに決めてそうしてたようだ
プロへの転向は思いがけない遭遇ではあったが望まない結果ではなかったのだ別の言いかたをすればセランディピティーそのものだったような気がする「趣味」を探しに行って「仕事」見つけた想定外の価値との遭遇セイロン島のハプニングだったわけである
ホントは釉掛けの難しさを書くつもりの今朝だったが脱線夥しく予定変更して「難易度の序列」とし釉掛けは別項とさせていただくことにした・・ｼﾂﾚｲ！

釉薬ならと
こんな写真も使う予定だったがそれも別項で・・
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