カテゴリ:●エッセイ( 398 )

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『棋士が盤を挟んで勝負を始めるときって
二つのことしか考えません
一つは・・負けないために自分の王様を守ること
もう一つは
勝つためにいち早く相手の王様を詰ませること
これが常識です

ところが
藤井クンの将棋は・・違います
彼が考えることは・・二つではなく
ひとつだけ・・つまり
相手の王様を詰ませることしか考えないのです

一手早く相手に攻めかかれば
自分の王様を守るための一手はいらない

プロの棋士の勝負は
一手違いで決まります
守りに使わない一手を・・攻めに使う

徹底的に詰将棋を勉強してる藤井クンは
その一手の差のまま・・勝ってしまうのです

つまり
藤井クンは誰かよりは強いが
誰かよりは弱い・・という将棋ではないのです

攻めと守りの二手を考える将棋と
攻めだけを考える将棋の差
常識を変えた強さなので
今のところ
彼が向かうところ敵なしなのは・・当然
そう思います』

どなたかが・・こういう意味の解説をした
すごく分かり易くて
藤井クンの強さの本質が理解できたような気がした

あの羽生名人が驚嘆する才能
ただ強いだけじゃないポテンシャルの大きさ
それは技術的なことではなく
長年の棋界の常識を壊す
圧倒的な理論武装で肉づけされたものなのです

彼が14歳にして
歴年の棋譜に通じ・・詰め将棋を解き明かし
ひたすら蓄積している情報は
それ自体が目的なのではなく
守りの一手を使わずに済ませるための
ぎりぎりの哲学のように思うのです

常識を熟知して・・これを壊す先見と
常識を知らずにこれを壊す出鱈目との差
それをまざまざと見せてくれています

彼の挨拶が・・とうに少年の言葉ではなく
見事なまでに大人のそれなのは
いずれ・・その常識をも壊して
人間としても破格な高みにつく人材なのでしょう

将棋の世界に限ったことではなさそうです
非常識は・・しきりに見かける世の中ですが

「それって・・ありかぁ!?」
メジャーな常識を壊して
新しい時代の糸口を見つける先駆者
今・・待望されているのは
そんな才能だと・・思うんだけどな



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勝つも負けるも・・紙一重
成功失敗だって・・紙一重
紙一枚右に寄ってれば・・勝てただろうし
紙一枚左だったら・・失敗だったかもしれない

厳しい世界に生きれば
結果は・・いつでもそんなもの
ひとの運不運 幸不幸は
一瞬にして入れ替わることがあるから
古人は・・それを「塞翁が馬」に例えた

小学校時代の書道の恩師は
卒業するとき・・その一行に
「得意淡然 失意泰然」
と加えてくださった

爾来六十有余年
今も座右の銘にしているが
折に触れ・・一喜一憂で狼狽えれば
淡然なのか・・それとも泰然
自問することにしている

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難しいことだが
ギリギリまで手を尽くし
厳しい結果を受け入れてきたひとほど
その生き方は・・悠然として謙虚だ

自説を持たざることなかれ
しかして
他説を詰ることなかれ
きっと両者の真ん中に
僅か紙一枚の分かれ道が挟まれている
それが塞翁の馬なのだろう

74歳最後の日・・6月23日
明日は
淡然の一日だろうか・・それとも泰然?
自戒を込めて・・工房での今日一日を過ごそう



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追憶に想いを馳せて・・ひとは歳をとる
だが・・そうであったとしても
忘れがたい思い出は・・やはり忘れがたい

以下の一文は
かつてある機関紙に掲載されたエッセイである
その夏の日は・・今を遡ること53年前のこと
そして・・エッセイを書いたのはそれから26年後
更に27年を経て・・今深く蘇ってくる

独り工房に腰を据えていると
ことさらに・・思い出は色濃く鮮やかである
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九十九里浜 白子町


=『読書三昧』=1990

太平洋の荒波を真正面から受け止める外房
九十九里浜の中ほどに白子という町がある
戦前から戦後にかけて この浜一帯はいわし漁で賑わったが
米軍の演習で潮の流れが変わったらしく やがて衰退をたどり
眠るが如く閑かな町になった

この白子の海岸に 
かつていわし漁全盛時代に建築された網元の家がある
今どきこれを建てられる大工もいないだろうと
そう言われるほどに豪壮な屋敷は
既に網元の手を離れ 当時私の両親と極く親しかった
さる老婦人の居宅になっていた

「雨戸の開け閉めはもう私には無理
だから使う部屋以外は閉めっぱなしなの」
独り暮らしの老婦人のそんな話から
「ひと夏でしかないけど屋敷に風通すため
私が書生っぽになって
朝晩雨戸を開け閉めしましょうか」
それが思い出の始り 大学三年の夏休みのことだった


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ひと夏を過ごした網元屋敷


当時は閂で閉ざされた大きな門扉を開けると表玄関がある
平屋なのにたっぷり二階分の髙さがあり
其処ここの梁には割いた巨木が使われ
柱の一本一本は一抱えもある太さだった

十畳間が幾つも連なり 
襖をはずせば直ちに五十畳ほどの大広間となって
いつでも大宴会が開かれる設えだった
一番南に書院造りの奥の間があり
床の間は源氏車の透かし彫りがあしらわれていた
贅沢にもその奥の間をあてがわれた私は
夏休みの一ヵ月を読書三昧に過ごすことになった

大学で法律を専攻していた私は
この夏休みの少し前
敬愛してやまぬある先輩に
「法学部の学生ならロシア文学は読んでおけよ」
そう言われた

今思うと何故それがロシア文学なのか
腑に落ちないでもないが
古典をという意味でもあったろうか

この先輩は江田島の海軍兵学校出身の軍人だったが
戦後医師となり その傍ら趣味でクラシック音楽に精通し
一方で京都・奈良の仏像にも造詣が深かった
亡父の若いころにお弟子さんだったせいもあって
我が家にもしばしばお見えになり
子どもの頃から何かと影響を受けてきたのだった
仏像では叶いっこないと承知して
なら私は庭をテーマにしようと
大学時代の休みは京都通いで
目ぼしい名庭は殆ど訪ねたものだった

同じころ 作家の伊藤整氏が雑誌で
「私は一ヵ月に一万ページの書物を読んでるが
それでも小説を一篇書くのは容易じゃない」
と書いておられた
妙に一ヵ月一万ページが頭に残っていた
昭和39年 大学3年の夏休みは
この屋敷の書生っぽになって
ロシア文学の一ヵ月一万ページ読破を
実行しようと決めたのだった

日中は私ひとりで過ごすこの網元屋敷での日課は
6時に起床して
 屋敷のぐるりを囲むおよそ70枚の雨戸を戸袋にしまう
それから閂を外して表門を開け
門前と玄関を掃いて水を打つ
部屋を掃除して洗面を済ませると7時である

老婦人が作ってくれる朝食をいただきながら
新聞に目を通し テレビでニュースを見る
さて8時から正午までの4時間は
自室の書院の間で姿勢を正して読書である
一日に333ページをノルマにした
一ヵ月で一万ページになる計算である

仕事に出かける前に老婦人が準備してくれる
昼食を独りで食べるのが正午
済ませたらビーチパラソルとタオルと読みかけの本持参で
通りの向こうに広がる浜に行く
当時は殆ど人影もなかった
壮大な海と潮騒に抱かれてうとうとしていると
漁師の大声で目が覚める

砂浜に漁船が上陸してくる
自分のエンジンに端をつないだ鉄ロープを
浜の柱を回して自力で這い上がる
漁師の女房たちが
船の動きに合わせて舳にコロと呼ばれる丸太を置く
その上を砂に潜らず船があがるというわけだ
九十九里の間桟橋のない砂浜であれば
漁船はこうでしか上がれない

船が止まると女房たちは
濡れた着衣を着替えるが
遮るもののない浜で 腰巻一枚を使って
鮮やかに早変わりするのだった

3時頃になると屋敷に戻り、水着のまま
井戸から水を汲み庭に水やりする
結構広い庭だったから何十杯も汲み上げる
読書漬けの体に心地よい運動だった
ついでに自分も水をかぶりさっぱりして
4時から6時まで また本を読んだ
7時までの間に
朝とは逆の手順で70枚の雨戸を閉め
門扉に閂で施錠して終わる

帰宅した老婦人と夕食を共にするが
近所の漁師さんからいただく新鮮な魚が
すこぶる美味で 毎晩贅沢な食事だった
8時には自室にひきあげ 読書を続けて11時半就寝 
判で押したように正確にそうした
後に大学を卒業してからも今日まで
これほどに規則正しい生活をしたことはない
その意味でも貴重な体験だったと思う

この一ヵ月に何を読んだのか
記録のままにかいてみると
プーシキンの「スペードの女王」「大尉の娘」
ゴーゴリーの「狂人日記」「検察官」「外套」「鼻」「死せる魂」
ツルゲーネフは「初恋」「貴族の巣」「その前夜」「父と子」
ドストエフスキー「貧しき人々」「二重人格」「虐げられた人々」
「死の家の記録」「罪と罰」「白痴」「悪霊」「未成年」「カラマゾフの兄弟」
トルストイ「結婚の幸福」「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」
「クロイツェルソナタ」「復活」「死せる屍」
そしてショーロホフの「静かなドン」などで
たっぷり1万ページはあった

勿論これでロシア文学の全てとは言わないが
専門家でもない限りこれでよしだと思った

今思い返して
これらの大河小説の中身の全てを覚えているかなら
残念ながらそうとはいえない

「戦争と平和」「静かなドン」などは全8巻の長編
登場人物にしても「戦争と平和」は500人以上かな
覚えきれるものではなかった

しかし読んでる最中に感じた感想は
その後の人生に何がしかの糧になっているはずである
昨日食べたステーキが 今夜呑んだワインがいつどこで
我が身の肉となり血となったかは判らずとも 
食べて飲んだのは確か それでいいではないか

青春の真っただ中に
脇目もふらず即書三昧に過ごしたあの夏を
私は決して忘れない

-------------

エッセイはここで終わる
しかし忘れ得ぬあの夏の日には
もうひとつ 忘れ得ぬ密かな思い出がある

一ヵ月を独りで過ごしながら
真剣に考え続けたことがあった
それは妻との結婚のことだった

社会人生活への一歩を妻と一緒に
それでいい・・と確信するための時間
それがあの一ヵ月でもあった

大学卒業式の一週間前 我々夫婦は挙式した
だから「行ってらっしゃい!」
妻に見送られて卒業式に出席したのだった

去年
あの日から50年が過ぎて
金婚式を迎えたが
それもあの夏の日に始まったとも思える

アップしてある写真は
九十九里 白子の浜と
思い出の屋敷である
このエッセイに登場する
老婦人も私の両親も敬愛する先輩も
みな既に異郷のひとである

時々白子の浜を訪ねると この屋敷を見る
人間が建てた家だが
人間の寿命を遥かに超えて丈夫である
あの夏のままの佇まいに
人間の儚さを感じるが
それもまた老いの為せる想いなのだろう



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このカフスには・・数十年の長い間
使い続けてきた愛着がある
細かいことは忘れたが・・取材の旅の折り
立ち寄ったフランスのリモージュで
記念に買ったものだと思う

このリモージュのブルーが大好きである


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昨晩‥古い写真を眺めていて
この海を見つけた
データによれば10数年前
江の島で撮っている
日没直前の海
とても印象的なダーク・ブルーだった


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深く記憶に残って
この皿になったのかもしれない
それまでは白のバージョンばかりだった
多分
リモージュ・ブルーにもつながっている

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1年ほど前に・・今回の個展の作品で
このブルーを使おうと決めた

酸化コバルトに
数種の酸化金属を加え
色調の加減を図ったが
どうやら割合い評判が良かった

今・・追加制作にかかっている作品の多くに
このブルーを使う
念のため・・コバルトを補給しておこうとして
びっくりした・・途方もない値あがりである

定番を作るにも苦労するが
それを作り続けるのも苦労である



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5月20日
個展準備の最終盤・・厳しい時期だった
あとひと窯に賭けていた頃だ
毎年そのころ・・クラス会が開かれる
今年もこの日に・・採血した
昼飯抜きで集まって
採血したら宴会という段取りである
多分20年以上続いているはずだ

このブログでも何度も書いた
クラス会で・・毎年血液検査をしてくれる
何とも不思議な行事だが
古希を過ぎて実に有り難い慣例にもなっている

これがあるお陰で・・出席率は高い
夫婦で出席し・・夫婦で採血も沢山いる

現職時代癌研で活躍したクラスメイトのK君が
ラボから届いた検査結果を・・精緻に分析し
病の兆候をチェックしながら・・全員に
肉筆の手紙で・・日々の生活を助言してくれる

そして・・そのK君が何かを発見すると
クラスの中の7人ほどの医師が
専門に応じて治療に手を貸してくれる
仮に専門でなくても
然るべき神の手を紹介してくれ
実際ことなきを得た級友が何人もいる

中学入学から数えれば62年のつきあい
気心知れ・・厚い友情に支えられて
最も信じられる医師のサポートは
考えられないほど贅沢なことだと思っている

今年の採血は
個展間近の・・多忙と緊張の最中
かなり疲れてもいたから・・体調に自信がなかった
しかし・・それも現実だから
あるがままのデータを受け入れるつもりでいた

K君の手紙が・・検査結果と一緒に届いた
四つほどの米印がある・・K君の説明によれば
微差なので許容の範囲と思ってよしだそうだ

一般的に関心の深い項目をみると
赤血球の各種数値が僅かに低め
つまり貧血に傾くサイドだが・・許容の微差
心疾患・血栓症を予見させるフィブリノゲン・・正常
肝機能のGOT ・GPT・γ-GTP・・正常
腎機能のクレアチニン・尿素窒素・・正常
糖尿病の血糖・ヘモグロビンA1c・・正常
総コレステロール・LDLコレステロール・中性脂肪・・正常
ガン関連では・・
食道・胃・大腸・膵臓・胆のう・胆管・前立腺
それぞれのマークは異常なし・・とある

あの環境でこの結果は嬉しい
生活習慣病の罹病は・・可能な限り避けたいから
そのための努力はしているが
ガンそのものは・・逆らってみても仕方ない
いずれどこかで出会って・・死に至る道
それが自然な終末だと思っている

俗にいうピンピンコロリ
願わくばそうありたいものである


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追作を始めた・・明日からは
また暫らく夜明け前にひと仕事
工房に籠る日が続きそうだ

「・・以上のような結果でしたので
良好な体内環境が得られていると思います
どうぞ今の生活習慣をお続けください・・」

K君の手紙は・・そう結ばれていた



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時の流れに身を任せ・・そんな歌があった
長い時間と格闘してきたこの1年半
何のためだったんだろうか?

先達の言葉を借りるなら
「一生の最もすぐれた使い方は
それよりも長く残るもののために費やすことだ」

仮にそう願うとしても・・気づいてみれば
「時間の使い方の最も下手なものが
まずその短さについて苦情を言う」
別の先達の予告の罠に陥っているもんだ

かつて若かった頃
「明日すべきことは・・明日やろう」
到底明日のことまで手が回らない
若さの忙殺とは・・そんなもんだった
でも・・それができた
もしかしたら・・まだできるかも?
老いが・・その間違いを気づかせる

「明日すべきことは・・今日からやろう」
久しぶりの個展の初日を明後日に控えて
昨晩・・作品のパッケージを済ませ
データも清書した

1年9ヵ月は・・あっという間ではあったが
たった一作でも
私の寿命を越えて・・生き残れるなら
先達の助言や良し・・多謝なのである



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かれこれ半年を越え・・夜明けから日暮れまで
一日中工房に籠って暮らす日々が続いた

毎朝・・工房に入って最初にする仕種は
意外にも・・テレビのスウィッチだ
別に見たいわけじゃないが
世間と隔絶された時間の中で
多少なりとも世情と耳でつながる
それに・・夜明け前の暗がりは
静かすぎても・・少々不気味
音だけのためのテレビみたいなもんだ
だから
ドラマとかドキュメンタリーは不向き
目が画面に惹きつけられても困る
筋書なしで・・聞くともなくがいい
そんなわけで
極めて大雑把な情報番組を点けっぱなしにしてる

横綱白鵬が優勝した翌朝だったろうか
部屋でメディアに話すのが聞こえた

「優勝したの一年ぶり・・懐かしかったなあ~!」
横綱はそう言った

久しぶりに・・競技者が自分の言葉で
自分の思いを話してるのを聞いた
これがいい・・これでいい!
そう感じた

近頃・・色々なアスリートたちが
優勝会見などで喋るのを聞くと
まるで挨拶用例集の決まり文句みたいなのが多い
みんな優等生である

「支えてくれた人々のお陰で勝てたから
 将来は・・子供たちが憧れるような選手になって
更に次のメダルを目指して頑張るので
これからも応援よろしくお願いします」

優等生が悪いわけじゃないが
自分のことばで自分を話す個性を大事にしてほしい
北島康介の・・「チョーきもちいい」も
長崎恭子の「今まで生きてきたなかで・・」も
用例集には見かけない・・
だから・・心に残るのだ

「懐かしい」
たった一年前のことが懐かしいのは
それまでに37回も優勝してきたからだ

優勝が当たり前だった横綱の・・勝てない一年は
生涯二度だけの優勝力士が
最初の優勝を思い出すときの一年とは違うし
まして
一度も優勝できない力士が圧倒的な世界であれば
懐かしさなど無縁な言葉でしかない

白鵬だけが知る「懐かしさ」の意味が
じわっと伝わってきて
自分の言葉の強さを感じたのだった

勝てなかった一年が・・途方もなく長かったこと
きっと人生には・・そうしたことがある
それをどう受けとめて・・新たに生きてゆくか
人それぞれだが
タイガー・ウッズは・・今どう思っているのだろう?

このドアーの向こうに
個展のために準備した作品の全てがある
5年前の個展を懐かしむ余裕などないが
正直に自分の言葉で・・書くなら

「陶芸に飽きちゃったかも・・」
そんな気分になるほど没頭したのに
それでいて
決して十分な満足を得ているわけじゃない

「足りないものは‥いつまでたっても
やはり‥足りないままだ」

これも正直な自分の言葉なのである



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私の地元・・松戸の伊勢丹の中に
「みつや」さんという甘美屋さんがある
この店のオーナーは・・古い友人である

全国ブランドの『玉三白玉粉」を作る会社が親会社
将軍家光のころの創業・・老舗中のしにせである
オーナーは・・この会社の社長というわけで
自社の製品で・・私の好物あんみつなどを
食べさせてくれる・・それがみつやさんなのだ

数年前から
このお店の一角に・・私の作品が置いてある
季節ごとに・・模様替えをしながら
甘美を楽しむお客様に・・ご覧いただいてる

きっかけは・・オーナー社長に出会った折り
この時代物の和ダンスの上を
やきもので飾れないかな?
そう申し出があったからで
私の作品を見ていただく機会でもあり
早速・・持参して展示したのが始まりだった


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このところ・・個展の準備で慌ただしくて
終わったら・・模様替えするつもりを伝え
DMを持参して・・久しぶりに訪ねた

このシリーズは
今回の個展では使っていない
桜を思わせる風情の淡彩器
いつの間にか・・春は通り過ぎた


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これはこれで
別の機会に・・色々作ってみたい

写真を撮り忘れたが
饂飩とあん蜜のランチをいただいて
あと2週間後の初日のために
最後の窯を焚く準備に戻ることにした



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あれは・・60年代の終い頃だったかもしれない
真夏の暑い日のゴルフ場だった
その日は・・翌日からの試合に備えた練習日

当時の女子プロがそれぞれに組んでラウンドしてた
今となっては懐かしい一期生たち
記録によれば・・40人ほどが一期生とある

猛暑だったせいもあるし
練習は試合と違って・・念入りにチェックする
だから流れが悪くて・・ティーグラウンドで
時間待ちするパーティーもあった

ベンチに座ってぼんやりする者
仲間とのお喋りに夢中だったり
日陰を捜して涼む者
思い思いに楽を決め込んでいた

その中のひとりが
水道の蛇口に手を当て・・水に勢いをつけて
長いこと辺りに散水していた
黙々として撒きながら
目につくと・・枯れた芝を摘まんでみたり
陽ざしを避ける様子もなかった

カメラマンと一緒にそこに居た私は
「暑いだろ・・休めばいいのに」と声をかけた

目線は芝に向けたまま
「この暑さじゃ芝も大変・・届くとこは
少しでも撒いてやれば元気になるかもね
私たちには大事な大事な芝だもん」
蛇口から離れずに・・彼女はそう言った

そこにいたのはみんなプロたち
毎日ゴルフをして・・俗に言えば
そこで飯を食ってるわけだが
芝に食わせてもらっていると
自覚する者は・・当時でも
そうは多くなかったのかもしれない

手入れは・・専門のキーパーの仕事
私たちはプレイヤーだから
打つことに専念すればいい
確かに・・それで悪いわけじゃない

優勝して喝采してくれるのは
ギャラリーであって・・芝や木ではない
だがそれでも
この時の彼女が誰で?
その後どうなったか?・・を知ると
自分たちは何で飯を食ってるか?
その中に・・芝があることを
やはり放ってはおけない気がする

日曜日にいつものように
テレビを聞きながら仕事していた
珍しくゴルフの番組で
往年の名手・・樋口久子さんが解説していた

声を聞くだけで・・誰だか判る
あの日の水まきは・・若き日の彼女だった
僅かにトーンは低くなったようだが
語り口の声質は・・少しも変わっていない

圧倒的な強さを見せた当時の樋口久子さんのゴルフ
もしかしたら
ギャラリーにだけでなく
ファンにだけでなく
芝にも愛された彼女の生き方のせい
それもあったんじゃなかろうか

何処で?・・何で?
自分がよって立つ基盤を
しっかりと自覚することが
プロの第一歩だと
彼女は教えてくれたのだった



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早朝の4時は・・さすがにまだ暗い
だから工房に入っても・・鍵をかける
何となくわけのわからん出来事の多い世の中
日が昇るまでは・・用心にしくなしだ

それからテレビのスイッチを入れる
見たいわけじゃない・・全くの静けさよりも
僅かに音があった方が落ち着くからだ
だから
テレビを「見る」ではなく・・「聞く」である

今朝も・・それこそ朝飯前にこれを削った
削りながらテレビを聞いていたが
このところ・・早朝のニュース番組に
いささか不満がある

新聞全紙を壁に貼って
目ぼしい記事を読むだけの
それも報道なのかな?と思う番組だが
それにしても
アナウンサーたちの読みの下手くそ
見ずに聞いてると・・やたら気になる

多分新人アナウンサーたちの登竜門なんだろうが
技術研修ちゃんとやったの?
アナウンサーの登竜門ではなく
お笑い系タレントへの・・登竜門?

はしゃいで笑って・・挙句に決めポーズ
それも何でそんなに要るの?ってくらい
3~4人の若い女子アナたちが
俗に言えば
噛んだり滑ったり・・とちったり
ドジ・オンパレードである

まぁ夜明け前の時間帯だから
研修番組とでも思えばいいが・・本来は
本番で・・勉強するなよな!である



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