「2六飛」と「8七同飛成」

Ai将棋の評価が画面上に常時表示される中継最後の最後藤井99 vs 木村1　と表示されたその数分後木村王位が投了を告げて対局は終った非情な瞬間だった
何のハンデもなく全く同格で47歳と18歳が戦った48時間その中の実に肝腎な勝負時の出来事を今朝は書いてみることにした
「2六飛」と「8七同飛成」初日の夕刻封じ手を巡って二人の間に熾烈な根拠作りが見えていた



選択を投げかけたのは木村王位だ解説によれば普通なら2六飛を選ぶ8七同飛成は10人中8～9人は歯牙にもかけまいとか
にもかかわらずＡiはこの8七同飛成を最善手と表示したことから俄然成り行きに緊張感が走った



封じ手を決める初日夕刻が過ぎても当の藤井棋聖は長考を続けたここが緊張の始まりだった
大抵の棋士が選ぶだろう2六飛ならこうは考え続けることはない筈にもかかわらず時間を使っているのは別の手を読んでるからか？そしてもしかしたらそれが8七同飛成かもしれない解説者にも見ている私にも云い知れぬ緊迫感が芽生えた
解説者の説明によれば2六飛ならその先は穏やかな戦いになり双方が秘術を尽くし緻密な駆け引きになる筈一方8七同飛成を選べばその先は一瀉千里あっという間にどちらかが勝つ読み切れないものがあってどっちとは言えないところが緊張の根拠
封じ手の時刻に更に長考していた藤井棋聖の姿にその8七同飛成を選ぶのではないだろうか？そう予感したのは解説者もだが見ている将棋ファンも同じだったはずだ
ここに二人の棋士のキャラクターも絡む受けて立つの名手木村王位は手数の多い戦いを望むに違いない相手に小さなミスを誘いながら追い詰めてゆくだから2六飛に誘導したいのが普通だ
一方極めて旺盛な攻撃力を持った藤井棋聖は際どくても激しい戦いに挑む性格だからここでは8七同飛成を選ぶかもしれない初日の夕方明日封じ手を開封する瞬間を是非見たいと思うのは当然の気分だった
封じ手を封じる10分足らずの間既定の所作で手続きを進める二人に駒を動かす勝負とは全く異質の闘いの機微が漂った




二日目朝　9時少し前静粛な盤側で封が切られ藤井棋聖は「8七同飛成」を選んだ
凄いのは解説者が予言した如くこの先脱兎の如く激しい攻防の後夜を待たずに藤井棋聖の勝利が決まったことだった
プロ棋士の10中8～9人が歯牙にもかけないと言った「8七同飛成」一方Aiがほぼ100億手を読んで最善手と表示した「8七同飛成」
藤井棋聖が選んだ一手がこれでありそれで見事に勝利した事実は一局の勝敗を越えて実に感動的な出来事だった


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