この仕事が終ったら・・
暫くどこかへぶらり旅に・・と決めていた

先週の水曜日の深夜
愛用のワンボックスの後部座席に
快適なベッドを設え・・寝袋一枚に枕をひとつ
適当に着替えと日用品を積み込んで
中央高速に乗った

この夜から・・結局5日間
何一つ予定も予約もない・・ひとり旅が始まった
古い窯場を訪ねて・・その空気を吸ってみたい
それだけで・・出発したのだった
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諏訪の辺りで・・2時間ほど仮眠して
あとはひたすら走った
夜明けには多治見に着いた

ナビゲーターは・・こうした旅にはなくてはならない必需品
音声ガイドを頼りに・・人気のない古窯跡にたどり着いた
大萱 牟田洞古窯跡である

かつて・・荒川豊蔵さんが
志野が・・瀬戸ではなく美濃のやきものと発見した
あのドラマティックな歴史の書き直しの舞台がここだ

魯山人のもとを去って・・この牟田洞に窯を築き
志野の再現に生涯をかけた荒川豊蔵の人生が
ここの空気の中に流れている
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ひっそりとして・・雨に打たれた色濃い緑だけが
溢れるほどに覆いかぶさってくる
朽ち葉を踏みしめながら歩いた
黙って・・ゆっくりと・・歩いた
やきもの・・って
そんな風に歩く地味な仕事だと
しみじみと思った

荒川豊蔵氏の薫陶を受けた志野の人間国宝鈴木蔵さんに
お目にかかったのは・・この日の午後のこと
突然の訪問でご迷惑だったろうに・・
こころよく通してくださり暫くお話を伺ったが
「ゆっくり焼いてゆっくり冷ます・・志野って・・それだけだよ・・」
そう言えるまでの長い時間・・途方もない試作の日々
静かなもの言いの・・静かな迫力
ゆるぎないものが伝わって・・気をいただいたようだ

旅は・・多治見 瑞浪 可児 土岐 瀬戸 猿投 常滑・・と続く
気ままなリラックスの独り旅・・ほんとに久しぶりのことだった
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Oさん得意の掻き落とし・・
どうやら素焼きも無事に通過
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正確で丁寧な仕事の面白さと自信が生まれ
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次の素地を作り始めている
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裏だって・・大事だよ!
表面とは一味違うデザインが生きてくるはずだ
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Kさんの出品準備も始まっている
この大皿に魚が泳ぐ日も・・遠くはなさそうだ
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皿を挽くひと・・
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鉢を作るひと・・
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皿を削るひと・・あれば
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カップつくりに勤しむひと・・あり
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素焼きもたまり・・
この2週間は窯焚きの夜が続く・・
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私の皿も・・加飾待ちでひっそりと・・
締め切りが迫ってくる
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みんなが銘々・・思い々に
じっとロクロに向かっている姿を眺めながら
集中の心地よさを・・感じた午後でした
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これ・・子どものころ息子が使っていた卓球のラッケト
いつだったか・・昔の息子の部屋で見つけて
爾来・・工房の便利な道具に変身した
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こうして持つと・・まるで卓球してるみたい・・だが
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ボールの代わりに乗ってるのは・・器
削り終わったあと・・
姿の良し悪しを確かめるのに便利なのです
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手首を回せば・・
色々な面から眺めることができる
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ゴムのラバーが適度な滑り止めになってくれるから
下から見上げたり・・傾げて見ることもできる

器を直接手にするより
はるかに安全に姿を確かめられて
意外に・・スグレモノ・・ですよ・・笑
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器には・・
削っちゃ身もふたもないものもあれば
削らなくちゃ・・身もふたもないものもある
仕上げが何かで決まるが
私の「糸抜き波状紋大皿」の場合
削らなきゃ・・の方である

波状に貼る糸がしっかり定着して
吹きつけた顔料を糸の下に潜らせないために
丁寧に削って・・表面を滑らかにしておかねばならない
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間違えば・・指一本くらい切り落としてしまいそうな
この超鋼カンナ・・鋭利で強靭な優れもの
カラカラに乾いた土の硬さにもめげず
綺麗に削りだす
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だから仕上げ削りは・・このカンナの独壇場だ
様々な形状の刃を使い分けて
思い通りの表面を作らねばならない
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土の乾燥に応じて道具を使い分ける
いつの間にか・・道具が増えて
デリケートな表情づくりを目指すことになる
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この一年ほど・・
いつも出向く益子や笠間の道具屋さんに
超鋼カンナの姿が減って・・手に入れにくくなっていた
なくてはならない道具だけにちょっと不安だったが

先日・・このブログでもお馴染みの藤井さんに相談したら
いっぺんに解決した・・道具屋さんを紹介していただいたのだ
早速注文して・・12本ほど補充できた
これで安心して削れる

私の仕事は・・私独りで作っているようにみえるが
しかし・・なくてはならない材料や道具を調達できなきゃ
何も進まないわけで・・そこらへんのありがたさを
忘れてはなるまい・・と・・ふと自戒でもある
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この数年・・
シルバー人材センターに派遣を依頼して
年配の希望者さんに土練機を回して
粘土の再生をたのんできたのだが・・
そのAさんが急に辞めた

改めて教えるのもやや面倒で
だから久しぶりに自分で再生することにした
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荒練りした土を輪切りにして
その一段づつを横に混ぜ合わせて
土の水分と粘性を平準化してゆくために
何度も土練機をくぐらせる
地味で面倒な仕事だが・・大事な仕事でもある
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基本だから・・しばらく湯呑みを挽いて!・・と言ったら
三個作ってやめた生徒さんがいた
「だって・・そんなに沢山湯呑みがあっても困るんです」

それじゃ稽古にならないから・・
沢山作って・・そこから三個選べばいいさ
そういうわけで失敗土が増える

15キロの大皿を・・一日で四枚挽いて
四枚とも失敗した生徒さんもいた
全部で60キロの失敗・・土練機が忙しい
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ロクロの稽古に失敗はつきもの
避けては通れないから
土練機が忙しいのは仕方がないのだ

教室を終え・・素焼き窯詰めを済ませてから
土練機に向かった
5キロの棒が16本・・80キロが蘇った

誰もいない工房で・・独り静かに・・
地味な仕事で過ごした夜だった
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4月15日が初日の『第48回東日本伝統工芸展』・・
その前日に・・どうやら無事に懸案の納品も済んで・・(more)
少しほっとした気分で会場に出向きました
相変わらず人気の展覧会で・・にぎわっていました
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「今度は何だしたの・・?」
こう聞かれるのがつらいとこですが
いつもの糸抜き波状紋大皿・・
代わり映えしませんが・・でも
ちょっとでも完成度を上げるための工夫はしてるつもり

大きなな展覧会への挑戦は
ひとつのモチーフや技法の完成度を上げるのに
10年単位ってこともあるのです

去年に続いて2度の入選
秋の本選を入れると・・続けて3回目
強運は続いています
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会場の撮影はご法度なのですが
作家が自分の作品を撮影するのは
リボン着用でならOK
内緒で・・おなじみのブロガーさんの作品をパチリ

これは望月集さんの板皿・・紫がじつに綺麗
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藤井隆之さんの作品
様々な緑を変化させてグラデーションをかけてゆくのは
きっと緻密な作業
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林寧彦さんの作品
春を待つ思いを・・小鳥の羽ばたきに寄せて

夕方から三越の大食堂でパーティー
この世界のキラ星がずらりと並んでとても華やか
熟知している作品の作り手にお目にかかるのは
何よりの勉強だし・・素晴らしい刺激
入選の特典は・・まさにこれにしくなしなのです

ついでに・・こちらも(more)

More
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近頃・・・妻が桃次郎の散歩にでかけてる間に
二人分の朝飯をしつらえるのは・・私の仕事
まぁ・・そんなにレパートリーが広いわけではないが
それでも何やら頭をしぼってメニューを考える

朝食のことだから・・プレート料理が多い
野菜炒めだの・・卵料理だのである
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ここにアップした皿は・・
そういう意味で朝飯用みたいなもの
私の作品だが・・個展の際に試作して
結局ペケにしたシリーズである

だから我が家で使ってるわけだ
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ところが・・使ってみたら
これ朝食には具合がいい
何がって・・気分が明るくなる
たわいないキャベツとベーコンのオイスターソース炒め
ってのが・・結構メルヘンっぽく見えるのだ

そういうわけで・・結構愛用している
食器も・・構えて作ればいいってもんでもない
かわいらしく・・
似合わないかもしれないが・・面白そうだ
もっと試してみるぞ!!・・

過日・・『成功の母は・・別の成功』と書いたが
どうやら・・『失敗も成功の母』になれるようだ・・
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窯を焚いた朝は・・工房を逃げ出すのが一番
窯が冷めるのも待つもどかしさから逃れたいから
だから・・
朝食を済ませて・・そそくさと家をでた

日暮れて家路を辿るころ
今日一日実りを・・実感していた
その豊饒の一日を羅列してみれば・・こうだ

① 第47回日本現代工芸美術展覧会・・東京都美術館(上野)
② 綿引道郎 彫刻展・・高島屋(日本橋)
③ 上瀧浩一 陶芸展・・高島屋(日本橋)
④ 中山忠彦 永遠の女神展・・高島屋(日本橋)
⑤ 匠会 作品展・・三越(日本橋)
⑥ 福野道隆 作陶展・・三越(日本橋)
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第47回 日本現代工芸美術展

朝の9時半・・満天の桜・・
今日明日が見ごろの上野の山も
開館直後の都美術は・・まだ静かだ

現代工芸の粋を集めて・・
造形の妙を追及するこの展覧会
私淑する小林政美さんの作品も
DMを送ってくださった中内順子さんの作品も
8室に分散されて・・探すのが大変
ロクロ挽きには叶わぬ自由な造形に圧倒されての鑑賞だった
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綿引道郎 彫刻展

綿引道郎さんは・・私の小学校時代の同級生
芸大を出てから・・彫刻一筋・・この春
長年奉職してきた広島市立大学教授を
退官されるのを記念しての展覧会
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綿引道郎 彫刻展 図録より引用

「もうやがてみえると思いますよ・・」
しばらく・・このメルヘンに満ちた彫像と対峙し
彼の中で長いこと醸成されてきた詩情にひたった
「昨日も一日在廊されたから・・お疲れだったかも・・」
再会はかなわなかったが・・
退官されれば私と同じ地元
きっとすぐに会えるに違いない
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上瀧浩一作 湯呑

彫刻展の会場の前で・・
上瀧浩一さんの個展か開かれていた
不覚にも知らずに来たが
浩一さんご本人に声を掛けられて
初めてそれと知った・・陳謝

尊父の上瀧勝治さんとともに
布染めに新境地を開く逸材
お若いのに既に確固とした世界を持っている
満帆に風をはらんだ船のごとく・・とでも

湯呑みをひとついただいた
箱書きの筆跡に・・
彼の端正な人柄を見た
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中山忠彦 永遠の女神展

上瀧さんの個展会場の・・これまたすぐ横で・・
中山画伯の企画展も開かれていた

日展の重鎮 中山忠彦さんは・・
実は我が家にほど近いところにアトリエを構えておられる
40年ほどになるだろうが・・
ご夫妻と親しくおつきあいいただいてきたのだ
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作品のかなりは・・夫人を描いたもの
おふたりで欧州を旅して蒐集されたアンティーク・ドレスや
家具調度 古楽器などを配して描かれた作品は
その色彩の美しさとともに
見る者のこころをとりこにする
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中山忠彦 永遠の女神展 図録表紙より

これも夫人を描いた作品
その夫人が会場におられ・・久しぶりにご挨拶した
「ごめんなさいね・・これの準備が忙しくて
あなたの個展に顔をだせなかったわ・・」
大勢の鑑賞者の中にいて
気づく人は少なかったかもしれない

このノーブルな絵の中に
気さくなお人柄が偲んでいる
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匠会 作品展

私の工房の生徒さんに・・佐賀出身の方がいて
そのよしみで・・匠会の作品展を拝見した

酒井田柿右衛門さんと その仲間たちのが集う
有田 唐津 萩に伝わる伝統工芸の粋を集めたものだ
現代工芸のベイシックを支える伝来の妙と
時代への対応にこころくだくものつくりの感性を
たっぷりと味わった
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匠会 作品展 図録より引用

万回の繰り返しを経た造形の美しさには
圧倒的な説得力がある
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福野道隆 作陶展・・赤絵絣文長皿 第18回日本陶芸展 図録から引用

「三越に行くなら・・匠会の隣りで・・福野さんがやってますよ」
上瀧浩一さんが教えてくれた
去年の日本伝統工芸展の懇親会以来
久しぶりに福野さんにお目にかかった

「黒天目に赤絵を・・?」
「そりゃ無理かも・・!」
話は早い

「赤絵のことなら・・福野君に聞けよ!」
去年・・同じ笠間の山路さんはそう言った
「ゆっくり教えていただきたいことあるから・・
工房訪ねてよろしい・・?」
「どうぞ!・・」これまた話が早い

絣の赤絵・・
この会場も色とりどりに精緻に装飾されて
それが殆ど売約済みだ・・
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こうして6つの展覧会を歩いた
それぞれにすばらしかった
あっという間の一日

明日からは・・
注文制作の最終段階
うまく仕上がってほしい・・
ただそれだけである

帰宅して・・窯の様子を・・
390度・・明日は出せるだろう
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糸抜き波状紋大皿・・新しい試み
弁柄で抜いて・・梨灰黄釉で焼いたものです


52歳で始めた私の陶芸・・晩学である
死ぬまで続けるとしても・・さして長い時間ではないだろう
しかし・・だからといって
若いひとを羨ましいと・・思ったことはない

52歳は・・
私にとって「頃合」だったような気もする
同じことを・・30歳のときに始めたとして
だからといって・・今と同じ陶芸になったかどうか
私にもわからない

それでもひとつだけ・・
若いひとが羨ましいと思うことがある
惜しげもなく「無駄な時間」を使えることだ
必要な時間なら・・
若いひとも・・少し老いた私も同じ
しかし・若いひとにあって・・私にないものが
存分に使える「無駄な時間」である

無駄というと差し障りがありそうだが
不要な時間といいたいわけではない
結果を気にせずに使える時間・・とでも言おうか
あるいは・・
目的地には向かうが・・およそ遠回りな道・・でもいい

可能な限り近道を探そうとする晩学は
そう思わないと間に合わないかもしれない切実さの中で
なお・・遠回りな道を歩くことこそが
仕事に厚みをもたらすに違いないと思うからだ

思い通りにならなくてもいい・・
上手くゆかなくてもいい・・
結果がでなくてもいい・・
しかし・・それでもやってみる
そういう時間がほしい
若いひとを羨む・・たったひとつの嫉妬かもしれない
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『おととい成田についたばかりなんですけど・・
ちょっとお訪ねしてもいいですか? 見ていただきたいものがあるから・・』
アメリカのニューメキシコに住むNさんから電話が入ったのが今朝
夕方には私の工房に現れ・・見せてもらったのが・・
ここに掲載した一連のやきものの写真である

これは・・全て彼女の作品である
正直びっくりした・・その理由は・・
少々古いが05/06/22折々の折りに書いた私のエッセイにある
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05/06/22・・この日 彼女に陶芸を奨めたのは私である
爾来3年弱・・ニューメキシコに戻った彼女は
私の奨めのままに・・インディオに手ほどきを受けて
手びねりの陶芸を始めた
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このどれもが・・紐づくりの作品なのだそうだ
粘土店があるわけじゃないから
仲間に連れられて・・土の採取から始める
赤い土に白化粧を施し・・
その上に筆で彩色したようだ
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どれも見事である
始めて数年のものとは思えない
元々音大を卒業したオペラ歌手だから
アーティスティックな素養に恵まれてはいるが
それにしても造形といいモチーフや彩色といい
素人離れの域のようだ
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『あなたが奨めてくれたから始めたけど・・
こんなに面白いとは思わなかった
だから・・帰国したら是非見てほしいと・・』
同時に・・矢継ぎ早やの質問攻めに遇ったが
それはもう・・趣味の楽しみというより
まさにプロの自覚に目覚めたもののようだった

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