三塁フライの忘年会

無事に本焼きが済んで安堵するかたわら気を抜くとすぐに追いつかれるから休まずコツコツを続けることにして糸を貼り終えていた作品に彩色を始めた
傷みが目立つ筆の中から程度の良さそうな５本を選んだ昨晩のことである



一度始めたらなるべく一気がいい長時間になることを覚悟したそれなりの仕掛け痛いとこだらけの体を思うと姿勢の安定が何よりでそこを見通した設えがこうだ
手は板に乗せて寄りかかれる体の力を抜くためにはこれがいい腱板が切れたままの右腕はこうしないとすぐにだるい痛みに襲われるからだ




陶芸の仕事って多くは慣れたことの繰り返し果てしなく同じ仕種を追い続けることになる
先のことは遥か彼方の作業だけに手許の一手に集中して遠くは見ないことだ「いつの間にか進んでいる・・」　それがいい
「明日はサードフライの日かぁ～４時に家を出れば丁度かな」



明日・・つまり今日のことだが「サードフライの日」というのは
毎月第三金曜日・・だからサードフライデーこの日はただ何となく中高時代の仲間が京橋の地下にある某レストランに集まる定例の日なのだ
開催を知らせる何の通知もない出欠を問われるわけでもない同期のクラスメイトなら誰を誘っても構わない
実に何も縛りのない会食なのに毎回１５人ほどが集まってくる夕方５時頃に始まって話に花を咲かせ程よく飲んで程よく食べる何を頼むもOK　酒でも肴でも飯でもだ
頃合いになると世話役が今夜はひとり頭〇〇〇円だよ・・で終わる
昔話もあれば最新情報もある定番の病気と孫の話も勿論ありだひとしきり旧交を温め7時半にはきれいさっぱり別れる間違っても宵越しのへべれけはいないみんな品のいい老人になったのだ
「生きてりゃまた来月な！」問わず語らずの合言葉であろう実際その来月のなかった仲間も数人いる無念だがそういう年配だからこそ旧交を冷ましたくないのも実感なのだ

不確かな会合なのにレストランも嫌な顔をせずこの夜のために応分の席を作って待ってくれる始めて１０年以上にはなる筈だが言い出しっぺは野球部の旧友だから「サードフライ」なのである
今夜は恒例の忘年会この日だけは出欠を問われるとりわけ美味い酒と食事が用意されるんだろう
遅れずサボらずで出かけることにしよう一期百会初対面から６４年の月日が流れたことになる



出かけるまでに仕上がれば焼いてこうなる皿の彩色である夕方には終わらせねば・・



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