2012年 10月 18日
おとぎばなし |

あるお金持ちの天才天文学者が
星を観測するために・・船を仕立てて遠い島に渡ろうとしました
観測には長い時間がかかるからと
大工さんとコックさんを連れて行きました
ところが大嵐に出会い
予定していた島とは全然別の無人島に流れついてしまいました
船は流され・・三人が手にしていたのは
天文学者の望遠鏡・・大工さんはのこぎり・・
コックさんはやっと包丁一本だけでした
誰もいない海辺の木立の中で・・三人は途方に暮れました
「しゃあないな・・まずは食い物だ・・魚でも釣ってこよう」
そう言い出したのはコックさんでした
幸い穏やかな海で・・手づかみでも魚が獲れました
コックさんは・・残された包丁で上手に魚をさばき
乾いた流木で火をおこしてそれを焼きました
「助かった・・ともかくこれで食べられる」・・三人はほっとしました
通りかかる船はないかと・・交代で見張りましたが
水平線には何も見えません
10日ほどして・・大工さんが言いました
「とりあえず小屋を作ろう・・雨だって降るかもしれないからな・・」
森の木をのこぎりで切り倒し・・上手いこと小屋を作りました
これで・・雨や風や太陽から身を守ることができるようになりました
天文学者は何もできません・・大工さんが作った家に住み・・
コックさんが作った食事を食べるだけ・・こう言いました
「すまんなぁ・・こうなると私は何もできない・・」
それからの長い日々・・
コックさんは・・森の中で食べられる植物を探し
木の実や葉っぱを利用しては食事を作りました
他に何もできるわけでないから
森の中で食べ物探しをするしかなかったのです
大工さんは・・小屋の前で丸太を組んでいかだを作り始めました
大工さんも他になにもすることがなかったから
いかだを作っていると気がまぎれました
天文学者は・・依然として何もできません
仕方がないから・・
昼間は望遠鏡で船を探し・・夜は天体観測をしました
こうして・・一年が過ぎてゆきました
或る日・・天文学者が大きな声で歓声をあげました
「わかったぞ!わかったぞ・・ここがどこだかわかったぞ!」
一年間星を観測していたら・・
どうやらこの無人島の位置がわかったようでした
「春と夏の間なら・・いかだで陸地まで行けそうだ・・・」
やがて三人は・・大工さんの作ったいかだに
コックさんの作った保存食を積んで・・海にでました
天文学者の予想した通り・・
三人は無事に陸地にたどり着くことができました・・・とさ

これは私が作ったおとぎ話・・2004/10/05の折々の折りです
もしこの漂流記が・・
天文学者三人でも、大工さん三人でも
あるいは・・コックさん三人でもうまくはゆかなかったでしょう
天体観測ばかりでは食べられないし
三軒の小屋を作ってばらばらに住めば・・
お互いの気持ちも離れてしまいます
「俺の料理のが美味いぞ!」と
喧嘩ばかりしていても同じことです
とりあえず食べて命をつなぐコックさん
雨露をしのぐ小屋が作れる大工さん
生きてゆく知恵と技がうまいこと噛み合い
命を守ることができたのです
でも・・それだけでは故郷に帰ることはできません
暮らす術は何もなくても
天体観測の学問を使って帰る道を探したのは・・天文学者でした
この三人・・
誰が上で誰が下でもなく・・誰がリコウで誰がバカでもありません
最初の一週間なら・・コックさんが一番役にたったでしょうが
一ヶ月となれば・・大工さんの知恵が何よりです
でも一年では・・天文学者の知識が生きたのです
順序に違いはあっても・・この三人の知恵と技は
どれもこれも大事なものでした
どれひとつ欠けても・・故郷には戻れなかったでしょう
人間が大勢で生き・・暮らす
つまり社会とは・・この三人と同じことなのです
どんな人間にも・・その人が必要な場面は必ずあるものです
必要になる順序がばらばらなだけです
だから・・今必要なひとがいて・・明日必要なひとと
昨日まで必要だったひとが・・一緒に暮らしている
それが社会なのです
肝心なことは・・何でもできる必要はないが
ひとつくらいは・・役に立つ何かを身につけ
それが生きる場面がくるまで
ひたすらに技や知恵や知識を磨くことです
生まれでも身分でもなく・・学歴でもなければ地位でもない
「必要な時・・場面」というものさしで考えれば
人間はみな似たりよったりなのです
それにしても・・ひとつ気がかりなのは、
煮炊きはできなくてもいいから・・しっかり天体観測して
この国を安全な陸地に連れてゆかねばならない・・議事堂の住人が
どうやら・・「昨日まで必要だったひと」・・ばかりじゃなかろうかと
思えてならないことなのです

by touseigama696
| 2012-10-18 21:33
| ○折々の折り
|
Comments(4)

そうなんですよ!!私のとこなんかホントワケのわからない烏合の衆の集まりなんで、そうした広がりのある可能性に期待するしかないんです。しかも私が一番いい加減で〜酒飲んだら通訳必要だし >>笑。よくこれでアシスタントが集まるのか不思議です。今月から住み込みで新しいアシスタントが埼玉から来ます。幻滅されないように頑張りたいのですけど多分無理。フォローは梅澤さんに御願いして、困ったときは三崎さんに(うめちゃんが相談して解決!!)と〜勝手に決めています。お手数お掛けいたしますが事後承諾よろしく御願い申しあげますです。m(_ _)m
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♪_MU_RO_FU_SHI_さん
ありがとうございます
新しいアシスタントさんがお入りになるよし
いつも楽しそうで・・羨ましい工房です
でも・・お役に立つことがあれば
遠慮なく・・おっしゃってくださいな
ありがとうございます
新しいアシスタントさんがお入りになるよし
いつも楽しそうで・・羨ましい工房です
でも・・お役に立つことがあれば
遠慮なく・・おっしゃってくださいな
2004年のおとぎ話、興味深く読みました。
それから、果たして自分は何ができるのだろう?と考えてしまいました。
特技もない才能もない、なにもできないじゃない・・って(>_<)
議事堂のみなさん。何でもできそうで、何もできていない。
せめて国民に負担や迷惑をかけることだけは止めてください。
それが最低限の国民の資格だとしたら、なんとなくあの方々よりは世間に迷惑をかけないで生きている気はしますネ(^.^)
頑張ろうっと♪
それから、果たして自分は何ができるのだろう?と考えてしまいました。
特技もない才能もない、なにもできないじゃない・・って(>_<)
議事堂のみなさん。何でもできそうで、何もできていない。
せめて国民に負担や迷惑をかけることだけは止めてください。
それが最低限の国民の資格だとしたら、なんとなくあの方々よりは世間に迷惑をかけないで生きている気はしますネ(^.^)
頑張ろうっと♪