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絶筆 (17)

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10年ほど前のこと・・
勤務していた病院の事務長をリタイアし
窯を築いて独立したが・・

その時・・今は亡き父に揮毫を頼んだ
最晩年の父は・・滅多に筆を持つことはなかったが
それでも丸一日かけて・・「桃青窯」と書いた

これが・・
多分最後の揮毫で・・絶筆でもあったはずである
残された渾身の気力で・・書いてくれた
今になれば・・かけがえのない記念でもある

「桃青」は・・芭蕉の若いころの俳号
先日昇天した母が俳句好きで・・
それを屋号に・・茶舗を商っていた時代がある
半世紀も前のことだが・・「桃青園」といい
祖母にまかせて・・近所の年寄りたちのたまり場のようだった

その場所に・・今は私の工房がある
だから・・桃青窯を名乗って・・なごりを残したのだ
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数日前・・父母の遺品を整理していたら
色紙に揮毫した父の書が・・沢山でてきた
現職時代に書いたに違いない

医者で大学の先生でもあったから
ため書きをみると・・卒業祝いや結婚の祝いのようだ
選んで渡した残りと思われる

読んでみれば・・やはり父らしくもあり・・医者らしくもある
「奪うなかれ・・与うべし」
それは・・「命」・・でもあったろうか
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経を以て経を説く・・「読むなら原典を」・・とでも
それは・・父の原点でもあった
時間をかけて・・原書を読み解いていた

同時に・・
臨床医としての信念でもあったかもしれない
身体に生じた病い・・こそ
医の・・「原典」・・だったのではなかろうか

「読むなら・・患者の身体を読め・・!」

そんな気もするのだ
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偕老・・互いに共白髪まで・・それは果たした
94歳と90歳の死・・全うした・・と思う
同穴・・献体を申し出た父は・・骨になって墓に戻ることはない
してみると・・母は墓でも後家暮らしなんだろうか
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父の書いた「桃青窯」は・・
シールになって・・こうして桐箱に貼っても使う

お買い上げの客のもとに納めれば
ひょっとすると・・挨拶ぐらいしてるかもしれない

「・・本日は・・末弟の愚作をお買い上げいただいて
誠に恐縮でございます・・」・・とか

死ぬまで髪の毛のふさふさだった父は・・
母方の血をひいた私の頭を見ては
「・・あらら・・少々薄くなって・・」とか言って
からかうのだったが・・

どこかで・・自分の知人に私を紹介しようとして
「・・末の弟です・・」と言ったことがある
「そうでしたかぁ・・」とかまじめに挨拶されて
閉口したのを思い出す

ふたりとも死んで・・
片づけたり・・手続きしたり・・
慣れない作業が続く・・

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Commented by tes_music_system at 2009-12-19 07:41
生きている限り、両親もあなたの中で生き続けていくんですね・・・
Commented by gaunn at 2009-12-19 08:33
お早うございます
すばらしい遺品ですね、書きなれていらしゃる筆の跡先祖様の遺徳が
偲ばれますね
Commented by cat-korokoro at 2009-12-19 20:20 x
ただいま夫がこのお父様の御言葉通りに対処してくださった医師に巡り会い、命を長らえることが出来ました
昨今の少々大きな町病院の空診療などとは比べものにならないほど
大学病院の医師達は親身で病気と向き合ってくれます
つまらない患者の繰り返しごとでもうんうん!(^-^)と頷いてくれたり・・・
お父様のような先人がいるからこそ、そう思わずにはいられません

お母様と共白髪まで・・・それはお互いの信頼がなせる技
今度は師匠がね(^_-)---☆Wink
Commented by touseigama696 at 2009-12-19 23:02
tes_music_systemさん
ありがとうございます
そうかもしれませんね・・
思い出・・ってそういうものなのでしょう
Commented by touseigama696 at 2009-12-19 23:05
gaunnさん
ありがとうございます
やはり明治の人間は・・
習わずとも・・筆をうまいこと使いました

パソコンを使うようになって
字を忘れるようになって
少々・・嘆かわしい気分です・・苦笑
Commented by touseigama696 at 2009-12-19 23:08
cat-korokoro さん
よかったね・・大変だったね
医療は・・今一番難しい時代にいます
娘も医者で・・身体壊さねばいいが・・と
ちと心配ですが
好きでなった道・・無事に歩いてほしいものです

春に向かって・・ご主人の復帰の早からんことを・・祈
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by touseigama696 | 2009-12-19 00:20 | ○未分類 | Comments(6)

50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・


by touseigama696