2015年 11月 03日
名工福島善三さんのこと |
金曜日の朝・・一番で福岡に飛び
レンタカーで・・大分自動車道に乗り
杷木で下りて・・暫く山道を走った
小石原道の駅にほど近く
福島善三さんの窯がある
立派な門構えは・・さすがに
小石原焼きの名門なのである
江戸時代から300年
民芸の雄としての小石原は
用の美を追求する実用陶の本場だった
隣接する小鹿田焼きと共に
長く伝わる技法を守ってきたが
一方で新しい時代への対応にも迫られ
長い伝統と変化の坩堝のなかで
新しい道を模索する宿命も背負ってきた
福島善三さんは・・その第一人者
用の用と美の美を・・一体に重ね
歴史に先んじ・・時代を掴まえる
見事な陶芸を具現してきた名工である
長いこと私は・・この玄関を潜ることを夢見てきた
その思いは・・憧憬15/05/04二も書いた
その願いが叶ったというわけである
先々月・・日本伝統工芸展のパーティーで
お目にかかった折りに・・お邪魔する約束ができた
じっくり話しを聴く機会は・・作ること以上に貴重で
勇んで出向いたのは言うまでもない
ここに書けないことも沢山あった
同じ日本工芸会の会員としてのよしみで
話してくださることの中には
福島さんが長年の研究を通して見出した
秘訣とも言うべきものが沢山ある
伺っても・・直ちに真似できるものでないが
研究する姿勢を・・那辺に維持すべきなのか
その試行錯誤の重層に驚嘆し
完成度とは何かを・・改めて思い知るのである
名工の工房をお尋ねしていつも思うことは
窯場に漂う・・「気」が体に流れてくることだ
本気の仕事場だけに漂う緊張は
本気を維持しなければ・・雲散霧消する
真っ直ぐに歩くひとは・・だから美しいのだ
均窯につながる月白瓷は
どこまでも青く白く・・何事もなく静謐だが
僅かに紫紅を配し・・伝統をなぞらえている
偶然だが・・かつて僅かな時期
手ほどきを受けた先生は
宋代の紫紅釉を探求していて
均窯ゆかりのやきものでもあったから
月白のことも・・僅かに頭にはあったが
しかし・・宋代の月白はこれほど綺麗じゃない
後世の作家の苦心が・・今につながっている
更に・・これに貫入を入れるか入れないか
「それだけでも・・実に厄介なことでしたよ」
こともなげに仰るから・・なおのこと厄介が通じる
貫入を入れて個性なら・・入れぬも個性
福島さんの月白には・・一切の貫入はない
乳白の一際滑らかな美しさは・・きっとそのせいだ
引き算は・・技術ではない思想なのだと思う
窯場・・作業場も見せてくださった
奥の座敷で2時間近く・・貴重な話を伺った
私より一回り以上もお若い福島さんだが
正に熟達の王道を歩いておいでだ
来年のリベンジに向けた私の構想も
聞いていただき助言もいただいた
私にとっては・・どこまでも憧憬の作家だが
限りなく涼やかでいながら・・重厚な美を前に
福島さんの印象的な言葉を・・もうひとつ
「結局・・伝統工芸としてのやきものは
その根底で・・使えることが満たされてないと
決して優れたものとは言えないと思います・・」
この月白瓷の湯呑み・・を記念に頂いた
「小石原で採れる土は・・よく暴れる土でね
形にするのが難しい上に・・釉が月白でしょ
一筋縄じゃゆきません・・」
こんなに優しげで穏やかな湯呑みを前に
「日々の苦労が器に見えるようじゃまだまだ」・・ってこと
そう諭されているに違いない
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by touseigama696
| 2015-11-03 10:49
| ●畏友交遊
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Comments(4)
深みと品のある素敵な湯呑みですね!!
0
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touseigama696 at 2015-11-04 05:27
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サブ
at 2015-11-04 09:40
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すばらしい所ですね。
福島さんのお子様も陶芸をされて後を継ぐ予定なのでしょうか?
福島さんのお子様も陶芸をされて後を継ぐ予定なのでしょうか?
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touseigama696 at 2015-11-05 08:10