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桃青窯696

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50歳からのプロ・・・ここでは陶芸家らしく・・

あのとき進まなかったもうひとつの道

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でたらめに選んだカードが
いつの間にか・・天辺にきてる
そんなマジックを何度も見たが
この本を・・自分の書架で見つけたのは
丁度・・そんな感じの驚きだった

随分探したが見つからなかった本
まさか・・書架の窓際で見つけようとは
文学的な名著と言うわけでもなかろうが
この小説には・・忘れられない一行がある

ピエール・サリンジャー著「裏切りの調書」
原題は「The Dossier」・・「調書」とでも
翻訳タイトルは・・いつもあまり好きになれない
裏切り・・なんて足さずに「調書」にしたほうが
遙かにリアリティーがでるのに・・
蛇足が・・中身を安っぽくすることが多い

サリンジャーは・・10年前亡くなった
ケネディー大統領の首席報道官
異色のジャーナリストだったが
経験から書いた国際政治の裏側
単なるストーリーテラーではないのだ
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忘れられない一行は・・この小説の冒頭
ノルマンディーの海辺の田舎家を借りた主人公が
そこにスタインウェイのピアノを据え
壁一面の書架にぎっしりと本を詰め
窓からのリンゴ畑を眺めながら
ピアノと読書三昧の一年を過ごそうと
その準備ができたことから・・物語は始まる
56歳の年だと・・設定されている

アイザック・スターンのヴァイオリンと
二重奏してたこともある主人公のピアノ
音楽家にならず・・ジャーナリズムを選んだが
「・・一年間鍵盤に向かっていれば
自分の指は若い頃の敏捷さを取り戻すとか
音楽に対する感性を取り戻せるとか
そんな幻想は抱いていない・・勿論
コンサートを開くなどと考えてもいない
ただ・・あの時進まなかったもうひとつの道を
ほんの数歩でもいいから先に行ってみたい
そういう強い欲求があったのだ・・」

あの時進まなかったもうひとつの道
これが・・忘れられない一行なのだ

長い人生の中で・・
ひとは・・幾つもの岐路に立つ
そして迷い悩みながら・・どちらかを選ぶ
そのまま何の不満もなく終わる人生は
一体どれほどあるだろうか?
あっちを選んでいたら・・どうなったろう?
懐古の中には・・そうした思いもあるのだ
しかし・・大抵は懐古のままで終わる
試すにはリスクが大きすぎるからだ

私の場合・・
病気が理由でリタイアしたテレビの世界
30代という若さもあって・・迷い悩んだ
後に・・もし病気さえしなかったら
あのまま続けていたら・・何度も考えた
結果的に・・あっちを歩くことはなかったが

ただ人生に一度くらいは
もしかしたら・・これがしたかったのかも?
そう思えるようなことに出会い
そこに飛び込むことができたら・・と
そんな思いが芽生えたのは・・
この一行からだったように思う

定年を待たず・・陶芸に転向したのは
実は56歳の秋・・いみじくも主人公と同じ
子どもの自立も済み・・
大きな借財のないのも確かめて
自宅にささやかな窯を築いて始めたのだった

組織の中でばかり生きてきた人生
自分ひとりでできる仕事は何もなかった
だからもうひとつの道を・・そこに求めた
失敗も成功も・・ひとりで背負う
自己責任の清しさは・・初めてのことだった

こじんまりとした住処とささやかな工房
ノルマンディーの海辺とはゆかないが
終の棲家に移り住んで半年
どうやら静かな終章が・・始まったようだ

小説の主人公は・・たった一本の電話で
国際政治の修羅に引き戻されるが
私は静かな晩年がいい・・だから
穏やかな世の中であってほしいと
痛切に祈るばかりである




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by touseigama696 | 2014-10-27 06:25 | ●エッセイ | Comments(2)
Commented by 夢工房あすか at 2014-10-28 01:04 x
話が逸れて申し訳ないですが、
回転式の本棚、いいですね。前から探していたのです。
私は生徒さんの作品を全部写真に収めていますが、
アルバムの数が多くなり、置く場所がなくなってきました。
本棚は特注品でしょうか。野暮な質問ですみません。
コメントの画像認証が慣れてないので難しいですね。
Commented by touseigama696 at 2014-10-28 06:19
夢工房あすかさん
ありがとうございます
この本棚・・新聞チラシでみた通販ですよ
どこの通販だったか・・忘れちゃいました苦笑
新聞をご覧になってるとあるかもです
大して高いものじゃありませんでした
見つかるといいですね
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