2017年 05月 16日 ( 1 )

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あれは・・60年代の終い頃だったかもしれない
真夏の暑い日のゴルフ場だった
その日は・・翌日からの試合に備えた練習日

当時の女子プロがそれぞれに組んでラウンドしてた
今となっては懐かしい一期生たち
記録によれば・・40人ほどが一期生とある

猛暑だったせいもあるし
練習は試合と違って・・念入りにチェックする
だから流れが悪くて・・ティーグラウンドで
時間待ちするパーティーもあった

ベンチに座ってぼんやりする者
仲間とのお喋りに夢中だったり
日陰を捜して涼む者
思い思いに楽を決め込んでいた

その中のひとりが
水道の蛇口に手を当て・・水に勢いをつけて
長いこと辺りに散水していた
黙々として撒きながら
目につくと・・枯れた芝を摘まんでみたり
陽ざしを避ける様子もなかった

カメラマンと一緒にそこに居た私は
「暑いだろ・・休めばいいのに」と声をかけた

目線は芝に向けたまま
「この暑さじゃ芝も大変・・届くとこは
少しでも撒いてやれば元気になるかもね
私たちには大事な大事な芝だもん」
蛇口から離れずに・・彼女はそう言った

そこにいたのはみんなプロたち
毎日ゴルフをして・・俗に言えば
そこで飯を食ってるわけだが
芝に食わせてもらっていると
自覚する者は・・当時でも
そうは多くなかったのかもしれない

手入れは・・専門のキーパーの仕事
私たちはプレイヤーだから
打つことに専念すればいい
確かに・・それで悪いわけじゃない

優勝して喝采してくれるのは
ギャラリーであって・・芝や木ではない
だがそれでも
この時の彼女が誰で?
その後どうなったか?・・を知ると
自分たちは何で飯を食ってるか?
その中に・・芝があることを
やはり放ってはおけない気がする

日曜日にいつものように
テレビを聞きながら仕事していた
珍しくゴルフの番組で
往年の名手・・樋口久子さんが解説していた

声を聞くだけで・・誰だか判る
あの日の水まきは・・若き日の彼女だった
僅かにトーンは低くなったようだが
語り口の声質は・・少しも変わっていない

圧倒的な強さを見せた当時の樋口久子さんのゴルフ
もしかしたら
ギャラリーにだけでなく
ファンにだけでなく
芝にも愛された彼女の生き方のせい
それもあったんじゃなかろうか

何処で?・・何で?
自分がよって立つ基盤を
しっかりと自覚することが
プロの第一歩だと
彼女は教えてくれたのだった



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