そのとき・・ふたりは

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昨日のこの一打で・・
本田は揺るぎないヒーローになりました

やや遠のいたかと・・不安になった代表権
これで取り戻したのですから・・当然といえば当然
大きなプレッシャーをはねのけた快挙でした

この一瞬を輪切りにして・・
キッカーとキーパーの二人の間に
どんな心理が働いたのか・・
分析してみました・・そういうの好きなのです

PK戦での・・キッカーとキーパー
ボールをセットして対峙した瞬間
二人の間には・・ハンデがあります

キッカーの失敗と・・キーパーの失敗では
キッカーの方が・・より大きな失望を買うということです
ボールに対するイニシアティブを持ってるキッカーは
決めて当然・・守る方は勘がはずれても仕方ない
そうした大方の評価の中で・・蹴るわけです

キッカーが・・一番怖れるのは
キーパーにセーブされることよりも
蹴ったボールが・・枠外に出てしまう失敗でしょう
枠内に蹴らねば・・勝負にならないのですから

昨日の本田は・・日頃メンタルの強い選手ではあっても
リーグ戦の一こまのPK戦ではありません
言うまでもなく・・この一打が代表権を賭ける全て
相当なプレッシャーがかかっていたはずです
確実に枠内に蹴りこまねばならないことは
充分に理解していて・・対処したはずです

「ど真中打ちこんで・・だめならしょうがないと・・」
そんな感想を述べてましたが・・
それこそ枠内を確実にする一打を意図したことです
本田ほどの選手ですから・・
四隅を含めて・・どこに打ち込むことも
相当の練習をしているでしょうが・・
それでも一番確実なのは・・ど真中

ただ・・それがキーパーに見破られては失敗します
そこで・・キーパーとの間に実に微妙な駆け引きをします
蹴る瞬間のタイミングを・・どんなに僅かでも
遅らせることができるか・・がそれなのです

蹴る瞬間を見てから反応したのでは・・
プロの場合・・絶対にセーブできません
キッカーのどこにタイミングを合わせて
予想コースに身を投げるか・・
それが・・キーパーのセンスです

オーストラリアのキーパーは・・確かシュワルツァ
195cmもある長身の選手ですから
枠内をカバーする高さと幅があります
上下左右の隙のないカバ-リングが売りです

その彼が・・
本田のボールのコースをどこで読めるか
そこが別れ道だったのです
タイミングをずらすとは・・それを読ませない技術
本田は・・それを持っていました

つまり・・少しゆっくり助走して
力まずに大きなキックで蹴りました
キーパーの反応が・・ごく僅かに早すぎたのです
我慢しきれなかった・・とも言えます

シュワルツァーは・・身体を左に動かした瞬間
負けたのを知ったに違いありません

もし・・キーパーがじっと動かなかったら
ボールは身体の正面に当たって・・はじかれたはずです

更に・・ど真中に蹴った本田の狙いは
もうひとつあったと思います

もし・・左右のコーナーを狙って蹴ったら
キーパーの予感が当れば・・かなりな確率でセーブされます
右か左か・・確率は50%です

ところがど真中の場合・・左右のどちらに動いても・・
動いてくれさえすれば・・真ん中は空き家になります
但し・・動くか動かぬかで確率は同じ50%です

ここで・・ひとつの想像を働かせねばなりません
まず・・本田の頭の中をです
「このキーパーは・・動きたがるタイプ」
そう読んだのではなかろうか・・ということです

というのは・・彼が2mに近い大男だからです
横に強い・・隅にも届くという自信があるから
動いて止めようとするはずだと・・
じっとしていて・・コーナーで決められるのは
彼のプライドが許さないんじゃないかと・・

一方・・シュワルツァーの頭の中です
「この一打に日本の代表権がかかってる
いかに本田といえども・・
もっとも楽に阻止できるど真中は狙えないだろう
優秀なキッカーだけに・・コーナーを突いてくるはずだ」

キーパーの動きを見ていたら
ひとつ気づくことがあります
本田が蹴るほんのちょっと前
シュワルツァーは・・いったん身体を右にフェイントして
それから左に飛びます
フェイントで惑わせ・・左サイドへ蹴らせようとしたのでしょう

本田は迷わず・・ど真中に蹴ります
本田の動きの方が・・ちょっとだけ遅いからです
キーパーが動くのを確信したはずです
真ん中は・・空家になると・・

いずれにせよ・・
百分の一か千分の一秒のズレで
自分のほうが遅く動けたと・・感じた瞬間に
勝ちを確信したと思うのですが・・
昨晩の場合・・それが本田だったのです

つい今まで顔と身体があった位置を
手が出れば阻止できそうなすぐ脇を
非情にも・・ボールが駆け抜けています
それほどの微細なタイムラグで・・
全く手が出ないズレが生まれるということ
それが・・プロの凄ごみなのでしょう

ど真中に蹴りこんだ本田の勇気を
昨晩・・称賛しましたが
勇気だけでも成功しないに違いありません
戦略的な視野と観察があってこそ
狙いが絞れるのです

数万人の観衆・・数千万人の視聴者
その無数の目の前で犯すかもしれない・・
失敗の恐ろしさ・・想像を絶しますが
プレッシャーが大きければ大きいほど
それを撥ねのけて・・成功に導くスキル
どんな世界に住んでいても・・
世界を制する一流選手に・・共通の資質

修羅をくぐって覚える・・プロの仕事って・・
そうでなくちゃと・・思えたのでした





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by touseigama696 | 2013-06-06 01:04 | ●エッセイ | Comments(4)
Commented by kuma at 2013-06-06 13:55 x
いや、なかなか…冷静な分析です。

シュワルツァーは…
いったん身体を右にフェイントしてそれから左に飛びます…
そのとおり、キーパーは引っ掛けにいったのですが、
本田のほうが1枚上手だったようです。
TVの映像ですから、角度的にハッキリわかりませんが、
本田の蹴り方は、左足をかぶせているので、ゴールの右側を、
狙って蹴っているように見えています。
飛んだ瞬間、キーパーはたぶん「してやったり!」と
思ったに違いありません。
しかし、ボールの弾道は真っ直ぐだった。
たぶんほんのわずか、アウトサイドにひっかけていたのではないかと…
日本中の皆さんが、解説者になった1日でした(笑)
Commented by touseigama696 at 2013-06-07 02:46
kumaさん
ありがとうございます
youtubeの動画を引用させてもらったんですが
まずいらしくて削除されてしまいました
そのせいで・・長ったらしいエッセイになってしまいました

ほんと・・日本中で解説してたんでしょうね・・笑
ゲームの機微を考えるのって・・
ノンフィクション番組を作ってるみたいで・・ついつい・・笑

Commented by cat-korokoro at 2013-06-07 20:55
こんばんは~~

私この一瞬見ていなかったのですが(^_^;
師匠の手に取るような心理描写、納得いたしました

そして、師匠の師匠たるゆえんは
プロの目と言うことですね
Commented by touseigama696 at 2013-06-08 01:59
cat-korokoroさん
ありがとうございます
私は・・サッカーをしたことがないので
門外漢のたわごとなのですが・・
色々な番組作りをしながら
プロのプロらしさが何か・・について
とっても興味をもってきたのでした

今でも・・
そんなこと想像するのが好きです
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