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桃青窯696

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50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・

2017年 09月 16日 ( 1 )

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8年前の晩秋・・いつものように
桃次郎を連れて朝の散歩にでかけ
いつものように・・ジョンの住まいを訪ねた

しかし
この朝のジョンはいつもと様子が違っていた
私に飛びつこうとしているが
表情が険しいのだ・・何かを訴えていた


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ジョンは・・ここで飼われていた
今風なら
リバーサイドのウォーターフロントだ
飼い主のおっちゃんは・・いわゆるホームレスで
この川の畔の橋の下に小屋を作って住んでいた
時折り・・仲間と朝食してる姿を見かけ
シャレてるじゃん・・そう思ったものだ

  
ジョンと我が家の桃次郎が縁で
いつとはなしに
おっちゃんとも仲良くなった
事情があってのことと
名前も聞かず・・歳も知らないままだった

でも気を許してくれてのことか
問わず語りに聞いた話は
この暮らし・・楽ではないなだった

「こいつに生肉食わせるのが大変でさ
知り合いの肉屋で余り物買って
鍋で煮て傷まないように食わせるが
月に一万もかかっちゃうんだよ
でもさ・・それだけが楽しみなんだ
こいつの人懐っこさに救われてるもんな」

少しも投げやりなところのない
穏やかで優しいおっちゃんだったし
ジョンも私になついて
近寄ればすり寄ってだきついてくるのだった

冬などは・・さすがに寒そうで
体の大きさは少し合わなくても
なくても済む衣類を運んだり
頂き物の食材食料とか
到来物の酒持参で差し入れたりしてた

「こんないい酒一人じゃもったいないから
ともだち呼んでやっていいかい?」
振る舞えることが嬉しそうだった


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こんなつきあいが1~2年続いての・・その朝
ジョンの様子は・・いかにも異様だった

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初めて・・おっちゃんの小屋の
ドアの隙間から中を覗いた
病気で倒れてはいないかと心配したからだ

やはり掘っ立て小屋ではある
でも・・おっちゃんが丹精込めた我が家
それなりに小ざっぱりしてはいたが
いわゆるもぬけの殻で
ひとが抜けたままの姿で・・布団が敷かれていた
枕もとの・・電池だけが頼りの携帯ラジオ
電灯が灯ることのないこの部屋で
暗い夜の楽しみは・・これだけだと
話していたのを思い出した

それまでに
おっちゃんがジョンをつないだまま
長い時間でかけることはなかったようだし
ジョンの餌鉢が渇いてることもなかったから
それに・・ジョンの異常な悲壮感

不吉な予感がして・・もうひとつ下流の
橋の下に住むおっちゃんの友達を訪ねた

「あぁ~おっちゃんな
三四日前だったかな
ともだちと一緒に飲んでてさ
どういうわけか喧嘩になっちゃって
取っ組み合いでふたりとも
川にはまって死んじまったのさ
ジョンは・・今日明日に
別のともだちが引き取るって
言ってたけど・・どうかな」


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あの日のジョン
どう見ても・・涙目である
泳いだ目が探してるのは・・おっちゃんだ
死んだと判っているのかもしれない
きっと目の前で溺れたに違いない
それを私に伝えようとしていたんだろうか

急いで自宅に引き返し
桃次郎のドッグフードを車に積み
ジョンの餌鉢に溢れるほど入れた
今のジョンに腹は空かせたくないと思った

翌日の朝・・やはり気になって訪ねた
しかし・・そこにジョンはいなかった
無事を祈るばかりだったが
あれが・・ジョンを見た最後の日になった

今思えば
おっちゃんは悪い死に方じゃない
あのままあそこで
厳しい暮らしに耐えるには限界もあったはずだ
病気で独り寝込むことを考えたら
いかにも不安だったに違いない

互いの境遇を共有しながら
仲のよいともだちが・・酒のせいでか
他愛ない喧嘩で・・じゃれて取っ組み合い
抱き合って死んでいった
ホンワカしたものさえ感じるのだ

ジョン!・・ところでお前は今どこ?
あれから8年・・微妙な時間だ
もしかしたらあっちで
またおっちゃんの世話になってるかもだし
桃次郎とも再会できたかもしれない

短い歳月だったが
忘れがたいつきあいだった



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by touseigama696 | 2017-09-16 19:41 | ●愛しきものよ・・ | Comments(7)