『火花』

d0085887_4231374.jpg

酒とおんなと舞台と・・底抜けの無頼
行き着くところまで行って・・
汚泥に塗れた悲哀から生まれる可笑しみ

物書きの世界を描いたプロットには
そんなのもあったような・・
「火花」も・・そうしたひとつかもしれないが
破滅的なお笑い芸人の辿る可笑しみは
物書きの難解な理屈とは違って
ただひたすらに物悲しく・・それでいて可笑しい
d0085887_4232496.jpg

ひとは・・始終笑っている
他愛ないことで・・際限なく笑っている
多分・・例えささやかでも幸せなら
笑うことでそれを感じるものだ

しかし・・その笑いを自分の芸でとろうとしたら
ひとは・・滅多なことじゃ笑ってくれない
どうすれば・・笑いがとれるか
極く当たり前の人間にはできない芸なのか

「美しい風景を台なしにすることこそが
笑いだと言うのなら・・僕はそうするべきだと思った」
(引用)

無頼や破滅が向かう先は・・きっとそこだ
芸人の可笑しみが笑いをとるとすれば
それは・・芸人の深い哀しみに共鳴するからで
安住を見出すまでの・・束の間の花火でしかない

「せやな だから唯一の方法は阿呆になってな
感覚に正直に面白いかどうかだけで
判断したらいいねん」
(引用)

人間は酒でも飲まんと・・
いつまでもは・・阿呆でおられまい

「なあ さっきから俺が珈琲カップを皿に置く時
一切音が出えへんようにしてたん気づいてた?」
「気づいてましたよ」
「ほな 言うてや やり始めたものの お前が何も
言わへんからやめるタイミングがなかったわ」
(引用)

これだけでも舞台でやれば漫才になる・・きっと笑う
だからこのデリカシーが阿呆と同居できるのは・・ほんの一瞬
悶え苦しむ芸人の頭上に三日月があって
その美しさを・・「平凡な軌跡」(引用)だと言う
平凡な軌跡・・そのために払う代償がきっと人生なのだ

ハードパックはなかなか手に入らず
妻が買ってきた月刊文春で・・読んだ
窯を焚きながらの午後から夕方まで
一気に読んだ・・久しぶりに面白かった

随所に・・又吉さんに固有の言い回しが
キラキラと光り・・芸人の涙が可笑しみの源
ひしと伝わってきたような気がする



人気ブログランキングへ応援してくださる方・・クリックしてネ!
[PR]
by touseigama696 | 2015-08-11 05:44 | ●エッセイ | Comments(6)
Commented by BBpinevalley at 2015-08-11 15:23
この方、芥川賞を取られたんですね。
いつだったか、日本に帰った時に,NHKの朝の番組に出ておられて、面白い人だなぁと思ったので、印象に残っています。
とても正直で、まっすぐなクリアーな目で、物事を見る人ですよね。(どんな芸術家も、それが基本かと思いますが)
本を書いていると言われていたのは、この本だったのかな。
読んでみたいです。
Commented by 摩耶 at 2015-08-11 20:20 x
東京方面ではハードカバーずっと売り切れだったのですね。
小樽はずっと普通に山積みしてありましたが(笑)。
作品の最後の展開には驚きましたが、楽しく読ませていただきました。
これが処女作とは凄いですね。
Commented by はるこ at 2015-08-11 23:26 x
ウエブサイトで知って読んでみたいなぁと思っていた所です。
同級生に送ってもらおう、と企んでます。
まだブログ復活出来てません。
インターネットの接続を新しくしたのですが。。
あきらめてはいませんから。。笑。。
この記事すばらしいので、FBに紹介させてくださいね!
Commented by touseigama696 at 2015-08-12 04:19
BBpinevalleyさん
ありがとうございます
最近芥川賞も話題が少なかったけど
この一作で随分と人気がでたみたいです
異才のポテンシャルは大きいですね
お笑い芸人さんと作家の同居
かつてジミー大西の画壇デビューを思い出します

ところどころバランスの悪い形容詞があって
うん?・・って思ったりしますが
一方で彼しか書けない実に個性的な言い回しがあって
読まされました・・面白かったです

そちらでも手に入るんでしょうか?
アマゾンは国内だけでしたっけ?
Commented by touseigama696 at 2015-08-12 04:22
摩耶さん
ありがとうございます
こちらでは平積みの場所に・・張り紙で
予約中!・・とか
でも文春で読めば二作とも掲載で
安上がりでした・・(笑)
Commented by touseigama696 at 2015-08-12 04:28
はるこさん
ようこそ!!ですよ
ありがとうございます
まだ復活できてないんですね
待ってますよ・・楽しみに

火花・・なかなかで面白かったです
芥川賞の人気が取り戻せるといいですね
ただ選者のリストをみると
やはり時代が変わったのを実感します

ご紹介のこと・・どうぞ如何ようにもです

名前
URL
画像認証
削除用パスワード