茶碗の・・『重さ』

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先日来・・熟読してる林屋晴三著の「名碗を観る」
その中に・・この二碗が載ってる
本阿弥光悦作・・「時雨」と「乙御前」

林屋さんは・・22歳のときに
名古屋の森川如春庵の家で
この二碗に触れ・・爾来
光悦に深く魅かれてきたが
長次郎の「無一物」とともに
光悦の二碗を越える詫び数寄の茶碗を
現代はまだ手にしていないとある

黒楽「時雨」は・・僅か16歳の年に
そして赤楽「乙御前」は・・19歳の若さで
どちらも手中にした・・稀代の数寄者が
名古屋の素封家森川如春庵だった・・そして
その慧眼に一目置き・・親しく付きあったのが
三井財閥の重鎮で初代三井物産社長の
益田孝・・世にいう益田鈍翁である
利休以来の茶人とも言われた鈍翁
このひとも・・桁はずれの数寄者だった

歴史的な名碗は・・こうした数寄者の
眼力と執念で・・守られてきたとも言えよう
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今日の午後・・工房に居て珍しく茶を点てた
誰もいない工房・・自分で点て自分で服んだ

この茶碗・・亡母の言い伝えによれば
名古屋の素封家に嫁いだ親友を訪ねた折り
帰り際・・蔵から箱をひとつ持ち来て
記念に・・と頂いたのだという

「関東大震災の後・・名古屋に滞在した
鈍翁さんが・・手捻りで焼いた楽茶碗」
そう伝えられてると聞いたのだそうだ
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本当のことは・・まだ判らない
しかし・・この箱書きは鈍翁さんの真筆
蓋表には・・同じ筆で「曙」と銘が入ってる

花押は鈍翁さんのもの
ここまでで少なくとも解ってるのは
鈍翁と如春庵のふたりの間での作品
一番もっともらしいのは・・
天狗こと森川如春庵が手捻りした茶碗に
鈍翁が銘をつけ賛を書いた・・だろうか

百年の歳月の向こうの真実を想像しつつ
長らえてきたこの茶碗で・・茶を点て
そして・・それを口にした瞬間
不思議な感慨が・・口中を流れ
茶碗の重さを・・ひしと感じた

もしかしたら・・遥か昔
如春庵 鈍翁のお二人が
この茶碗で茶を喫したかもしれないのだ
同じ茶碗で・・お二人を偲ぶとすれば
これも・・ひとつの一期一会だと思う

どんな茶碗にも・・第一日目はある
そして・・運が良ければ百年後もある
その間・・愛でつ使われて生き残れば
茶を喫するで終わらぬ「茶碗」なのだ

茶碗を作るとは・・
百年を生き残れる美しさを求めることだ
百年語られる物語が生まれることを
密かに願い・・ゆっくりと手を進めることなのだ




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by touseigama696 | 2015-10-09 22:16 | ●エッセイ | Comments(0)
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