感傷

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数日後に・・引っ越し会社に依頼して転居する
「やっと」であり・・他方「とうとう」でもある

大詰めで・・久しぶりに亡父の書斎に入った
ただでさえ使い古した絨毯だが
その上で・・何度もゴミの山と格闘したこともあって
汚れきっているが・・そこにこんな「跡」がある

親父が使っていたデスクの足跡である
左右のサイドデスクの上に・・天版が乗る
三つの部品の組み立て式だったが・・その足跡である

戦後すぐ・・知りあいの家具職人が
持てあました暇に・・丹精込めて作ったデスク
親父にとっては・・一番大事な家具だった
医者であり・・学者でもあった亡父は
このデスクの上で・・半世紀以上の時間を
ものを書いて過ごしてきた
それは94歳で逝くまで・・続いた

臨床の現場・・大学教育の現場
「診療すること」・・「育てること」
どちらも・・重たい仕事だった

この足跡は・・乗せたものの重さというよりは
果たそうとしたものの重さ・・かもしれない
明治人の気質というか・・
ともかく・・愚直なまでに大真面目な医者だった

一カ月後には・・ここは更地に戻る
当然だが・・このデスクの足跡も消える
くっきりとした輪郭を眺めながら
この書斎の片づけに手をつけて・・
初めて・・じんとした感傷に浸った

物は捨てた・・だからと云って
思い出までも捨てるわけじゃない
この輪郭が意味するものは・・
私の心の中に・・生きる筈だ

粘土の重さではなく・・作ったものの価値が
どんな足跡を残せるのか・・
新しい工房での・・新しい課題である



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by touseigama696 | 2014-03-29 23:54 | ●エッセイ | Comments(2)
Commented by kuma at 2014-03-30 17:41 x
なかなか重いお話ですが、自分の根っこを知る上で、
このデスクの跡は大切なものかも知れませんね、
自分は両親、祖父母…その方々の歴史の線上に続いて乗っているのだと、
改めて感じるものだと思います。
Commented by touseigama696 at 2014-03-31 00:11
kumaさん
ありがとうございます
この家は・・私の祖父母から始まって
親父・私・子どもたちと・・4代が住んだことになります

ゴミの山でしたが・・思い出も山のようにです
忘れられないものだけを大事に・・身辺整理なのでした
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