兵馬俑

アクロポリスの丘に登って瓦礫に蹴躓きながら見上げたパルテノンの神殿頭上から石ころ一つ落ちれば致命的だろうにこれだけ沢山の観光客が訪れながらそんな話聞いたことないな・・と阿保みたいなこと考えたり
幕末遣欧使節団がピラミッドに立ち寄ってスフィンクスの前で撮った写真を思い出し同じ場所に立って同じように写真を撮りながらあれから丁度101年か・・などと同じくアホな物思いに耽った1965年の晩秋同じ旅の中でのひとこまだったどっちも途轍もなくデカかった
それから10年ほどして中国で兵馬俑が地中から発掘された井戸掘りの農民が見つけた陶片が始まりだったその発掘現場の写真を見て驚嘆したのを覚えているまさしく世界史レベルのサイズだった




一片の土偶が導き寄せた壮大な歴史の痕跡往時の始皇帝の権威を直截に知らしむるが如しである
「俑」とは人形のことそれもほぼ人体実寸の8千体軍馬600頭　戦車も数百台埋葬されている
そして驚くべきは1体ごとに全て仕種も表情も違え一体を複写しての8千体ではない
多少焼きものに関わる身でいえばこれを土で作り窯で焼いたとしたら・・どれほどの作業量だったろうか想像に絶するパルテノンやピラミッドに匹敵してもおかしくない





神殿や墓所の建造物とは違ってスッくと立った軍兵そのまま一人一人は実在した兵士たちなのだろうか




この二人の兵士こうして立ち位置を少し動かすと何かを語っているような気がするそして顔の向きを変えても兵士の目線はそれを追ってくる鬼気迫るものをふと感じて怖くもなった





実はこの写真現地撮影ではない2004年秋上野の森美術館で開催された兵馬俑展の会場で買い求めたレプリカである
普段こうしたものを買うことは滅多にないがこの時は工房の特設スタジオで写真にしてみようとそんなつもりで2体を選んだ
能楽の演目に「隅田川」という物語がある人さらいに吾子を奪われ　死んだとも知らずに都から東国隅田川ほとりまで訪ね来た狂女の話その表情が面の僅かな上げ下げだけでまるで心のままに動くのに驚愕したことがあってこのレプリカにも同じことが起こるかと試してみたくなったのだ
案の定「俑」は動いて語った動かざる面顔といえども侮ることはできないレプリカでさえこの迫力現地でだったら到底カメラをむけられそうにない8千の兵馬は今も生きていそうだと思えた

全容を写した写真は検索で見られる兵馬俑（へいばよう）
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