陶芸は「十芸」

「陶芸って芸は色々な表情を持っていて難しくしようとすれば幾らでも難しいが日々使ってる器を手にして　これいいなぁ！あたりで眺めると実に身近な楽しみともなる特殊な技術を使いはするが五歳で始めないとモノにならないなどと天与の才を問われることもないむしろ日々の暮らしの中で身につけた生活力がそのまま生きる芸だといってよい・・」



4年程前に陶芸の専門誌「陶遊」で2年に亘って連載していただいたエッセイ「窯だ！行進曲」の第一回でこんな切り出しで書き始めた「陶芸は十芸」
最近沢山の愛好家さんのブログを拝読しながら似たような思いを辿った来し方を振り返り少し加筆して再掲してみることにした十芸はそのまま私の体験でもあり語呂合わせのままでお読みいただければである

動機に色々あれど陶芸に手を染めた方々また染めようとしている方々是非にも本気で取り組んでみていただければと秘かな願いを込めてである


①陶芸は「遠芸」
日暮れてなお遠い道を歩くみたいに上達をもどかしく思うのが陶芸粘土の山　釉薬の瓶　灼熱の窯　無数の陶片おどろおどろの仕掛けにおののきながら蟻の歩みほどの進歩に一喜一憂する歳月に時折り本気を問われるが本気になれば途方もない高みに運んでもくれる芸である
②陶芸は「問芸」問うて教えを乞うしかないことだらけだがそれでもなお自問自答で答えを探す自助が大きな力になる問う前に考えよ！なのだ自前の陶芸　辿り着きたいのそこだから
③陶芸は「党芸」ロクロの前では独り呻吟するしかないが孤立していて良いものは作れない長い道中を支えるのは切磋琢磨の仲間たち発信力と受信力は日々の両輪である
④陶芸は「謄芸」写して真似ぶは学ぶの礎独創は偶然の閃きではない徹底して真似べば模写に留まらない新しい発見につながるからだ
⑤陶芸は「盗芸」言うまでもなく教えられるのを待っていて大成はない言い古されたことだが「盗め！」である盗んでも咎められない唯一の存在を師匠というのだ
⑥陶芸は「闘芸」陶芸は格闘技でもある頭も使うが筋力も要る大きな土塊や灼熱の火に立ち向かう力晩学では苦労のタネだが一方で本気の度合いでもある火事場の馬鹿力　わかる気がする
⑦陶芸は「統芸」成形　加飾　釉掛け　焼成それぞれに複雑で多様な作業が続くがこれらの全てを独りで統べらねばならぬ決して楽ではないが成功も失敗もその全ては自分に帰するそしてその清しさもまた自分だけのものである
⑧陶芸は「頭芸」陶芸は頭を使う芸である
高速回転のロクロ　灼熱の窯の前で無事故を貫く細心の想像と注意は思いのほか知的な作業なのだ
⑨陶芸は蕩芸ある意味で陶芸は贅沢な遊びでもあるその気になるとロクロだの窯だの設えにそこそこ金も要る腕を磨かずに能書きばかりではやがて放蕩の誹りを免れまいだからこそ本気に意味があるのだ
⑩陶芸は十芸十芸が意味するものは総合芸だということ
長く生きてきたことが役に立つ芸だ今までに覚えたものは何でも生きて使える包丁が使えるのもピアノが弾けるのもみんな役に立つのが陶芸である
5歳からでなくてもプロに届く可能性は誰にでもある晩学躍如の由縁がそこにあるのだ

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