老婦人のひとこと

エッセイ「折々の折り」は2001年から2005年までこのブログ以前に書き綴っていたものです
途中から本気になり千夜一夜になぞらえてほぼ3年近く年中無休でアップしました
相当な量書いたことになって一度プリントアウトして量感を感じてみようとしたのがこのファイルです数えたことはありませんが1000枚を超えていそうな気がします
途中手続きのミスで今はアクセスできずなのですがかろうじてプリントのお陰の再会というわけです
久しぶりに引っ張り出してパラパラと拾い読みしながら陶芸の話題をひとつ転載しました17年前の正月こんなことを考えていたようです

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2004年1月8日　「老婦人のひとこと」　折々の折りより
関東一円では　笠間と益子は伝統的な窯場として知られている土に恵まれないせいもあるだろうが関西とその以西に比べれば窯業地は決して多くはない　県境を挟んで栃木側が益子で茨城側が笠間　山道を走れば30分ほどの距離である
歴史的には笠間の開窯が江戸中期の1700年代で益子は1850年代笠間が兄貴分と云うことになるどちらも生活雑器を作り続けた民芸が発端だったしかし近ごろでは伝統的な笠間・益子焼に限らず様々な作風の陶芸家たちが近辺に窯を構え思い思いの作品を発表している
月に一、二度土を入れたり釉材を仕入れたりで笠間・益子に出向く窯焚きの翌日に出かけることが多いのは長時間火の傍に拘束される窯焚きからの解放感を味わいたいからかもしれない用事が済めばギャラリー巡りなどして目からの勉強も楽しいものである
益子のギャラリーＭはとりわけお気に入りご店主さんの感性なのだろうがここを見てるとどういう物が売れるのかが判るような気がするのだ
作りたいものと売れるものは同じではない作りたいものが売れればそれに越したことはないが時代感覚を逸してはお思うにまかせまいギャラリーＭはこうしたことを考えさせてくれる店であるだから結構丁寧に見て時に参考にと買い求めることもある
ある時いつものように気なる作品を見つけてレジにいた年配の女性に買い求める旨申し出た
もしやこのギャラリーの女将かもの風情だった「ハイ！　ありがとうございます・・」と返しながらその女性は続けてこう言った「あなた陶芸家でしょう？」

正直言って意表を突かれた作務衣のようなそれらしき恰好してたわけではないごく普通のカジュアルだったから見かけで陶芸家に見えるとは思えない
「どうして?]「そうね　長年この仕事してると器持つ手つきや見方で何となくね　判るわよ」日頃おおぜいの陶芸家とつき合ってきたに違いないそうした勘が働いた一言だったようだ
実はこのひとこと嬉しかった展覧会で入選したり受賞するのも嬉しいがこの見立てはもっと嬉しかったこの婦人は私の作品を知ってるわけではないただ佇まいだけで作家と見てくれたのだたかだか10年でしかない私の陶歴で前職よりも今が匂うようになれたのかもしれないそれが嬉しかったのである
技は頭にあるわけじゃないいつでも手と体でしか表現できないそう考えてきたから体に漂うものがそれらしくなることは大事な「本気の一里塚」と思うからである

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ご覧のような休載なしの千夜一夜は結構決心しないと苦しい習慣でしたが還暦過ぎたらこれに挑むことがボケ防止につながる筈とそれなりに覚悟して2005年末まで必ず当日記載で続けたのでしたとは言うもののボケ防止は叶ったのか否か自信はありません

しかしこの苦行の間続けるために決めた目的と掟はたったひとつ
一日に一つくらいは大真面目に頭を使って考えそれをきちんと書き留めてみる習慣それが目的で「休んでも無理はないと思う理由が見つかったら堂々と休め　そして見つからなかったらしゃんめい今夜も書こう」それだけでした大雑把な掟に・・だからきっちり従う決心これくらいの方が守ろうとするものです
今もほぼ毎日歩いていますが同じ掟に従っています


昨日も　本音は楽したかったけど休む理由が見つからなかったから　　　　　　　　　　　　　　　　　やたら面倒な仕事をしました　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　応援してくださる方・・クリックしてね！