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桃青窯696

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50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・

ジョン!・・いずこ?

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8年前の晩秋・・いつものように
桃次郎を連れて朝の散歩にでかけ
いつものように・・ジョンの住まいを訪ねた

しかし
この朝のジョンはいつもと様子が違っていた
私に飛びつこうとしているが
表情が険しいのだ・・何かを訴えていた


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ジョンは・・ここで飼われていた
今風なら
リバーサイドのウォーターフロントだ
飼い主のおっちゃんは・・いわゆるホームレスで
この川の畔の橋の下に小屋を作って住んでいた
時折り・・仲間と朝食してる姿を見かけ
シャレてるじゃん・・そう思ったものだ

  
ジョンと我が家の桃次郎が縁で
いつとはなしに
おっちゃんとも仲良くなった
事情があってのことと
名前も聞かず・・歳も知らないままだった

でも気を許してくれてのことか
問わず語りに聞いた話は
この暮らし・・楽ではないなだった

「こいつに生肉食わせるのが大変でさ
知り合いの肉屋で余り物買って
鍋で煮て傷まないように食わせるが
月に一万もかかっちゃうんだよ
でもさ・・それだけが楽しみなんだ
こいつの人懐っこさに救われてるもんな」

少しも投げやりなところのない
穏やかで優しいおっちゃんだったし
ジョンも私になついて
近寄ればすり寄ってだきついてくるのだった

冬などは・・さすがに寒そうで
体の大きさは少し合わなくても
なくても済む衣類を運んだり
頂き物の食材食料とか
到来物の酒持参で差し入れたりしてた

「こんないい酒一人じゃもったいないから
ともだち呼んでやっていいかい?」
振る舞えることが嬉しそうだった


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こんなつきあいが1~2年続いての・・その朝
ジョンの様子は・・いかにも異様だった

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初めて・・おっちゃんの小屋の
ドアの隙間から中を覗いた
病気で倒れてはいないかと心配したからだ

やはり掘っ立て小屋ではある
でも・・おっちゃんが丹精込めた我が家
それなりに小ざっぱりしてはいたが
いわゆるもぬけの殻で
ひとが抜けたままの姿で・・布団が敷かれていた
枕もとの・・電池だけが頼りの携帯ラジオ
電灯が灯ることのないこの部屋で
暗い夜の楽しみは・・これだけだと
話していたのを思い出した

それまでに
おっちゃんがジョンをつないだまま
長い時間でかけることはなかったようだし
ジョンの餌鉢が渇いてることもなかったから
それに・・ジョンの異常な悲壮感

不吉な予感がして・・もうひとつ下流の
橋の下に住むおっちゃんの友達を訪ねた

「あぁ~おっちゃんな
三四日前だったかな
ともだちと一緒に飲んでてさ
どういうわけか喧嘩になっちゃって
取っ組み合いでふたりとも
川にはまって死んじまったのさ
ジョンは・・今日明日に
別のともだちが引き取るって
言ってたけど・・どうかな」


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あの日のジョン
どう見ても・・涙目である
泳いだ目が探してるのは・・おっちゃんだ
死んだと判っているのかもしれない
きっと目の前で溺れたに違いない
それを私に伝えようとしていたんだろうか

急いで自宅に引き返し
桃次郎のドッグフードを車に積み
ジョンの餌鉢に溢れるほど入れた
今のジョンに腹は空かせたくないと思った

翌日の朝・・やはり気になって訪ねた
しかし・・そこにジョンはいなかった
無事を祈るばかりだったが
あれが・・ジョンを見た最後の日になった

今思えば
おっちゃんは悪い死に方じゃない
あのままあそこで
厳しい暮らしに耐えるには限界もあったはずだ
病気で独り寝込むことを考えたら
いかにも不安だったに違いない

互いの境遇を共有しながら
仲のよいともだちが・・酒のせいでか
他愛ない喧嘩で・・じゃれて取っ組み合い
抱き合って死んでいった
ホンワカしたものさえ感じるのだ

ジョン!・・ところでお前は今どこ?
あれから8年・・微妙な時間だ
もしかしたらあっちで
またおっちゃんの世話になってるかもだし
桃次郎とも再会できたかもしれない

短い歳月だったが
忘れがたいつきあいだった



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by touseigama696 | 2017-09-16 19:41 | ●愛しきものよ・・ | Comments(7)
Commented by 今~~ at 2017-09-16 21:52 x
哲ちゃん’超ご無沙汰です(苦笑)
週三日の契約社員でボケ防止、何とか元気でやっております。
「愛しきものよ」ジョン!いずこへ・・・泣けるね~
桃次郎と仲良く、哲ちゃんを見守っていると、ぼくも思う。
「折々の折り・・2013-11-18」メロン・パンを思い出したよ。

Commented by 折々の折り at 2017-09-16 21:58 x
あれから15年・・・色々あったよね。
「折々の折り」は、ず~~っと残して置いてよ。
Commented by saitamanikki2008 at 2017-09-17 10:32
こんにちは。
先々 どうなるのか 読み続けたくなる内容でした。
「ホームレス」と一言で言い表せない程に色々な人々がいると感じます。
早朝散歩に行く公園にも数人 寝泊まりしてます。
一年に一度 クリスマスの時 牛丼を届けてます。
話を聞くと、人生模様の一旦を少し話してくれます。
普通の人たちなんだ どこで一歩 道を間違えてしまったのだろうか ?
一歩の間違い 私でも有りうるかもしれない。
雨の降った夜は、どこで雨宿りしているのか....と思いながら通り過ぎてます。
Commented by BBpinevalley at 2017-09-17 15:31
なんてお話なんでしょう…
最後のジョンの表情、たまりません。
泣いていますね。
この時、ちょうどカメラを持っていらしたのですね。
確かに、悪い死に方じゃないかもしれない…
でも、ジョンのことは気がかりだったでしょう。
その後のジョンの一生が、幸せなものだった事を祈るばかり。
おっちゃんがきっと、見守ってくれたよね。
Commented by touseigama696 at 2017-09-18 07:55
今~~ちゃん
ありがとうございます
元気の様子・・何よりだね
大昔を知る大事なともだちだ
体こわさないようにね
折々は残しておきますよ(笑)
Commented by touseigama696 at 2017-09-18 07:58
saitamanikki2008さん
ありがとうございます
人生は・・ほんと紙一枚の厚みで
右へ行ったり左へ行ったり
運不運も分かれますね
いつでも今を振り返って
ありがたいこっちゃと思っています
Commented by touseigama696 at 2017-09-18 08:01
BBpinevalleyさん
ありがとうございます
あのころは桃次郎と散歩するときは
いつもカメラを首にかけ
花を撮ったりしてました
ジョンは多分雑種で少し大型犬だったから
その分長生きするのは大変だったかも
どうしているんだか・・判りませんが
性格の良い可愛い犬でした
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