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『無一物』・・長次郎

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21か月もの長い準備期間を頂いて
個展のオファーをお受けした一昨年の秋
最初にしたことは・・優品を見て歩くことと
この二冊の書物を座右に置き
じっくりと読み耽ることだった

茶懐石の名店を抱える柿傳ギャラリーでの個展は
茶陶を避けては通れないから
腰を据えて勉強せねばと・・思ったからだ


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冒頭を飾る長次郎の茶碗「無一物」
ある勉強会で著者の林屋晴三先生が
この茶碗から汲むものの何と多いことか
じっくりと見つめてごらん
そう仰ったことが・・こころに残る

個展開催が二か月後に迫った今
ふり返れば
この茶碗から受けた影響は
思いのほか大きいことに気づいている

何の変哲もなく
一点の芯で立つ静かな居住まい
無意味な作為を離れ・・部分は全部を支え
全部は部分を・・ふっくらと包んでいる
姿が何かと調和するのでなく
姿が姿のまま調和している

もし写そうとしたら
どこから始めて・・どこで終わる
メビウスの輪のように
全ては連結して居場所を見失う

姿を目で追えば・・きっと見失う
この姿を再現したかったら
それを可能にするのは
目ではなく・・指の腹でさぐることだ

それには・・心当たりがある


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これは自作の木工パイプ
原木をやすりで削りだしたものだが
左右シンメトリーの卵形は
目では測れない


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目をつぶって
親指と人差し指で横腹を持ち
軽く回転させたとき・・指が感じる原木の抵抗を
そこだけ・・めのこに削ってゆくと
いつの間にか・・卵になるのだ
経験で覚えた

今・・ロクロを挽きながら
思うことは・・そこだ
目で崩して面白味とするのは止めた
目を閉じるが如くに・・指に神経を集め
動かさぬ指の間から生まれる端整な真円
それを茶碗と思うことにしている

俳句で言えば・・一切の説明の排除
端整は・・単刀直入がいい
美しい茶碗
願わくば・・そうしたものが作りたい

21か月の内19か月が過ぎた
陳腐だが・・光陰は矢の如く走り去る
少年老いやすく・・技成り難し
因果な仕事なのだ




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Commented by Blue-salvia at 2017-04-25 00:03
この木工パイプは自作ですか?

何でも、できるのですね〜。
Commented by touseigama696 at 2017-04-27 00:28
Blue-salviaさん
ありがとうございます
30~40代のころ趣味で作った自作です
2~3年でコロコロ趣味を変えていた時代
色々楽しんで・・それが今の陶芸に生きてるかも
そんな気もします
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by touseigama696 | 2017-04-24 23:16 | ○陶芸雑感 | Comments(2)

50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・


by touseigama696