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出会いのドラマ

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かつて在籍した整形外科の専門病院


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社会人になってから53年
長い時間をかけて学んだもののひとつが
「礼儀は大切だが 時に僅かにそれを外すことで
思いがけないドラマが生まれる」であり
「常識を知って常識に捕らわれず」も同じだ

数日前「ファーストコンタクトの10分」を書きながら
私にも思い出すことがあった 時々ふれる病院時代の話
看護婦さんの採用面接のファーストコンタクトである
面接にはドラマがあると言えるが
もっと言えば面接にはドラマが必要であるともいえる
ファーストコンタクトの10分は
そうしたドラマを生むきっかになリ得る


あるとき婦長と2人で看護婦採用の面接をした
いつものように時間をかけて面談したが素晴らしい人材だった
以心伝心 婦長もそう感じたようだ

「それでいつからだったら勤務できるかしら?
ご都合聞かせてくれます?」婦長がそう言った
看護婦さんは手帳を出して都合を計っていた
一寸とした時間の隙間ができた瞬間
「明日からではどう?」
思わず私がそう言ってしまった

「事務長さん! 幾ら何でもかわいそうですよ
彼女にも都合があるはずですからね」
婦長にたしなめられた
勿論それが常識だし礼儀でもある

ただそのとき直感的に私が考えたことは
ここは礼儀よりも
病院はあなたを必要としてるという意志を
真っすぐ伝えたいと思ったのだ

病院マネージメントに関わって
最も大事にしてた持論のひとつは
「機械をはじめ物はなるべく我慢して最新のものを買おう
しかし
人材は巡り合ったと思えたらそれが最初で最後のチャンス」
足りていようがいまいが
この看護婦を採用しなかったら後で悔やむ
そう確信できたら礼とか常識はちょっと脇に置いても
明日から来てほしいと伝えるのが正直だと思った
欠員ができたらではもう遅いのだ

これは想定も予定もできない
一瞬の閃きで決断し申し出てこそ伝わるかもしれないこと
だから失礼を承知で婦長のたしなめを押しのけ
「無理?」と重ねて訊ねた

実はこのとき
これと真反対の看護婦面接の経験を思い出したからでもある
それはいつもの通り同じように面接し
色々質問したり意見を聞いたり30分以上もしたころだった
面接を受けていた看護婦さんが突然こう言いだした

「途中ですが この面接辞退します!」
「どうしたのかな? 何か気に障った?」と訊いたら
「これまでにも何度も面接を受けたことがありますが
こんなに長い時間質問されたのは初めてです
大抵はもっと実務的なことで
いつから勤務できるかとか
希望する部署とかを聞かれることが殆ど
だからこの面接では私は信用されてないのかと
なので辞退させてください」 これが返事だった

分からないではない
当時一般的に看護婦の採用面接は 
大抵は免許証の確認程度で決まるのが普通
何故なら殆どの病院は看護婦が足りなかったからだ
それを30分もかけて面接したのが気に入らなかったらしい
彼女のプライドを傷つけたに違いないが
実はここが本来採用面接の大事な要件であって
もし最初の10分で?だったら面接が30分になることはない

足りないから明日からでもの病院は多くても
ほしいと思う人材でないと採用しない病院もある
時間をかける面接はそれを判断するためで
不快ならどんなに優秀でも私たちの病院では不採用だ
迂闊にもそうしたこの病院に固有の理念に触れずに
始めたファーストコンタクトの失敗だった
申し出の通り中断して別れたが
ドラマではあってもネガティブなドラマで終わってしまった

こうした経験もあって
前述の看護婦さんに「無理?」と聞いた
「おいでよ!」と言ってるつもりだった 

もっと有体に言えば
「迷わずについてこいよ 決して悪いようにはしないから」
ちょい悪おじさんのプロポーズみたいだが本音である
婦長の申し出に手帳を見て考えてたあの一瞬
彼女に僅かな躊躇いを直感して畳みかけたのが
「明日からではどう?」だった
ぶしつけは稀にではあっても力になることがある

結果的に
彼女は翌日から病院に出勤した
「明日からって言われてびっくりしたけど
その分望まれてるということはよく解りました
もし月が変るまで待って色々考えたら
別の面接と比較して迷ったかもしれません
来いと言われて背中を押されたんですね」

後にそう言ってくれたが
私が関わった看護婦さんの中で技術者としても人間としても
やはり出色の逸材だったと言い切れる
忘れられないファーストコンタクトになった

来年には創業35年になる
たった23名のオールスタッフで始めた病院も
今では150名を超えたらしい
単科の専門病院としては小さくない
一緒に仕事した職員はもう少ないが
でもこの看護婦さんは今も在籍してくれている
やはり嬉しいものだ

「型破り」
個人的には好きだが
はた迷惑な事務長だったに違いない

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糸抜き麦藁手水指 自作




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by touseigama696 | 2019-03-06 10:08 | ●エッセイ | Comments(0)

50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・


by touseigama696