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ファースト・コンタクトの10分

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早朝BSで放映されていた指揮者佐渡裕さんが
ベルリンフィルでの初演までを収録したドキュメントを見た
多分アーカイブで少し古い記録だと思うが
(調べたら2011年の収録とある)
指揮者とオーケストラのファーストコンタクトのリハーサル
実に面白かった

初めてのオーケストラとの最初のリハーサル
2~3時間かけてする練習が
最初の10分でオケと指揮者の関係は決まってしまう
佐渡さんもオケのメンバーも同じことを言った
しかし
仮にその関係がダメでも本番の演奏が失敗することはない
力のあるオケは指揮者を無視しても無事に終わらせることができるからだ
さりながら二度と客演指揮に招かれることはないという
その決定権はかなりな比率でオケのメンバーにあるのだそうだ

似た話を以前にも聞いたことがある 正確ではないが多分小澤征爾さんだ
ベルリンだったかウィーンだったか忘れた
若い頃の小澤さんがリハーサルで初めて棒を振った
数分して小澤さんは手を止め「もう一度お願いします」と言った
同じところにきて再び止めた
そして3度目にそこにきたとき 小沢さんの棒は止まらなかった

何が起きたのかを小澤さんはこう語った
「止めた瞬間は楽譜にない音が一つ聞こえたからなんだ
で最初からやり直したらまた同じ音だったから止めた
でも三度目にその音はなかった でそのまま先に進めたんだけど
これはね私へのテストなんだろね」

しかし一見嫌がらせにみえて 必ずしもそうとばかりは言えない
このテストを通過しさえすれば
メンバーはちゃんと指揮者の要求を聞いてくれるようになる
いじめが目的ではない
大事なのは誤音探しではなく曲想の解釈だから
どんな音楽にしたいのか協力的になるには
確かな耳を持った指揮者が
指の腹を僅かにずらしただけの誤音を
聞き逃さない集中力で音を把握してるか
指揮者のセンスにメンバーは重大な関心があるのだ
オーケストラの音楽は
奏者だけでも指揮者だけでも作ることはできない
音は奏者が作り 音楽は指揮者が作る
両者の信頼が全てと言ってもいいのだろう

佐渡さんのベルリン・デビュー
聴衆のスタンディング・オベイと
舞台裏でのメンバーの祝意は
信頼が10分で終わらず 次の招聘を予感させる
温かさに包まれていた

最初の10分 オーケストラだけのことではない
出会いの10分が将来を運命づけるのはどこでもきっと同じ
そこにお互いが信じるに足るだけの誠実さがあれば
実りの多い絆が生まれるに違いない

ファーストコンタクト
少し老いればそのチャンスは多くはない
何事につけ始りの10分を大事にしたいものである

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盆栽とのファースト・コンタクト
とても新鮮だった 目下進行中である




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Commented by BBpinevalley at 2019-03-03 07:19
小沢征爾といえば、サンフランシスコでは、喧嘩っ早くて難しい人物として知られています。
奏者を巡るいざこざで、怒って専任指揮者を辞めてしまい、ボストンに行ったのは有名な話です。
でも、長い目で経歴を見ると、サンフランシスコシンフォニーを世界的な位置まで持ち上げたのは、彼だったかもしれません。

オーケストラって、とてもややこしい人間関係を保つ集団です。
コンマスに人徳があると、救われるのでしょうが。
指揮者は要らないと考える奏者も多いようで、あの集団を引きずっていくのは、容易なことではないでしょうね。
奏者上がりの指揮者より、指揮者でありながら演奏もソロ奏者並み、という方が敬われるようです。

佐渡裕さんのドキュメント、観てみたいです。
Commented by aitoyuuki13 at 2019-03-03 11:32
ベルリンフィルは常任指揮者を自分達で決める、稀有なオーケストラと聞いています
さすがに世界のトップに立つオーケストラは違いますね

ベルリンフィルは聴いたことがありませんが、弦楽メンバーでのアンサンブルと聴いたことがあります
最初のワンフレーズで鳥肌が立ちました
Commented by mother-of-pearl at 2019-03-03 14:41
両者に真の力があればこそ、のスリリングな瞬間ですね!!

小澤さんしかり、佐渡さんしかり、、。
素晴らしいエピソードをありがとうございます。
ただ今LAの片田舎で世間の騒音から隔絶された不思議な場所での夜半を過ごしています。
この記事に刺激され、良い音楽をひたすら恋しく思います。
Commented by touseigama696 at 2019-03-04 08:42
BBpinevalleyさん
ありがとうございます
ベルリンのコンマスはこのときは日本人
それも佐渡さんには幸運したかもしれませんね
オケにとってはコンマスが普代の指揮者
外様の指揮者が客演だったり常任だったりで
いざとなればコンマスがいればいいんでしょうね(笑)
バイクで転戦武者修行した小澤さんのこと
おとなしそうじゃないかもですね
レジェンドに毀誉褒貶あり・・でしょうか
Commented by touseigama696 at 2019-03-04 08:47
aitoyuuki13さん
ありがとうございます
歴史的にも名門のオケには
オケとしての伝説もあって
その矜持が質を担保してもいるんでしょうね
ベルリンもウィーンも色々なエピソードがあります
ウィーンだってウィーン生まれ以外の奏者が
採用されたのはそう遠い日ではなかったはず
ウィーン生まれ以外にワルツは弾けないが
理由だったとか
名手だけが沢山集まると大変ですね
Commented by touseigama696 at 2019-03-04 08:54
mother-of-pearlさん
良い旅を楽しまれているようですね
旅のお話楽しみに・・
オケのメンバーはやはり高度な職人芸
矜持もあって指揮者を見る目は
厳しいんでしょうね
でも息があえば素晴らしい音楽に結実
するわけで
お互いに火花を楽しむ格闘なのかもしれません(笑)

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by touseigama696 | 2019-03-03 06:22 | ●エッセイ | Comments(6)

50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・


by touseigama696