Return to Forever

もうこのデュオをライブでは聴けない1週間前忽然とチックコリアは異郷に旅立ったからだ上原ひろみが失ったものの大きさは言葉を失くしてなお計り知れないもののようだ


教えることの中で最も崇高な価値は「影響」だと私は思っている
知識でも技術でもなく形にもならない「影響」でもただ傍にいるだけで力を与えられることが実感できる空気影響ってそうしたものだ



「向かっておいで！」「ハイ！」
「こうしたらどうする？」「そうですねこうします！」「いいね！」「ありがとうございます！」演奏が済んでふたりが差し出す親指は今終えた発信と受信のサイン

聴衆には「音」だがふたりには「振動」知識でも技術でもない振動それが影響なのだ
この関係は滅多に叶わない信じるに足るものが互いの心に響かねば振動は言葉に翻訳されることはない


上原ひろみの幸運は偶然にもせよチックコリアに出逢ったことだ
「ピアノ弾くの？」「弾きます」「ちょっと弾いてごらん！」「ハイ！」「今夜わたしとセッションしよう！あとでおいで」
これが始まりのふたりチックコリアが感じた予感も
上原ひろみが受けた衝撃も火花が散るように流れた束の間の振動奇蹟に近い遭遇だったに違いない
チックコリア亡き今この未完の絆を更に高みにかざすことが上原ひろみのモチベーションであり実在の上をゆく影響の実現だと思いたい
Return to forever永遠への回帰いみじくも意味深いものを感じる

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