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ろくろ&ピアノ 


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病みあがりともなると
何でもなかったことが何でもありそうで
出来そうだったものも出来そうにない不安にかられる
更に加齢に縛られて身体はいよいよ窮屈である

何でもなかった頃に書いたやれば出来そうなロクロの話
結構今でもそうだな!って思えて
だからここに再掲してみることにした

以下は
2003年 エッセイ集「折々の折り」に
『ろくろ&ピアノ』と題して書いた一文である


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ろくろの高速回転に腕力をぶつけ
大きな力で土を殺している場面

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力には頼らぬが ろくろの回転を利用して
遠心力と求心力で高さを確保しているところ
この高さが皿の大きさの決め手になる

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ろくろの回転を落とし
右手とスポンジのデリケートなタッチで
見込みに綺麗なシルエットを作ろうとしているところ


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ろくろ&ピアノ 「折々の折り」より 2003/5/13


今日は久しぶりに60㌢の大皿を挽いた
ロクロに乗せた15㌔の土は撫でるだけではついてこない
手順に従って力を使い分けるが この加減には大きな幅がある
顔を真っ赤にして土と相撲とる力
馬の背に乗って馬を説得する手綱の力
幼子の頬を撫でる柔らかくて優しい力
この使い分けが大皿の成否を握ってる

土に直接触れてその力を使うのは指だが
だからと言って力の源は必ずしも指ではない
どこで力を生むのかと問われると さてと思うが
しいて言えば臍下丹田の腹だろうか
足腰で支えた腹を踏ん張ることで力を生む
そしてその力を肩 肘 手首の関節を通して指に伝え
身体全部で土に向かうとでも言えばいいのだろう

それは丁度ピアノの発音の仕組みと似ている
ピアノは
鍵盤を叩いた指の力がフェルトのハンマーで弦を叩き音になる
原理は簡単だが 実際にはこの仕組みをアクションといって
複雑な仕掛けになっている 原理で言えば
シーソーの一端を指で叩くと反対側の一端が跳ねて弦を叩き音になるが
これだけでは音が荒々しくてデリケートな音楽表現が叶わない
フォルテッシモはだせてもピアニッシモは無理かもしれないのだ

それを解決するのがハンマーアクションである
鍵盤からハンマーまでの間に幾つかの関節を作って
鍵盤に加えられた指の力をダイナミックで繊細な音に変える仕組みなのだ
だからこのハンマーアクションのためにピアノメーカーは
それぞれに工夫と違いを凝らし個性をアピールすることにもなる

余談だが
ピアノという楽器の名称の語源はイタリア語で
「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ」意味は
ピアノからフォルテまで強弱のつけられるチェンバロ
この中のピアノだけを残して詰めたってわけだ

弦を爪でひっかいたチェンバロにはできなかった強弱表現を
ハンマーで叩いて可能にした発明が
後に楽器の王様と言われるピアノを生んだのである

本題に戻れば
ロクロに乗せた土への力は身体を使ったアクションなのである
腹で作った力を肩・肘・手首を通過させて
土にフォルテとピアノにして伝えるアクションと思えばいい
土殺しの荒々しいフォルテッシモも
仕上げのデリケートなピアニッシモも
完全に制御された力であるためには
身体全身を使い意識を集中して向かわねばならない

僅かな力の違いで土が死なず 形になる寸前で崩れる
一見格闘技のように見える大物挽きも
実は極めて音楽的な表現に似て微妙な力の組合せなのである


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物が大きくなればなるほど
パワーとデリカシーの振幅も大きくなる
自在に制御して狙った姿をものにする悦びは
やはり大物の面白さといえる

力のある時代に挑んで損のない技だと思う
大きな物が挽けると 小さなものの質が良くなる
付加価値とでも・・・





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by touseigama696 | 2019-02-01 10:53 | ○陶芸雑感 | Comments(0)

50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・


by touseigama696