カテゴリ:●俳句( 13 )

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轆轤挽く指滑らかに春隣り 哲郎
ろくろひくゆびすべらかにはるとなり


春の訪れは・・
ひとそれぞれの兆しがあるもんだ
何に春を思うか
俳句は・・
そうした感性を気づかせてくれる

私の場合
陶芸に転じて以来・・20年
それはいつでも手指だった

木枯らしの晩秋の頃に
ある朝指が割れ・・痛い冬になる
あかぎれ
土に触れれば避けようのない宿敵
ボタンをかけるのさえ痛い日々が続くのだ

筋肉の痛みなら・・続ければ治る
だが
あかぎれは・・ひどくなるばかりだ

そして・・ある朝
それこそ魔法の手にかかったように
傷口が閉じ・・痛みが消える
大抵は・・3月の声を聞く頃である

今年は・・いつもより少し早かった
むきになって仕事しなかったせいもあるが
暖冬のせいが多かろう

轆轤を挽けば・・指は滑らかだ
痛くない指は
痛みを避ける必要もなく
軽やかに自在に動く
大したことじゃないが
それが嬉しくて・・春隣りを感じるのだ



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行きずりに曲がりし角の秋桜 哲郎
ゆきずりにまがりしかどのあきざくら

いつの間にか・・コスモスの季節
矢切の家の時代・・ちょっと歩けば江戸川の河川敷で
コスモスは・・乱舞する蝶のようだった

風のながれのままに泳ぐコスモスを
大きなカメラで追いかけたのを・・思い出す
可憐だがたおやかで強い花だ
カメラの注文に・・滅多に応えてはくれなかった

まだ幼犬で隙あらば飛び跳ねていた・・
我が家の愛犬桃次郎のリードに手を通し
それでいて望遠レンズでコスモスを・・至難だった
すっかり老犬になった今の桃次郎なら・・
じっと座って待ってるかもしれない

窓を開けると・・嘘のように涼風の吹き抜ける昨日の工房
きっともうコスモスが・・と思いながら
茶碗に色づけした・・おとなしいコスモスのようだ



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別れしな足呼びとめし蕗のとう  哲郎
わかれしなあしよびとめしふきのとう

朝 妻が・・みんなで食べて!
蕗のとうを天ぷらにしてくれてた

この工房での最後の稽古を終えた・・昼どき
普段になく丁寧にしばしの別れを挨拶する〇木さんに
「そだ忘れるとこだった・・蕗のとうの天ぷら食べてお帰りよ!」

すっと踵を返して・・テーブルに戻った彼女を
呼びもどしたのは春の使い・・蕗のとう
しばらくして・・にこやかな彼女と
改めて・・別れを告げた

春らんまんのころ・・新しい工房で再会が待ってる




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春愁や墓石の奥津城らしき色  哲郎
しゅんしゅうやぼせきのおくつきらしきいろ

くぐもった弱い陽ざしの中で・・ものみな淡い陰に包まれ
墓石は・・幽界の憂いを含むかのように・・
それらしい沈んだ色合いで佇む
奥津城・・古い言葉だ

春はそこまで・・でも未だ姿は見えない
今日で三年・・東北の春もまだ遠い


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暮れなずむ黙ゆらゆらと沈丁花 哲郎
くれなずむ もだゆらゆらとじんちょうげ


人通りの少ない夕まづめ・・静けさのなかに
まるで移り香のように沈丁花が匂って・・春が漂う
毎年同じ香りは誰が調合するんだろ・・思えば不思議だ

転居が迫り・・動力を落とし道具を荷造りし始めた
陶芸のできない陶芸家・・しばらくは手持無沙汰だ

そのせいか・・
長いこと離れている俳句を手探りしてみたり
俳句って・・重いものはなし汚れるものもない
頭は忙しいが・・身体はのんびり

やれば面白いけど・・遥かなる道なのは一緒
ちょっとだけ楽しみながら・・工房の再建に向かおう
細かいスケジュールを考え始めている
体力勝負の毎日が・・しばらく続く
体調の維持が一番・・早寝に努める昨今である




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一輪の花よりいでて風ひかる 哲郎
いちりんのはなよりいでてかぜひかる

三寒四温の・・まだらな空気
おずおずとひ弱なひかりの中・・
ゆっくりと・・春が芽生える

もしかしたら・・
花は・・光りが生むのではない
花が・・光りを生むのかもしれない



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老ひの春 我が為す影を我れ踏みて
 哲郎
おいのはるわがなすかげをわれふみて


少し老いてきたら・・できるだけ
自分でやれることを増やさねば
そう・・思う



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せりなずな箸で数へて粥の朝  哲郎
せりなずなはしでかぞえてかゆのあさ

せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ・・春の七草
まだ覚えてる・・ということは古い知識なのだ
子どものころに覚えたのは・・多分
祖母が・・粥を支度しながら教えてくれたからだ

毎年この朝・・するりと言えるか必ず試す
七草をするりと言えず粥を食む 哲郎
そう詠んだ正月もあったっけ



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ひぐらしに急かれて熱き蕎麦を食む
  哲郎
ひぐらしにせかれてあつきそばをはむ

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シーズンが終わり・・秋めいてくる頃
大抵ひとりでだが・・山の家のほど近く
馴染みの蕎麦やさんで・・ここに座る
そして・・名残りの蕎麦を食べる

近年・・そうした機会も減った
ひぐらしが急くのは・・蕎麦だけじゃないのかも・・


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腹ばえば六十余年の草いきれ
 哲郎
はらばえばろくじゅうよねんのくさいきれ

夏の暑い日差しを吸い込んだ草むらに腹ばえば
青臭い草いきれが・・ツンと鼻を突く
この大地に息づく・・生きものの命の匂い
私の幼い日々の匂い・・懐かしい匂いだ
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茨城県の一角・・この草はらに
私の幼い日々の夏が・・焼きついている
戦争中から終戦直後のこと・・

一緒だった大人たち・・祖父・祖母・叔父
たまに顔を見せる・・父・母
もう・・誰もいない

ひっそりと佇む研究所の敷地に・・
今も昔のままに・・草はらは残っている
私にとっては・・大きな野球場でもあったが
今立てば・・小さな小さな草はらでしかない




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