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六日目の午後・・ふと気づくと
ためつすがめつ作品を凝視する女性がおられた
作品への興味の持ち方は・・見方で想像できる
鑑賞なのか・・制作上の関心なのか
きっと後者だと思ったのでお声をかけた
やはりそうだった

そしてその興味は
以前からブログをご覧になり
かなり技術的なことまで広いものだった
仮に陶子さんとしよう

声をかけた瞬間・・振り向いた表情は
「あなたは私を知らないけれど
私は・・あなたを知ってますよ」
ブログが間に入ると
それが目に現れていて・・大抵当たるのだ
実際・・初対面だが
私のことをよくご存じで
ブログから記憶に留めていただいているのが判る

「芳名帳にお名前書いてくださいな」
その記載を見ると・・北海道とある
「何か用事があって上京されたの?」
陶子さんの答えにびっくりした

「この個展を見るために来ました
以前から興味をもっていたので
作品を見て触れてみたかったんです
昨日からホテルに泊まり・・明日帰ります
忙しそうにお見受けしたので
声をかけずらかったんですけど
お話ができてよかった!」

当然ながら
私もお声をかけてよかったと・・痛感した
もしも失礼して話もせずにお帰ししたら
悔いるに違いない

陶子さんは・・今はアマチュア陶芸家
でも話を聞くと・・ただの趣味ではない
いずれ自分の個性を見つけて
世に出る意欲を旺盛にお持ちのようだ

52歳からの晩学陶芸の私には
共感できるものが沢山ある
今・・自分の工房ができかけていて
将来への夢が弾けそうな様子
目がそう言っていた

「技術的なことはともかく
高い目標に向かうためのモチベーションや
その維持のためのメンタリティーのことなら
言葉を通して応援できることはしますよ」
そう約束したのだった

丁度親子ほどの年代の差があるが
「本気」が理解できる年輩で
時間をかけて成熟してほしい・・と思う

参考にと
幾つかの作品をお買い求めになって
帰るために立ち上がった陶子さんは
「やっぱり・・これもください
気になっていたんで
このまま帰って後で悔いるのは嫌ですから」

それが写真の径8㎝の丸い花入れ
幾つか追加制作の必要な作品だから
これから作ることになるが
せめてご好意に報いる意味でも
一所懸命作るのは言うまでもない

高い旅費宿泊費をかけ・・あまつさえ作品の購入
それを無駄にさせないため
私にできることなら
応援にやぶさかでないことを心に決めながら
見送ったのだった

こうした一期一会こそ
個展の個展冥利に尽きるものだと思う
物を越えて心が揺すぶられる
願わくば
作品がそれについてゆけることだ

最善は神の仕事・・でも自己ベストは
外してはならない私の課題である



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帰宅したら・・この本が届いていた
高校時代の級友・・三井秀樹クンからの贈り物

彼は・・造形学の専門家
長いこと筑波大学で研究と教鞭の日々だった

私が初めて日本伝統工芸展に通ったとき
展示を見て
「オマエは気づいていないだろうが
このデザインはフラクタル幾何学そのものだよ
これ読んで・・勉強しろな!」
と著書を送ってくれたのだった

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私のランドマークみたいな「糸抜き波状紋」は
こうして理論的な裏付けをもらい
その後繰り返し制作して今に至るのである


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今回の個展も初日に来廊で見てくれた・・そして
「新しい本だしたから送るよ」・・それがこれだ


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ひもとけば今も・・彼の掌中で勉強させてもらっている

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これも・・そう


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これも・・そうだ


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2015/01/22のこのブログでこう書いた


「オーガニック・・有機的なデザイン
それは・・フラクタルでの波状紋も含まれる

だから波状紋から離れても・・新しい展開は・・
オーガニックであるべきだと思うのだ
彼の著書には・・こうある

有機的形体には・・ふたつあって
現実的形体としての・・有機的形体
観念的形体としての・・有機的形体
前者が・・あるがままの動植物の自然なシルエット
後者は・・人間が作る滑らかな曲線に包まれた形体

私が・・やろうとしてることは後者
そのままでは自然界にはないが
この手で作り出す柔らかで・・
滑らかな曲線が・・器の上で揺らぎ
穏やかな生命感につながってゆく
そんなイメージを描いて・・
試行錯誤の毎日なのである」

今回の個展のコンセプトが・・それである


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「この自然界に・・自然には直線は存在しない」

糸を貼りながら・・いつもこの言葉を思い出す


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「持つべきは友」
昔から言われてきたが・・老いればなおのこと

勉強嫌いの鈍だった私が
こうして直感に裏付けをしてもらえるのは
友達に恵まれたからである

五日目の個展
だいぶ展示作品が少なくなってきたが
それでも
途絶えることなく来廊してくださる
級友・旧友・救友・求友‣久友・究友
どなたにも
ただひたすら多謝なのである



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人も物も・・初日を越える四日目でした
嬉しい悲鳴だなど・・月並みな言葉では済まない
多謝な一日でした

このギャラリーは・・とても広いので
少々の来館では混雑しませんし
どなたもいないとなると・・ガランとして
作家にとっては・・心理的な圧迫があります
だから・・こうして賑わっていると
正直やはりホッとします


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それでも6時を過ぎて
みなさんがお帰りになった後
追加制作の必要のある作品を
アングルを変えて撮影し始めました

個展を終えた後・・ロクロの前に座ったら
これを頼りに再現を図ります
ノートにディテールを数字化し
写真に添えて保管することなります


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裏からも撮ります
高台の大きさも大事なデータです


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この香炉も追加制作です
紋様をコピーするわけじゃありませんが
やはり同じ雰囲気が出るよう・・糸を貼ります


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三つ足の様子もチェック
間違えてはいけないディテールです

最終日までの間に
なるべく正確な資料を作って
ロクロの前で困らないようにしなくちゃ
そんなことを考えながら
四日目の個展は・・閉館なのでした




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初日に戻った三日目の賑わい
ひとも作品も・・沢山動きました

個展というのは
久しぶりにお目にかかるひとと
初めてお会いするひとが入り混じって
独特な一期一会の時間です

扉が開いて
どなたかが入っておいでになる時
スポット照明に依存した会場は
来客には逆光になり・・「どなたかな?」
ちょっとした沈黙があり
そこで初対面と再会が判ります

どちらであっても
失礼のないように応接せねばと
緊張の一瞬でもあります

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52歳で始めた陶芸
この歳から少しづつ広がった新しい人の輪
感慨深いものがあります

再会は回帰であり・・初対面は出発
この歳になって大事な経験といえます


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今回の個展で目立つのは・・評判の良い作品に
追加注文の印が幾つも重なることです

終ったら直ちに制作にかかりますが
準備のため・・隙間の時間に
当該作品をアングルを変えて写真に撮り
再現の資料を用意しています

技を問われる課題・・頑張ります



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初日の慌ただしさは・・特別でしょうが
二日目は応接しやすい雰囲気でした

溢れないけど・・途絶えない
そんな来客の流れの中で
初対面の女性おふたりに
「どなたかのご紹介ですか?」とお訊ねしたら

線路を挟んだ工房の目の前の新居に
最近越してこられたお隣さんと判りました

近隣探索・・工房の前を歩いていて
陶工房らしいとわかり・・ネットで検索して
この個展のことを知り・・おいでになったとか

お二人とも
有名な機関紙を含む出版社の編集者
流石にリサーチと取材はお手のもの
思いがけない出会いにびっくりもしましたが

取材なら・・私も昔とった杵柄
「・・どうぞ工房にもおいでください・・!」
逆取材開始です(笑)


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さて・・会場では
この那須紺の器・・とりわけ
少な目の糸を揺るがせ
風の流れを思わせる作品が・・好評のようです

藍染めの浴衣が
さっぱりとした気分にする梅雨の季節
濃いめの那須紺は・・季節の色でもあります

調合の仕方で色々な紺になりますが
この自作の那須紺の彩色
お気に召していただけたとすれば 
嬉しいことです

三日目の朝・・やがて出勤の時刻
「明日の朝11時・・開店そうそうに行きます」
昨晩閉館間際に電話をくれた○橋さん
彼より早く着いておかねば・・
慣れぬ身には・・忙しい朝です



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例えば
日本伝統工芸展などで入選できたら
それはそれで嬉しいことですから
会期初日は
自作の晴れ舞台が楽しみなものです

ところが・・個展となると
会場に出かける際は
必ずしも・・浮き浮きはできません
ご案内はしたものの
お客さんが来てくれるだろうか
不安が芽生えるものです

「個展は終わったのに・・誰も来ず
一つも売れなかった夢
目が覚めて冷や汗かいたよ」
そんな悪夢を聞いたことがあります
あな恐ろしや!・・です

昨日の初日・・その不安は杞憂に終わりました
一気に不安が消え・・慌ただしい応接の一日
有難いことでした

写真の皿は
30センチほどの・・いわゆる尺皿で
定番の「糸抜き波状紋皿」ですが
大皿のほかに・・尺皿も4枚用意しましたが
初日で完売・・追加注文も何枚かありました
ランドマークみたいな作品だけに
嬉しさも一入です

友人にお願いして近所で買い求めた
おにぎりとお茶の昼食は
やっと3時頃に食べられました
普段なら・・空腹で参るところでしょうが
こういうときは平気なんですね

閉館の午後7時
最後の二組の来客を見送って閉めましたが
担当の女性たちも・・気を使って
丁寧な応接と正確な事務処理
客の満足感は・・それ次第でもあり
これも嬉しいことでした

ともかく無事に初日が終わり
少しほっとしながら・・電車に乗ったのでした




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ついに21か月の最終日
6月5日の初日前日を迎えました
昨日は・・朝からギャラリーに作品を搬入し
展示作業で・・一日が終わりました

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日曜日のJR新宿駅中央東口は
人で溢れれています・・さすが新宿です
ルミネエストに隣り合わせているのが・・柿傳です

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夕方には・・エントランスのウィンドウにも
作品が展示されましたが
びっくりするほど目立ちます


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ビル内の茶懐石料亭のウィンドウにも
同じように・・作品が並びました
地下二階のギャラリーから
地上九階の茶室に至るまで
「茶会」「茶懐石料理」「道具としての美術工芸」
それぞれが・・独自の設えで
総合的にサポートされているわけです


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どうやら展示も終わりました
初日の朝・・更に隅々を調えて
11時からオープンします

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正確には大小三室のギャラリーは
やはりとても広くて
ここに相応しく展示するのは
予期していたとはいえ
簡単ではありませんでした

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百数十点の作品を用意しましたが
お越しくださるお客様に
どう響くのか・・初日はやはり怖い朝です

6月5日(月)~6月11日(日)まで
会期中は全日在廊します
お時間があったら・・ご来廊の上
ブログ見たよ!・・と声をかけてください

さて・・今朝は
久しぶりに・・夜明け過ぎまでたっぷり寝まして
これから着替えて・・会場に出向きます
お目にかかれるのを楽しみに・・一週間の通勤です



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時の流れに身を任せ・・そんな歌があった
長い時間と格闘してきたこの1年半
何のためだったんだろうか?

先達の言葉を借りるなら
「一生の最もすぐれた使い方は
それよりも長く残るもののために費やすことだ」

仮にそう願うとしても・・気づいてみれば
「時間の使い方の最も下手なものが
まずその短さについて苦情を言う」
別の先達の予告の罠に陥っているもんだ

かつて若かった頃
「明日すべきことは・・明日やろう」
到底明日のことまで手が回らない
若さの忙殺とは・・そんなもんだった
でも・・それができた
もしかしたら・・まだできるかも?
老いが・・その間違いを気づかせる

「明日すべきことは・・今日からやろう」
久しぶりの個展の初日を明後日に控えて
昨晩・・作品のパッケージを済ませ
データも清書した

1年9ヵ月は・・あっという間ではあったが
たった一作でも
私の寿命を越えて・・生き残れるなら
先達の助言や良し・・多謝なのである



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かれこれ半年を越え・・夜明けから日暮れまで
一日中工房に籠って暮らす日々が続いた

毎朝・・工房に入って最初にする仕種は
意外にも・・テレビのスウィッチだ
別に見たいわけじゃないが
世間と隔絶された時間の中で
多少なりとも世情と耳でつながる
それに・・夜明け前の暗がりは
静かすぎても・・少々不気味
音だけのためのテレビみたいなもんだ
だから
ドラマとかドキュメンタリーは不向き
目が画面に惹きつけられても困る
筋書なしで・・聞くともなくがいい
そんなわけで
極めて大雑把な情報番組を点けっぱなしにしてる

横綱白鵬が優勝した翌朝だったろうか
部屋でメディアに話すのが聞こえた

「優勝したの一年ぶり・・懐かしかったなあ~!」
横綱はそう言った

久しぶりに・・競技者が自分の言葉で
自分の思いを話してるのを聞いた
これがいい・・これでいい!
そう感じた

近頃・・色々なアスリートたちが
優勝会見などで喋るのを聞くと
まるで挨拶用例集の決まり文句みたいなのが多い
みんな優等生である

「支えてくれた人々のお陰で勝てたから
 将来は・・子供たちが憧れるような選手になって
更に次のメダルを目指して頑張るので
これからも応援よろしくお願いします」

優等生が悪いわけじゃないが
自分のことばで自分を話す個性を大事にしてほしい
北島康介の・・「チョーきもちいい」も
長崎恭子の「今まで生きてきたなかで・・」も
用例集には見かけない・・
だから・・心に残るのだ

「懐かしい」
たった一年前のことが懐かしいのは
それまでに37回も優勝してきたからだ

優勝が当たり前だった横綱の・・勝てない一年は
生涯二度だけの優勝力士が
最初の優勝を思い出すときの一年とは違うし
まして
一度も優勝できない力士が圧倒的な世界であれば
懐かしさなど無縁な言葉でしかない

白鵬だけが知る「懐かしさ」の意味が
じわっと伝わってきて
自分の言葉の強さを感じたのだった

勝てなかった一年が・・途方もなく長かったこと
きっと人生には・・そうしたことがある
それをどう受けとめて・・新たに生きてゆくか
人それぞれだが
タイガー・ウッズは・・今どう思っているのだろう?

このドアーの向こうに
個展のために準備した作品の全てがある
5年前の個展を懐かしむ余裕などないが
正直に自分の言葉で・・書くなら

「陶芸に飽きちゃったかも・・」
そんな気分になるほど没頭したのに
それでいて
決して十分な満足を得ているわけじゃない

「足りないものは‥いつまでたっても
やはり‥足りないままだ」

これも正直な自分の言葉なのである



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ほぼ出揃った作品を
数えて洗って整理して
いよいよ・・まとめにかかった
総数は200個近いが
これから吟味して半分程に減らすつもり

傷や汚れを観察して判定してゆく
気をつけていても・・見逃す
茄子紺は・・焼くまでは淡いので
うっかりしてしまうのだ

このカップ&ソーサー
別々に作ったものだが・・合わせて使えそうだ
大き目のカップに・・同じく大き目のソーサー
やや威張ってる風でもあり
じゃ・・吾輩をもじって吾杯と名づけようか


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マグサイズカップでハンドルなし
だから・・珈琲でも茶でもいい
ビールや酒でも使えそうだ
ソーサーも大きいから
ケーキ皿にも・・酒肴皿にもなる
吾輩は・・吾杯でアール!
お客様の好みで組み合わせてもらうことにしよう

明日も・・引き続き整理して
データーを起こしてゆく予定
搬入のための車の手配もついて
手伝ってもらえることになった

とうとうあと1週間である
そろそろ俎板の上に乗ることにするか



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