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桃青窯696

touseigama.exblog.jp

50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・

カテゴリ:●エッセイ( 409 )

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かつて事務長として在籍していた病院
陶芸を始めたのは・・この頃だった


若いころから
自分の居場所の居住性を良くすることには
人一倍関心があった。
今もそうだが・・仕事をする場所は仕事だけ
というのは余り好きではない
居場所が快適でないといい仕事もできない
というのが持論でもあるからだ
そこで・・私好みに整備された居場所を
コックピットと呼んできた

かつて病院の事務長だった時代
私の部屋には小さなキッチンを作り
冷蔵庫も置いた
気分転換に炊飯器で飯を炊いたこともある
テレビもオーディオも私的な本も置いたし
壁には好きな絵をかけた
ロッカーには寛げるカジュアルウェアを用意し、
ソファ・ベッドで仮眠も取れた

そうすることで・・夜中まで病院にいても
それが苦になることはなかった
考えてみれば・・社会人になって以来
タイムカードを押す仕事は一度もしたことがない
公私の区別のつかない仕事ばかりだった
だから・・けじめのつかない時間を
どう過ごすかは・・ライフスタイルの問題で
それがコックピットなのだった

こんな言葉がある

「集中力のある人は
音楽を聴きながらの作業は集中できず
集中力のない人は
音楽をかけることで効率がよくなる」

一般論としてなるほどと思う
しかし・・ひとりの人間にも
この二つは共存するような気がする

つまり・・この言葉を言い換えれば
「集中力を必要とするとき音楽は邪魔だが
集中しなくても大丈夫なときは
音楽で効率があがる」

私の場合・・轆轤を挽いたり
挽いた器を削るときなどは・・音を切る
しかし
糸を貼ったりなら・・音楽がある方がいい

音があった方がいい‥ない方がいいは
どちらにせよ
音を用意しておかねば叶わぬことだから
居住性を良くするというのは
集中を維持するためであり‥同時に
集中を解いた時のためでもある

長時間の作業であれば
美味しい珈琲も合間に食べる菓子も
音楽と同じように・・居住性に関わる
大事なアプリケーション
集中を必要とする場所には
集中を解くツールも用意しておきたいのだ

工房にもコックピットはある
だが
かつて病院で作ったあの居心地はない
考えてみれば・・事務長時代は
今よりも更に滞留時間が長かった

そこに風穴を開けようとして始めたのが
趣味の陶芸で
病院から離れる時間が必要だと感じたからだった
阪神淡路大震災のあの年のことで
それが今では・・仕事になってしまった

ついこの間のことのように思えて
四半世紀の時間が流れた


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by touseigama696 | 2017-09-28 22:19 | ●エッセイ | Comments(2)
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BBpinevalleyさんの許可を得て
ブログ「アメリカからニュージーランドへ」
2017/09/07からお借りした写真です

「この砂漠を真っすぐ歩いたら・・どこに行くの?」

1965年の冬・・初めての欧州の旅の最後
カイロ郊外のギゼーのピラミッドを訪ねた時
遥かなサハラ砂漠を見やりながら
現地のひとに・・そう訊ねた

その若者は・・素っ気なく英語でこう言った
「となりの国」
どれ位歩けばそこに行けるのか
そして
それは何という国なのか・・私には判らない
でも・・そう言うしかない壮大な広さと遠さ
それも「隣り」なんだと・・妙に納得した覚えがある

自分が今立っている・・その足元から
遥か彼方で・・道は空と交わり消えてゆく
そこを地平線といい・・消えた点を
バニシングポイント(消失点)という
そこまで歩けば・・その先にまた新たな
地平線とバニシングポイントが現れる
切りがないが・・歩けば歩ける
それが「道」なのだ

お借りした写真を見つめながら
ふと・・感じるものがある

近代化された都市空間の中でとなると
「我々が今歩いている道は・・道とは言えない」
ってことだ
限られた用途のための通路
利便と簡便が綾なす破線の通路
始終途切れ・曲がり・ぶつかる
そんな通路の角に立って
「これ真っすぐ歩いたら・・どこ?」
「そさな・・駅かな」
間違っても・・隣の国とは言うまい

かつてひとは・・空の星を頼りに
どこまでも真っすぐ歩いた
何度も地平線に達し・・次の消失点に向かった
それは通路ではなく・・道だった
強靭な体と心は・・道で培ったのじゃなかろうか
通路に立って歩きたいとは思わぬが
この道に立ったら・・きっと歩きたくなる
駅ではなく・・隣りの国まででも歩きたくなる

それにしても・・お借りした写真
キャプションによれば
この道は・・お隣りの農場への道とか
なんと素晴らしい道ではないか
決して通路ではない

バニシングポイントは
途中は人生の頂点であり・・最後は終点でもある
叶う間どこまでも・・いつまでも
真っすぐ歩き続けられたら・・なのだ




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by touseigama696 | 2017-09-14 22:24 | ●エッセイ | Comments(4)
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昨日の朝のこと
たっぷりと大服に点てた茶が
喉越しに・・頭の靄を連れ去ってくれる
緞帳を引くように・・夜明けの幕開け
日に日に・・日暮れは早く夜明けは遅い
日の出を待ちながら・・ゆっくりと茶を点てる
このところ・・そんな朝が多くなって
個展の追作の日々に終わりがきたようだ

旧宅時代・・私は夜更かしだった
転居して早起きに替えた
旧い町並みから・・新しい町並み
夜更かしよりも早起きが似合う町に転居し
新しい家の暖かさに救われて
真冬でも・・夜明けが寒くないのだ

だから
このまま早起きを続けることにして
3時半から6時半の朝食までの3時間
かねてから密かにリベンジしたかった
読書時間の奪還に充てようと思う

頭の劣化・・目の劣化
はたまた・・根気の劣化に記憶の劣化
読書が縁遠くなって
昔を今にかえすよしもがな
最後のチャンスと決めて
しっかりとした本を・・しっかり読みたい

転居の折に無慮数千冊を処分したが
これはと思う数百を残したから
せめてこれには手をつけたいし
ついついその後に買い置きした分も
出来るだけ読破したいと思うのだ

近々に眼科でチェックして
白内障の手当が必須かもしれない
必要なら手術も受け
視野と視力を確保しなきゃとも思う

75歳からの最晩年
何と言って欲があるわけじゃない
せめてものリベンジが・・読書時間の奪還
可愛いもんだ

今5時になった
さっき火を入れた窯をチェックしながら
今朝も茶を点てることにしよう

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少し秋めいて・・だから
今朝はこの茶碗で




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by touseigama696 | 2017-09-14 05:09 | ●エッセイ | Comments(4)
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このクラスのレースとなれば
実に微妙なデリカシーが・・結果を左右する

決勝進出を決めた準決勝のとき・・サニブラウンは
観客席に一番近い外側の9コースを走った
そして・・次の決勝では
一人分内側の8コースでスタートした
たったこれだけだが
昨日・・私こと自称コーチが
サニーにしようとした助言からすれば
これには実に大きな違いがあるのだ

ちと長いが・・書けば
8コースと9コースの違い
1から9までのどこに割り当てられるかは
前日のレースのタイムで決まるから
全ての選手にとって不公平はないが
9から8に移ったサニーには
運命的な変化だったと・・私は思う

つまり・・9コースだと
一番外側なので左を走る8人の姿は見えないのだ
それが8コースになると
左の7人は見えないが・・右の一人は見える
それが今朝の決勝の場合・・アメリカのウェブ選手だった
彼はメダルを狙える速い選手である

昨日私が書いた
最初から最後までリラックスして走れ
勝ち負けは度外視でいい
もしも・・この助言を実行しようとしたら
8ではなく9コースの方がよかった
つまり・・誰も見えないから競わないで済む
リラックスしやすいはずである

録画で見れば分かるが・・スタートしてすぐ
サニーはウェブがすぐ右に見えてる
しかも結構速くて・・自分の前に出ようとしてる
彼は速いが・・優勝候補は別にいる
ウェブに遅れていてはメダルに届かない
きっと直感的にそう感じて
筋肉への負荷を・・ギア一段上げた
それは・・昨日我慢しろよと云った
勝負へのこだわりを体に命じたことになる
勝ちに行ってしまったのだ
私流には・・このレースはここで終わった

レース後のインタビューで
「気にしてたハムに来ちゃって・・もうひと押しできなかった」
これの意味は
大腿背部のハムストリング筋に荷重がかかり
痛みを発したということで
トップレベルのレースでは致命的ともなる
ウェブが見えなければしなかったかもしれない
急速なギアチェンジは・・いわゆる力みともなって
リラックスを解いてしまったのだ

そこから先・・ゴールまでの後半
アゴが上がり・・肩・上体が揺れ
体は緊張の塊のようで進まない
見事な負けパターンになったのだ

しかし・・考えてみれば
18歳の少年が・・初めての大舞台で
いきなり完成形のレースなどできよう筈もない

だから
最初の大きなチャンスではあるが
ここは我慢して・・何があっても絶対に解かない
リラックス維持に徹しろと・・書いたのだ

優勝したグリエフのゴールを見れば
最後まで体は揺れず頭も固定されている
彼にしてもどうやら初めての金メダル
多分筋肉は相当に緊張した筈だが
キャリアが・・我慢に耐えたのだと思う

今朝の敗北でサニーが得るものは
彼なりにしっかり感じただろうが
リラックスというキーワードを
忘れてほしくない

一流アスリートに必須のアイテムは
リラックスを自在に制御できるメンタリティーである
色々なスポーツを見て・・それは共通のセオリーなのだ

サニブラウンが逸材なのは・・同感だ
だからこそ
今日にもメダルを取りそうに囃したてる
無責任なメディアに惑わされず
厳しさはきびしさとしてがっちり受け止め
大成してほしいものである

どんなコンペティションも
ちょっとやそっとでは歯が立たない難易度には
それなりの意味がある
勝ちたいだけなら・・いわゆる格下で勝てばいい
だが挑んで頂上を見たいなら
我慢すべきは我慢して・・スキルを蓄えるしかない

世界に羽ばたく青春を見ることは・・実に楽しい
そして頼もしい



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by touseigama696 | 2017-08-11 08:34 | ●エッセイ | Comments(0)
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同じ粘土を同じ量だけ与えられ
「さて・・課題は径が60㌢の大皿を
メジャーなしの見た目で挽いてください」

こんなコンテストがあるとしよう
そして挽き終えたそれぞれの作品を計測したら
60.1㌢が一番近似値で
10人ほどの参加者のどん尻が60.2㌢
その間に8人が混じってるとしたら
そりゃもう・・びっくりするに違いない

600㍉を・・見た目1㍉差で競う
必要かどうかは別として
技術としてなら・・それをものにする修練は
やはりプロ的な志向ともいえよう

実は上の写真
今朝の明け方世界陸上の200㍍走の準決勝
こんなにばらけているが・・終ってみると
20秒が一位で21秒がどんじりだ
その差に1秒はなく・・間に6人がいる

人間のフィジカルなポテンシャルを
とことん追い求めれば
ここまで絞り出すことができる

私が幼かったころの
「イッチョ気合いれてやれやぁ!」で済んだ
あの遊びみたいなスポーツは・・今は遠い
プロフェッショナルでなければ勝負にならない
そのプロフェッショナルに向かって
幾つもの青春がストイックなまでに
ひたむきに走っている

それはそれで良いことだと・・私は思う
どうせやるなら・・遊びや楽しみで終わらせるな
1秒や1㍉に・・惜しげもなく1年を使う
その忍耐がもたらす成果は
きっと競技人生を支えてくれるに違いない

プロがいなくなちゃう世界も多い
昨今の世の中をみてると・・だから不安だ
本気のプロに頑張ってほしいと・・願うばかりである

------------------------------------------------------------

さて蛇足だが・・さっきのセミファイナルで
見事決勝進出を決めたサニブラウン選手に
もしも・・私が君のコーチならという
実にお節介な一言を書いちゃおう・・と思う

「明日のファイナル
チャンスがあれば勝ちたいって思うとして
それは当然の狙いかもしれないが
サニー!・・ここは我慢だ

今年の目標は・・セミファイナルに勝つことだった
それは実ったが・・今ファイナルに欲を持てばまず負ける
何故って・・やってない練習がひとつあるからだ
しかも・・それせずに勝ちにいって負けるのは収穫がない
我慢って言ったのは・・勝ち負け度外視の収穫狙いだからだ

明日は勝ちにゆくな・・むしろ負けるために走れ!
ただし・・ただ負けるためじゃない
壮大な実験をしろ
どういうことかと言うと
最初から最後まで力を抜いて走れるかを・・試せ
勝ち負けは脇に置け
勝てそうな気がしても・・力を入れるな
負けそうでも・・力むな
200㍍全部を・・リラックスして走れ
それが・・まだやってなかった練習なんだよ

もしその我慢が出来れば・・来年は勝ちにゆけるよ
この経験は・・しょっちゅうできるわけじゃない
折角掴んだ最初のチャンス
リラックスを体に覚えさせるための実験に使えだよ

練習場では絶対できない・・実験
格下のレースでも絶対できない・・実験
だから
勇気をもって・・スタートからゴールまで全て
「力を抜け!」

結果は20秒後にはでない
出るのは来年で・・成功すれば
そりゃ言うまでもないことだよ」



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by touseigama696 | 2017-08-10 07:54 | ●エッセイ | Comments(0)
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先月採血した検査結果を・・今朝もらった
一ヵ月の間・・電話さえなかったんだから
きっと何もない・・その通りだった

勿論
血液だけで体のことが全て分かるわけじゃない
でもきちんと定期的に調べていれば
何かあれば予兆がでる・・そう思っている
前回同様今回もまずはN.P.・・問題なしだ

Dr.曰く
「僅かに貧血を思わせる数値が出てるが
それぞれ標準の下限上限の近似値で
病気を疑うレベルではない
CKだけがやや大きくはずれているが
この時期・・工房で力使ってたでしょ
筋肉を使うと上昇する数値だからね」

それより下の項目は‥総て基準内だ
肝臓・膵臓・腎臓・糖尿・動脈硬化
肝腎要め・・みな大丈夫のようだ

「当分・・ガンとは縁遠そうだな」
Dr.がそう言ったので

「だとしても・・もしガンが予見されたら
なるべく発見しないでおいてほしい
気づいたときは手遅れ・・余命半年かな?
それが私の望み
なまじ早期発見で治っちゃったりしたら
死ねないもんね・・それ困るんだ

毎日の生活をなるべく
クォリティーの髙いものにしようとしてるのは
長生きしたいからじゃなく
体を拘束されてやりたいことがやれないのを
防ぎたいからだけのこと
自分のことは自分で賄うよう
成人病からは・・できるだけ自分を守るけど
ガンは防御できないからね
この先は・・それがいつだとしても
少しも若すぎたりしないでしょ
それが・・私の生き方死に方
よろしくお願いしますね」

183センチ・・78キロ
ひとの世話になるには少々デカイ
小柄な妻は・・きっと持て余すに違いない
なるべく迷惑かけずに・・日々を過ごし
そして・・静かに逝きたいもんだと
密かに願っているのである




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by touseigama696 | 2017-08-08 22:19 | ●エッセイ | Comments(0)
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いつものように・・外が明るくなるまで
工房ではテレビを点ける
余り静かすぎると集中しにくいからだ

何やら食べ歩き番組だろうか
レポーターが妙な食べ物の感想を話していた
そのやりとりは・・こうだ

「微妙な味ですね」・・表情も怪訝そうな女性レポータに
「そんなこと言わないでくださいよ・・人気メニューなんですから」
とご店主の女性の・・不満顔

この手の番組では珍しい展開だ
どんなもの食べても・・「美味しい!」が定番
「そんなに何でもかんでも美味しいわけないだろ?」
と思っても・・タダで取材してりゃ不味いとは言えないもんだ

いつだったか
「だとしたら・・不味いときはどう言えばいいの?」
あるレポーターが・・裏話を話した
「そういうときはね・・」
「好きなひとには・・たまらん味でしょうね!」
けだし名言である
微妙さが実に上手く表現されてる

この微妙はともかく・・食レポ番組の
レポーターたちをみてると・・一口食べて
途端にびっくり顔をしながら言うのは
判で押したみたいに・・「美味しい~っ!」だ
たまにつけ足しゃ・・「甘い」か「いい香り」
それ以外のセリフを聞いたことがない
「もっと勉強したらど~ぅお!」

何かに例える・・何かと比べる
あれが入ってる?・・これが効いてる?
そう言えばあの人が・・これ絶品って随筆で褒めてたっけ
色々な切り口で・・料理を評価する力がないと
見てる視聴者に向かっては・・説得力がない

そうした意味では
「微妙な味ですね」は・・稀な正直で好し良しだった
こうした視点で言えば
今は亡き俳優・・渡辺文雄さんは
抜群の食レポーターでもあった

滅多なことじゃ・・「美味しい」を言わずに
美味しさを言い尽くしていた
「食いしん坊万歳」などが懐かしい
古き良き時代の東大生
該博な知識だけでなく・・相当な食道楽で
夫人が赤坂の料亭口悦の女将だと知ったとき
むべなるかな・・だった

束の間の話題で・・ちと行列ができた店に
美味しいしか言えない未熟なレポーターを送り込み
それでもグルメ番組だなんて言ってると
視聴者も気の毒だが・・店だって可哀そうだ
三日もすれば・・テレビ人気で来た客は遠のく

世の中が不景気なとき
テレビは・・旅と料理と寄席でもつ
私が携わっていたころも・・同じことが言われた
安直に制作できるからが・・理由だった

総理大臣が幾ら壁を糊塗しても
テレビ番組を見てりゃ
アベノミクスの来し方もしっかと写っているもんだ
やたら食レポ番組が目立つじゃないか

どんな仕事でも
安直で一世を風靡できた歴史はない
本物が尊ばれる社会
景気が良くないからこそ・・本気でやれだ

そんなことを考えさせられた朝だった



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by touseigama696 | 2017-07-22 22:51 | ●エッセイ | Comments(0)
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医師だった親父に連れられて
聖路加病院で心臓内科を受診したのは
私が27歳・・1969年のことだった

北太平洋上の機内で心臓発作を起こし
アラスカのアンカレッジで一ヵ月も入院し・・挙句に
パリでの取材を断念して帰国したが
予後が思わしくなくて
亡父に専門医の受診を勧められてのことだった

その外来ブースでお目にかかったのが
日野原重明先生だった

「君の病名は・・心臓神経症ってやつで
今アメリカでも課題になってるほど多いんだよ
治すには運動がいい
恐がらずにスポーツしてごらん」

それが始まりで
暫らく聖路加病院に通院し
大分時間がかかったが
どうにか神経症から脱出できた

今朝のニュースで・・日野原先生の訃報を知った
1911年生まれ・・105歳の天寿
死んだ親父は1912年の生まれだったから
生きてれば104歳かぁ・・と思いながら
半世紀も前の・・あの受診の日を思い出していた

この聖路加病院に通院していた時のこと
もうひとつ忘れられないエピソードがある
旧屋時代の聖路加病院の待合のベンチが
思いがけないほど質素な木製だったことだ

何かの折りに・・看護職員に
その意外さに触れて訊ねたら

「お尻が痛くなるほど・・
この病院は患者さんを待たせませんよ!」
と云って笑った

この言葉は・・ずっと後まで頭に残った
長い心臓神経症の後遺症から逃れ
40歳を過ぎたころ・・病院新設事業に誘われ
初代の事務長に就任したが
什器備品を買い揃える仕事の度に
あの言葉を思い出したのだ

病院の居住性は贅沢な家具調度ではない
一時も早く診療を受け・・手続きを済ませて
病院を出る・・それが一番の快適なのだ

フカフカの待合椅子に大きなテレビ
診療や調剤の順番を知らせる告知板
それらは・・待つ苦痛を和らげる仕掛けでしかない

30数年も前の・・あの開院のころ
いち早くコンピューターを導入し
ドクターに専従のPCセクレタリーをつけて
同時進行で調剤・会計の業務を進行させたのも
患者を待たすな!・・あの聖路加病院の木製ベンチが
教えてくれたことだった

この世の中には・・敢えて硬いベンチを置き
その上で何が一番大事なのかを考えないと
本質を外れた方向違いの過剰サービスに
うつつを抜かすことになると・・知るべきなのだ

言うまでもなく
日野原先生は長生きだけのドクターではなかった
聖路加病院の根本に流れる医のヒューマニズム
忘れてはならないことだと・・思う



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by touseigama696 | 2017-07-18 23:00 | ●エッセイ | Comments(2)
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日本橋三越本店のお隣りに
三井記念美術館がある
ここに開館してそう長い歳月ではないが
収蔵してる美術工芸品は・・歴史的である
三井家の歴代が蒐集したコレクションは
ここに安住を得て
後世の我々を楽しませてくれているわけだ


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日曜日の朝・・既に開館待ちの鑑賞者が並んだ
昨日から・・新しい企画展が始まっている


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夏の日の地獄絵ワンダーランド
猛暑に似つかわしい企画
いきなり水木ひろしさんの
地獄めぐりの原画が出迎えてたが
ファンにはこれだけでも垂涎の企画かもだ

眼鏡が合わなくて・・やや照明の暗い会場で
軸物の地獄図を克明に見るのは難しい
改めて目の手入を急がねばと思いつつ
閻魔大王の顔は・・しっかと覚えてきた
遠からず三途の道を歩く羽目になったら
是非ともお目にかからずに済ませたいものだ


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この美術館を久しぶりに訪ねた理由は
もうひとつある
ここのミュージアム・ショップを訪ねることだ

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昨日の初日から
ここで私の小品が展示販売されている
オファーをいただいて10日
個展追作の作業の中に混ぜ・・大急ぎで焼いた
お目にとめて頂いたご縁に多謝である

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担当の女性ともご挨拶し
作品を通して・・また一期一会が生まれた
新しい舞台を与えられた作品が
多くの来客の目にどう映るか
それも試金石なのである


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このショップで
「森川如春庵の世界」を見つけ・・購入した

特別の意味があって買ったのだが
それは長い話・・別項でにしよう



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by touseigama696 | 2017-07-17 00:59 | ●エッセイ | Comments(0)
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先月・・個展が終った直後に
75歳の誕生日が通り過ぎていった
一瀉千里のごとく・・時は流れるが
だからといって
仕事は・・一瀉千里に走ってはくれない

今年になって半年
その殆どを工房に籠って暮らしてきたが
個展の追作を終えるまで
緊張を緩めるわけにはゆかず
依然として夜明けから日没までと
更に・・30分のマッサージを受けてから
残業と称して・・10時くらいまでは工房である


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昭和17年生まれの・・75歳
身長183センチ(多分少し縮まっている)
体重78キロ(少し増えてる)
肺活量5.000cc(昔は6.000cc超だった)
握力50キロ(昔は60キロ強だった)

ついこの間まで
25㍍のプールなら・・潜ったまま泳げたし
結構大きな皿でも鉢でも
高台を摑んだまま釉瓶でずぶ掛けもしていた

大して威張るほどのことじゃないが
要するに図体がでかいというだけでの
幾つかの利点を重宝してたってこと
それが
それこそ一瀉千里に衰えてゆく様は
いささかめげるものがある

かかりつけの主治医の言によれば
目下・・命に係わる動力系の病はなさそう

どんなに緊張しても
ストレス性腸症候群にはなっても
食欲不振になったことはないし
不眠で悩んだことも・・75年一度もなしだ
そこら辺は・・真に頑丈にできてる

しかし・・一方で
躯体系の仕掛けは・・かなりボロボロだ
両肩の肩腱板は断裂したままで
それでもイテテッ!とわめきながら
両手を掲げて棚板の上げ下げもしてるが
左足は・・他人に気づかれるほどに不自由
前屈しても・・指先は膝までしか届かないし
正座は勿論・・胡坐さえかけなくなった
だから
畳に寝ることと・・落ちたものを拾うのが大嫌いだ
それでいて・・よくものが落ちる
誰もいない工房のときは
何処かの女性代議士のごとく
わめき散らしながら・・必死で拾ってる


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体の劣化は・・まだ仕方ないと受け入れてるが
頭の劣化には・・かなり怯えている

直感的に不安になるのは
全体をまとめる力が衰えてきたことだ
ひとつの仕事を・・企画して計画をたて
作業の進行をチェックしながらまとめ
きちんとした結果に落ち着かせる

それが仕事の殆どというような人生だったから
これの劣化は・・一段と厳しく自分に迫るのだ

若いころと比べてみても意味ないが
「たったこれだけで・・こうも手間取るのか?」
ついつい比較してみじめになってるようだ
そして・・当然の帰結のごとく
疲れを感じる日々になってきた

妻も言うが
「疲れたとかだるいって・・言ったことないのに」
今ではしきりに口にする・・確かにそうだ

目が覚めて
「今日はどうして過ごそうか・・あそこに行ってみるか
それともじっとしてるか?」
そんな朝に・・微かな憧れを感じる

老いが・・段々それらしくなる
それが・・一番の「老い」なのかもしれない



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by touseigama696 | 2017-07-11 07:21 | ●エッセイ | Comments(0)